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探偵討議部へようこそ  #14

探偵討議部新人戦も終盤。<エンスー>マサオカ・サクラコによる質問が終わる。浮き彫りにされたのは物語の「違和感」。⒈オーヴィルはなぜ飛行機ばかりを気にして、兄の安否に冷淡なのか。⒉最後に犯行の全貌を話したと「カーチス」であるが、なぜ警察の介入もなく聞き出すことができたのか。ハシモーの苦闘は続く。

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エンスーは着席したが、、。「よくわかりました」じゃないよ。次は僕の番じゃないか。そして僕は何もわかっていない。司令塔のアロハ先輩に頼るしかない。アロハ先輩は本当に、これだけの質問で謎の全貌を見抜くことができるのだろうか、、。

イノウエ・ゴウタロウは内心舌を巻いていた。一人目の質問者といい、二人目といい、なぜああも的確に痛いところをついてくるのだ?K大探偵討議部には次々と新しい人材が育っているようではないか、、。おそらく、この「謎」を解く上で最も重要な点には気付かれたかもしれない。だが、それでは不十分だ。この謎を完全に解くには、なおもう一段階の発想の飛躍が必要なのだ。それなくして、我々の提示した疑問に完全に回答することは難しいはずだ、、。それにしても、ヒロミはなにをやっている?もう相手がまとめに入る段階だぞ。今足を出さずして、いつ出すんだ?今でしょ!?

そのヤマモト・ヒロミは内心葛藤していた。もし足を露出するとすれば、相手が考えをまとめにかかるこの時間しかない。だが、シジュウインさんが望むならば、今後誰にも生足をみせないつもり。私は恋に落ちているのだから。理由はわからないが、恋とはそういうものだ。

だけど、こんな私を差し置いて、親しげに黒髪の赤スーツと話しているシジュウインさん。あの女、何者?そしてなぜシジュウインさんは始終あの女の横でお尻をフリフリしているの?そんなに親しいの?尻軽男め!でも、私の魅力をわかってくれれば、すぐにこっちになびくはずよ。そのためには今一度、生足をご披露しないといけないのかしら?見せるべきか、見せないべきか、それが問題だわ。今となっては、シノブちゃんにパンツと交換してもらえなかったことを幸運、ととらえるべきだわ、、。これはやはり運命の神様が「見せるべし」と背中を押してくれているのかしら、、、。

探偵討議とは関係のないところで葛藤に葛藤を重ねた末、ヒロミは膝の上のひざ掛けをどかすことにした。

探偵側による「解答編」までに与えられた時間はわずか1分。その間に口頭で謎の解答を伝えてくれればいいのだが、アロハ先輩にはそれは難しい。会話によるコミュニケーションが極端に苦手だからだ。

だが、アロハ先輩は
安心しろ、全ての謎は解けた!問題なしや。
と力強く宣言した。

高らかにそう言ったあと、アロハ先輩は手元のメモに太い文字でなにやら書き付けている。その手元をリョーキちゃんとエンスーは心配そうに見ている。

と、突然「ヌハ!」とアロハ先輩の口からなんとも形容のしようがない音声が飛び出て、メモを書く手がピタリと止まってしまった。一点を凝視し、脂汗のようなものを書いているアロハ先輩。先輩になにがあったのか。極度の緊張のなせる技か、、でももう時間がない、、。ハラハラしながら見ていると、アロハ先輩は最後の10秒で我に帰り、なにやら大急ぎで書き付けると、僕に渡した。

「これで大丈夫や。」

アロハ先輩はそういって、似合わないウインクをくれた。

渡されたメモには、、。

LとF→ライト兄弟は史実の兄弟ではない。技術の進化は定方向と格納庫の大きさが示している。ウィルバーは兄弟でもないし、殺されてない。秘すれば花、秘せずば花なるべからず。

なんだこりゃー??これだけではなにもわからない。「ウィルバーは兄弟でもないし、殺されてない!?」明らかに死んでるじゃないか!KB大探偵討議部お墨付きの墜落遺体となって、遺体安置室に鎮座している。

大急ぎで、過去のアロハ先輩の発言を思い出し、メモにある言葉と照らし合わせる。フライヤーの綴り、、。あれ、このメモにはLとFと書いてある。プレゼンではFとLではなかったっけ??それに「俺らの知ってるライト兄弟ではない」とも言ってたな、、。

ライト兄弟がなんとなくおかしい、違和感がある、ということについてはエンスーも強調していた。「FX」は「未来は未知数」の略、、。それに、技術の進化は、小さく、軽く、、とも以前に言っていた。リョーキちゃんに論破されてたけど、、。格納庫の周囲は、、30ヤード。つまり、27メートルくらい。初代ライトフライヤーの翼長は12メートル。確かに格納庫が小さい。どういうことだ?フライヤーFXはかなり小さくなってたってことか。これらが一つにまとまるというのか!?さらに秘すれば花!?!?

その時に気付いた。いや、気付いてしまった、、。ヒロミさんの膝が露出し、生足が披露されていることに!「秘するが花」はこのことか!アロハ先輩、肝心な最後の10秒でなに書いてるんだ!?ヒロミさんの膝も邪魔して、考えがまとまらない。何気にヒロミさんの攻撃、やたら効いている!!

(続く)

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