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ボビー吉野×ARATA「令和の少年隊ダンス論」トークイベント全起こし④「まいったネ 今夜」編

③の続きです

ここから後半戦に入ります。ボビーさんが思い入れのある3曲目に挙げたのは、『令和の少年隊論』のインタビューで“少年隊にしかできない”最高峰のダンスと話していた「まいったネ 今夜」です。先日放送された「中居正広のダンスな会」(テレビ朝日)でもs**t kingzさんが絶賛し、この曲で沼落ちする人も多いと聞きますが、おふたりの対談で見どころがさらに鮮明になっていきます。ぜひご堪能ください。

Text by 高岡洋詞
Photograph by 宮田浩史

真打ち登場「まいったネ 今夜」

前半を終え、10分の休憩後、画面が明転すると、すでに盛り上がっているふたり

ボビー えっと、押したらその形。

ARATA 押すタイミングはその人がそこでやるんですね。

ボビー そうです。舞台監督がやる。

高岡 ボビーさんARATAさん、すみません。後半戦始まっています(笑)。

ボビー もう始まっていますか。

ARATA 始まっている? すみません! 了解です。

高岡 ご覧になっている方からご感想をいただいております。「ダンスの専門家に詳しく解説していただくと、今までただ単純ににすごい、すごいと思っていた少年隊のダンスが、細部にわたっていかにすごい技術が詰め込まれているか、そしてそれらをさも簡単そうにこなしてしまう少年隊の身体能力と表現力、いかにすごいかがあらためてわかりました」。

ARATA よかったー、すごい(拍手)。

ボビー 本人たちもきっとうれしいと思います。

ARATA たしかに。やってきたことが伝わるっていうのはそうですよね。

ボビー 普通に思われていたらね。

ARATA 普通じゃないですもんね。

高岡 おひとり3曲ずつ挙げていただくことになっていて、前半で2曲まできたんですけれども、残り1曲ずつ挙げていただけますか? まずボビーさんの思い入れのある曲。

ボビー やっぱり「まいったネ 今夜」です。

ARATA んー! きました。

ボビー これは前半部分が山田卓さんの振付でね。

ARATA 後半からボビーさんですか?

ボビー 間奏から。

ボビーさんは『令和の少年隊論』のなかでも「一番完成度が高くて、誰にもまねできない、少年隊だけのジャンル」として「まいったネ 今夜」を挙げた

ARATA わかりました。(再生)このニシキさんの表情から始まる世界観というか。その前はトークで小林幸子さんに「ニシキくんは如才がない」って言われて「長いものには巻かれろ、ですから」とかふざけていたのに、急にキリッとして「えー?」みたいな(笑)。「どういうこと?」って。

ボビー 切り換えですね。

ARATA 単純に顔がみんなイケメンという。もう見慣れていらっしゃるかもしれないですけど、普通にパッと見たときにあらためて「かっこいいよな!」っていう。

ボビー いい感じに成長しましたよね。子供の頃から知っていますから(笑)。

ARATA ちなみにいくつぐらいからですか。

ボビー ニシキだったらまだ高校生になってないかもしれないぐらいからですね。

ARATA まだちんちくりんって言ったらあれですけど、子供がちょっと大きくなったぐらいな感じですよね。中学生男子なんていったら一番大変なときですもんね。

ボビー そうですね。

ARATA はい、間奏まできました。うーわ、脚が! ジャンプが! 脚が! でも、先ほどもおっしゃいましたけど、床がこれまた光沢感あってけっこう滑りそうな。

ボビー めっちゃ滑りますね、ここは。けどバランスしちゃうんですよね。

ARATA すごい。あらためて今回わかったのは環境ですね。「普通はこんなのできないよ」っていう環境でやっているということが、まず前提としてある。

ボビー そうですね。

これだけ速いのにバタバタうるさくない

ARATA ひゃー。ここは自由に、みなさんバラバラで。

ボビー 全部振付なんですけど、バラバラに付けていますね。

ARATA ボビーさんが全員にそれぞれ振りを?

