素晴らしき鳥の世界
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素晴らしき鳥の世界


自然学校のスタッフをしていながら、鳥が大の苦手。
「バードウォッチングなんて、一生縁のないことだ」なんて思っていた私が、鳥のさえずりに耳を傾け、飛んでいる姿を目で追い、「なんていう名前だったっけな」とまで鳥に思いを馳せるようになったとは、私史上5本の指に入る大革命だ。

そんな風に思えるようになったきっかけを与えてくれたのは、“バードヤマザキ”との異名を持つ、山崎宏。

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今回は、「鳥といえばやまっち!(山崎のニックネーム)」と皆が言うほど鳥への愛が深い山崎に、鳥の世界と魅力について語ってもらった。


里山にある富士山本校の周辺では、様々な鳥たちと出会うことができる。その日も実際に、本校周辺の野鳥を探しに出かけることにした。

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本校を出ると早速、「いきなり大物発見!!」と双眼鏡を片手に指差した先にアオサギがいた。ちょうど田植えが始まる時期で、水が入った田んぼにカエルなどの水生生物が集まり、それを狙ってやってきたという。
次の瞬間、バタバタっと飛び立った。すると「飛んだ、でかい!全長90センチ!」と声を上げた。さらに、シュッと白いものが落ちるのが見えた。
「あれウンコね。鳥はウンコとシッコと卵が同じ穴から出てくる(笑)」
そんな豆知識を語ってくれる山崎の心が躍っている様子が感じ取れた。

数メートル歩けばもう「あ、ハクセキレイ。波状に飛んでチチンと鳴く...あっ、ホオジロが鳴いてるね、絶対この辺にいるね。」と次から次に息つく暇もなくその世界に引き込まれる。
野鳥との出会いは一期一会。植物なら“そこにある”とわかれば明日もそこに行けば会えるけれど、野鳥はなかなかそうはいかない。
数人で出かけても、見つけられる人とそうでない人がいる。だからこそ、そのスポーツ性が面白いという。

田んぼ沿いをさらに歩いていくと「お!」と誰かの羽が落ちているのを発見。「これは絶対ゲットでしょ!」と手を伸ばす...

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「これは鳩だな。」と言いながらにんまり。
森の中など歩いていれば鳥の羽が落ちているのを見かける。茶色い地面にキラリと目立つ鮮やかな青。そんな模様にもすごく惹かれるのだという。鳥の羽コレクションのほんの何本かを見せてもらった。ひときわ長い羽はヤマドリ。もう15年前のものになるという。愛用の事典を開けば、知らない人は驚く。なんたって栞のように鳥の羽が挟んである。

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ギチギチ...と聞こえたら、それはモズ。「今あの辺で一生懸命子育てをしてるんだよね。“雛がいるから来ないでね。デリケートな時期だぜ。”そういうことじゃないかなぁ。」とまるで鳥の通訳者だ。

どこかから鳥のさえずりが聞こえたら、「あれは◯◯」と言い当てられるその知識は、小学生の頃から蓄えられてきた。幼い頃の記憶を辿っていくと、両親の影響で自然の中で遊ぶのが好きで、昆虫採集や魚釣りに夢中になっていた風景が蘇る。生き物に出会ったら、理屈なしにもうワクワクしてしょうがない。そんな中、山でも川でも行く先々で必ず出会う鳥の存在に興味を持つようになった。やがて山崎少年は、両親が買ってくれた野鳥の鳴き声のカセットテープに聞き入るようになった。その時すでに50種類くらいは覚えていたという。

時は流れ、大学生になった山崎。鳥との関わり方に大きな変化が訪れる。自分は結構鳥に詳しいと思っていたのが、サークルで鳥に詳しい先輩に出会い、上には上がいることを知った。ただ鳥の種類をよく知っているというだけではない。その先輩が与えてくれたのは“保全”という視点だった。
大好きな鳥が減ってきている。絶滅に瀕している鳥がたくさんいる。その課題をきっかけに「自然や鳥を守りたい」という意識が強く芽生えた。

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その思いは、野鳥探しに山崎を47都道府県に赴かせるほどだった。海の上にしかいない鳥がいると知れば、吐き気なんてなんのその、船の甲板から双眼鏡を覗き続けた。先輩からは、「野鳥保護に国境はないよ」と何度も言われた。渡り鳥は国境を超えて住む場所を変えるからだ。日本だけが頑張って環境保護をしても、海外の森林が破壊されていれば、渡り鳥は日本に帰ってこない。山崎の世界は、視野は、どんどん広がっていった。


里山を歩いたたった15分の間でも、出会えた鳥は約14種類。多様な鳥がいるからわかることは、その場所の環境だ。里山には森や田畑があり、そこには木の実や虫など、彼らを支えるだけのエサが豊富にある。キセキレイがいれば、水がきれいな証拠。もしも鳥がいなければ、その場所の多様性が失われているということだ。

キセキレイ


山崎に、お気に入りの鳥は何か聞いてみた。
「フクロウが好きだね。フクロウってさ、鳥なのにさ、目の位置が人間と同じなんだよね。フクロウだけ正面から見た顔が人間っぽいんだよね。これがなんか愛着があるんだよね。」
仕事先で偶然フクロウの亡骸を見つけた時には、羽をじっくり見たいが為に滞在先のビジネスホテルに持ち帰り、お風呂場でお湯につけながら羽をむしっていたという仰天エピソードもある。

山崎の人生は、常に鳥と共にある。小さな鳥事典一冊持って外に出れば、もうワクワクした世界が広がっている。ここまでのキャリアも、鳥が導いてくれたという。



最近、イカルが心地よく鳴いているのがわかるようになった。鳴き声を聞けば姿を思い出す。そうすれば、窓から見える木々の景色に少し彩りが加わる。山崎の鳥愛が、確実に伝播している。

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山崎監修の鳥の本「子どもと一緒に覚えたい野鳥の名前」より

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1982年設立、人と自然、地域を繋ぐことを生業としているホールアース自然学校。 全国に拠点を持ち、年間約80種類の無農薬野菜を育てる農場やジビエ解体施設を運営し、自然ガイドや地域づくり支援等を行っています。 仕事にかける想いと、未来への構想をお届けします。