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探偵討議部へようこそ⑦  #16

前回までのあらすじ
新人戦も終盤。ハシモーの順番が来たものの、まだ謎は解けない。ノープランで立ち上がるハシモーと時を同じくして、<シューリンガン>ウチムラ・リンタロウが部屋に入ってきた。彼の「時間を間違えました」の一言で、ハシモーは再び覚醒する。「この話は、史実のWright兄弟の話ではなく、現代のLight兄弟の話です!」

「Light兄弟だと思って話を聞いた時に、気づくことがあります。弟の名はオーヴィル。これは話の中にでてくるから間違いありません。兄の名は??オーヴィルが呼ぶ『ウィル』、これは本当にウィルバーの略、と考えていいのでしょうか?

愛称で一般的に『ウィル』と呼ばれるのはWilliamです。仮に兄をウィリアムだったとしましょう。その目でお話を振り返ると、この『ウィル』と『ウィルバー』が巧みに使い分けられているのがわかります、、。『兄』にオーヴィルが話しかける時、必ず『ウィル』と呼んでおり、『ウィルバー』とは呼ばないのです。では、本編にでてくるウィルバーは誰?

墜落遺体になったウィルバーが、単なるLight兄弟の知り合いで、文字通りの飛行機事故にあって、インディアナ州立病院の遺体安置室に運ばれたとしたら?そんな偶然あるのか?とおっしゃりたいでしょうが、本編でオーヴィルが全く同じ発言をしています。『こんな偶然あっていいのか!』と。

もし、フライヤーの墜落と、ウィルバーが墜落遺体で発見されたことになんらかの関連性を疑っているなら、絶対に言うはずのないセリフです。」
エンスーが僕の方をみて、満足げに微笑む。おそらく同じことを考えていたのだろう。リョーキちゃんも、「あんたにしてはやるわね」と言わんばかりのやれやれ顏だ。

「ここから得られた事件の全貌はこうです。ウィリアム、オーヴィルのLight兄弟は、似た名前から歴史上のライト兄弟に強い親近感を持っていました。『ライトフライヤーの構造では、本当に飛行することは困難だったのではないか』、という疑問は歴史的に多くの飛行家から何度も指摘されたことです。二人は、ライト兄弟の設計が正しい、ということを証明するために、オリジナルの設計に近い『ラジコン機』を作成し、Light Flyer FXと名付けて、その試験飛行を試みたのです。第一の質問者が指摘したように、『オリジナルのライトフライヤーの構造へのこだわり』が見受けられたのはこうした理由です。

だが、ライト兄弟の偉業を証明しようとする現代のLight兄弟にも妨害するライバルの存在がありました。それが『カーチス』。もちろん、史実上の『グレン・カーチス』ではありません。『ミッキー・カーチス』だったかもしれませんし、『カーチス・ニュートン』かもしれません。最もありそうなことは、Light兄弟自身が、自分のライバルで妨害者でもある彼を『カーチス』というあだ名で呼んでいた可能性です。

さて、その『カーチス』は、『方形の箱』を使ってLight兄弟のラジコン機を墜落させてしまいます。この箱は恐らく、ラジコンのプロポです。同周波数の妨害電波を出すことで、Light兄弟のラジコン機を乗っ取り、墜落させてしまったのです。ラジコンマニアの間では、混線した電波で自分のラジコンが墜落してしまうことや、悪意をもって他者のラジコンの乗っ取り、妨害を試みるものがでることさえも、日常茶飯事です。突然操縦者がいなくなったように見えたのも、当然のことです。実際に操縦者の手を離れてしまったのですから、、。

問題をややこしくしているのは、その後、『ウィルバー』という友人が、本当に飛行機事故で墜落死してしまったことです。これは本当に『偶然』であり、オーヴィルが信じられないのも当然です。共通の友人、『ウィルバー』の遺体安置室で、ウィリアムとオーヴィルのLight兄弟は再会します。ウィルの姿が家のどこにも見つからなかったのは、なんのことはない、同じ内容を知らせる電話で先に病院に向かったからです。

『ウィル、教えてくれ、、。いったいどうしてフライヤーFXは墜落したというんだ、、。』というセリフは、実際に兄に向けて言った言葉だと考えられます。オーヴィルが墜落のあと、兄の安否を確認しなかったことも、双眼鏡の指紋から、カーチスが全てを告白したことも、オーヴィルが警察にまでは相談しなかったことも、せいぜい起きたことが『ラジコン機の墜落』にすぎないからです。

以上からKB大からの挑戦に答えましょう。
ライトフライヤーFXの墜落は、カーチスが電波を乗っ取っておこしたもの。
ウィルバーが墜落遺体で見つかったことと、ライトフライヤーの墜落に関連は、ない。

…この謎に『一つだけ、信じられるものがある』とするならば、フライヤーFXの『FX』が語る通り、『未来は未知数だ』ということです。史実のライト兄弟も、この物語のように一般人が簡単にラジコン機を飛ばし、自分の業績を検証するような時代がくることまでは予期していなかったでしょう。この話では、『現代の話である』というただこの一点が、巧妙に隠されていました。『秘するが花』、、その一点がわかってしまえば、この話は謎でもなんでもありません。以上です。」

時間ギリギリに推理の披露を終えることができた、、。しかも今回は鼻血を出さずにすんだ!その寸前まで行ったことは事実だけど。僕にも成長があったんだろうか!?まさに未来は未知数。だが、これで終わりではない。提示側からの反論、ヒロミさんのターンが待っている。

「ふむ、、。」
コンドウさんが一声うなると、提示側に水を向ける。

「以上のK大探偵討議部の推理だったわけだが、、。なにか主張することがあるかね?」

「もちろんです!」
ヤマモト・ヒロミさんがミニスカートをなびかせて立ち上がった。最後の戦いだ。デストロイ先輩の一言が頭の中で繰り返される。「逆転の一手を打ってくるぞ」と。

(続く)


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