ボビー そうですね。

ARATA おひとりおひとりの個性がすごく出ているな、とか思っちゃいました。

ボビー 逆に自分で出しているんだと思います。この個性だからどうっていうよりも、だいたい「この感じならわりと決まるだろうな」っていうところと、あとは全体でのバランスですよね。上にいく、下にいく、速くいく、ゆっくりいく、とか。

ARATA 3人のコントラストを。

ボビー そう。コントラストをつけて、あとはもう本人たちの表現力で。それぞれの個性っていうか。

ARATA 存分に出してやっているっていう。

ボビー はい。

ARATA そういうことなのか。3人がどのタイミングでどうするかはかっちり決まっているんですね。回っている人の隣で足を上げているのも意図した動きで、結局、3人全体のバランスをイメージして。

少年隊のバランスに感心するARATAさん。「3人って絶妙な編成で、個々がしっかり強くないと成立しないんです」(『令和の少年隊論』より)

ボビー そうですね。

ARATA 無理ですよ、そんなの(笑)。そんなのできないですよ。

ボビー で、音はめは着地で。

ARATA 音数は多くないですよね。

ボビー シンプルで少ない。

ARATA (停止)音数少なくシンプルで、ジャズピアノの音色で、っていうところに対してけっこうダイナミックに動いているんですけど、うるさくないんですよね。これだけ動いているのにうるささがまったくなくて、しかも着地するときもドッタンバッタンしない。

ボビー この子らの能力が本当に高まったときだと思うんですよ。今までの積み重ねもあるから、これだけ速くジャズの動きをしてもバタバタ感がないっていう。

ARATA 安定感がすごい。跳んでいるときもなんですけど、着地かな、って見ていて思っているところがありまして。

ボビー 着地ですね。

ARATA 地面にいるときの美しさ。

ボビー 足元が細いというか、全部ピッと伸びて。

ARATA つま先が伸びた状態ですもんね。

ボビー いわゆるかかとが上がった状態で、脚を長く見せる。バレエで言うルルベってやつなんですけど。

ARATA だから遠目で見たときに、みなさんの脚がずっと鉛筆の芯みたいにシューッとなっているんですね。衣装にもこだわりがありますよね。たぶん白い靴だとそうはならないから。(再生)おー。この跳んでクロスするときって、全員前を向いているわけじゃないですか。だから「ぶつからないかな」とかたぶん普通にみなさん気になると思うんですよね(笑)。そこらへんのあうんの呼吸じゃないですけど、先ほどバミリが難しいみたいなことをおっしゃっていたじゃないですか。

ボビー バミリは基本的にないんですよ。

3人の“神”感覚で互いの位置と距離を把握

ARATA (停止)バミリっていうのは、ステージの前のほうに、お客さまからは見えない位置に蛍光テープとかで演者さんの立ち位置を示す目印なんですけど、それがない。つまりどこが真ん中かもわからない状態でやっていらしたんですね。

ボビー 何気なくやっているけど、まずそのこと自体がすごく大変なんですよ。

ARATA そうなってくると、位置を決めるのは自分たちの距離感ですよね。

ボビー はい。

ARATA きれいに見えるのは、3人が互いの位置と距離を身体感覚で把握しているからなんですよね。前の人には後ろにいるふたりが見えないわけじゃないですか。

ボビー そうですね。ちょうどいい距離感は、やっぱり長くやっているから本人たちが自然に計算しているんです。それはどうにも説明がつかないんだけども。

ARATA そこは説明できないですよね。もう3人の感覚。

ボビー かなり激しくて危ないこともやってきましたからね。最初の「日本よいとこ摩訶不思議」でも、ロンダートからバク宙とかやっていますけど、ひねって曲がっちゃうと空中でぶつかりますから。

ARATA そうですよね。脚と脚がこうなる(ぶつかる)とか。

ボビー それをもう完全にまっすぐに飛ぶわけですし、お互いスレスレにいって、なおかつ前にいたり後ろにいたりするから、もう距離はとれないですよ。

ARATA けっこうきれいに整列されていて、「距離近いな!」って思ったんで。

ボビー めちゃくちゃ近いです。

「めちゃくちゃ近いです」。たしかにメンバー間のスタンス、ものすごくタイトで驚くことがよくありますよね。おまけにバミリもないとは……

ARATA こんなにブンブン脚を高らかに上げているのに当たらないという、前の人の頭に。僕の体験談では当てたことありますし、当てられたことあります、本番で(笑)。それぐらい難しいんですけど、ここまでダイナミックな動きが一回もぶつからないってのはすごい。でも植草さんかな、僕は「状況を見ているな」っていつも思って見ていて。気を配るというか。ヒガシさんもニシキさんもすごく(動きが)高いし遠いのに、その間にうまく入りますよね。

