見出し画像

東京で京都の逸品を味わう。『開館25周年記念展 京都 細見美術館の名品-琳派、若冲、ときめきの日本美術-』

東京近郊の人はぜひ、5月15日までに日本橋高島屋へGO!

細見美術館の名品が、京都に行かずともまとめて堪能できる『開館25周年記念展 京都 細見美術館の名品-琳派、若冲、ときめきの日本美術-』展が素晴らしい。

タイトル通り、琳派と若冲が目玉なのは間違いない。

宗達の《墨梅図》と光琳の《柳図香包》の共振。ゆうに50年?の隔たりはあるだろうに、それをもろともしない光琳のシンパシーの強さにあらためて感じ入った。

続く抱一の《桜に小禽図》は、S字の枝のうねり、青いオオルリの品格に、桜の花の儚さが加わったバランスが奇跡的で、晩年の高みが心を打つ。《白蓮図》も、仏画のような静謐な法悦が漂う傑作だが、簡素な蓮の描写が高度に抽象化されていて、ある意味でアヴァンギャルドといってもいい。琳派はやはり、日本初のデザイナー・コレクティヴ(しかも時空を超えたハイパー・グループ)なのだ。

其一の《水辺家鴨図屏風》の鴨は、今風にいえば「キャラ」である。中村芳中の《白梅小禽図屏風》は、幹のたらしこみの見事さに言葉を失うとともに、鳥のとぼけた表情には思わず笑みがこぼれてしまう。《月に萩鹿図》の鹿も同様。琳派たるゆえんはこのあたりにもある。

そして、みんな大好き若冲。19点が集結して、これほど眼福を得られる機会はそうないだろう。

最初期の定番《雪中雄鶏図》から始まり、次の《糸瓜群虫図》からいきなりクライマックスって感じ。細部の描き込み、その解像度の高さには眩暈がするほどだが、せせこましさは微塵もない。

水墨画の若冲は前人未到の境地。そうあらためて認識させたのは《花鳥図押絵貼屏風》だ。極めて精密な描写なのだが、筆さばきは即興的な勢いがあって風流でもあるというのが、実に謎めいている。一体どういう風に描いたのだろう。

同じことは、展示の最後を飾る《鶏図押絵貼屏風》にもいえる。生きた鶏が眼前で動いているような臨場感と迫力。しかし、よく目を凝らして観ると、羽部分にはエッチングのように細かい線が湛えられており、異様に精密でもあるのだ。

美は細部に宿る、という生易しいものではない。ダイナミズムを生むベースに、神経症的な細密さがある。これはおそらく、若冲の中では矛盾しないのだろう。近代以降の人間からは失われた感覚、と評することもできる。

というわけで、若冲の特別展だったら何時間も入場を待たされるかもしれない名品に、ショッピングついでに気軽に出合えるわけだから、見逃す手はない。

ほかにも、荘厳具や志野茶碗、単庵智伝など、細見家の蒐集に向けた情熱と美意識が伝わる逸品が揃っている。

繰り返しますが、東京近郊の人、5月15日までに日本橋高島屋へGO!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?