ボビー スッとね(笑)。そうですね。

ARATA これがすごいなっていうか、やっぱ調和をとるために植草さんのポジションって欠かせないんだろうなってすごく思っています。どうですか、3人のバランスや相性については。これ、あとでまた聞こうとは思うんですけど。

ボビー さほど考えてはいなかったんですけど、3人でずっとやっているので、それぞれの役割みたいなものをすごく意識したと思います。

ARATA やっぱり得意、不得意はありますよね。

ボビー よく少年隊同士になると「植草が少し遅れる」だのなんだの言っていて、自分でもそれで笑ってネタにしていましたけど、基本的にはすごくできるんですよ。けどあのふたりがすごく……。

ARATA 普通にできる人と、すっごいできる人たちのグループってことですもんね。

ボビー そうなんですよ。

ARATA (再生)んー、すごいっすね。

ボビー ここらへんの流れはわりと好きなところですね。2コーラスめの。

ARATA うわーっ。また見入ってしまった(笑)。(停止)フロアにスーッと入るところとか、先ほどもお話ありましたけど、つま先を床に寝かせた状態で入っていくんですよね。

ボビー そうして滑らせるのも距離感っていうか、遠心力をうまく使いながら最後まで床につけて、ポイントでつま先を伸ばして大きく円を見せていくわけですね。そのまま上がるのが、またすごく難しいんです。

ARATA そうですよね。流れがそもそもあって、そのスピードに合わせて一回床に入って上がるっていう。

ボビー はい。そのまま入ったら上がる。

ヘッドロール入れる人は間違いなくうまい

ARATA すごいですよ、これ。(再生)《君はオモチャにして》の部分です。うわー。《ガラス細工だから》です、今。このヒガシさんの《壊さないようにと》の歌い方、ちょっと肩が入る感じが渋いっす。

ボビー ちょっと切ない系だから合っていますよね。

ARATA そうですよね。あぁ、いいですね、植草さん(のソロ歌)がくると安心します、すごく。あーっ!

ボビー ヘッドロールね。

ARATA (停止)《微笑みだけ残す》のあとの「タラララララ」でニシキさんがターンした後に、最後に首がクルッとこう入るんですよ。これがヘッドロール。こういうのが一個カッて入ると、やっぱ普通のターンじゃないなって思いますし、ここでキレがみなさんに伝わるんじゃないかなって。首、強いですよね。

ボビー そうですね。

ARATA (再生→停止)この首を止めたところから《Ah》でもう一個奥に入る(シャウトに伴って後ろに倒す)ところの連続性といいますか、流れが気持ちよすぎて。

ボビー 僕たちのグループは首を使う動きがすごく多かったので。

ARATA あ、ボビーさんがやっていたダンスチームが。

ボビー そうです。その頃ヘッドロール系の動きをよく使っていたので、その流れで教えて、ニシキも使い方がすごくうまくなったという。

ARATA ヘッドロールを入れる人は間違いなくうまい人です。このプラスアルファができるかどうかで、けっこうレベルが変わってくるかなって思っています。すごい。(再生)んー。クライマックスが……あーっ。(停止)これ(両足を踏ん張って両腕を前から引っ張るような動き)を一個入れるのやっぱり大事ですよね、ここで。

ボビー そうですね。

ARATA 気合い入りますもんね、すごく。(再生)おぉー……。

ボビー ここらへんはもう、少し抜き気味で。

ARATA 抜き気味ですね、最後。うぉー。このへんの個々の動きはアドリブですか?

ボビー これはアドリブですね。

ARATA ゆるく入って一気に個人が解放されるとこが気持ちいいですね、やっぱりね。

ボビー そういうとこの感じ方はすごくいいと思いますよ。

ARATA そこがいわゆるアーティスト性ですもんね、この人たち個々の。

ボビー と思います。振付をどう自分で解釈してそこにプラスアルファしていくかっていうところが。

ARATA 表現の部分ですよね。最後の「シャバダバダバ」です。

ボビー はい。ここがクライマックス、最後のサビですね。

ARATA (笑)なんでここで一回跳んで下に入って、またパッてきれいに立ち上がれるんでしょうね。空間ですね、ステージが。

ボビー そう。さっき言った3人で完全に空間を埋めるってやつですね。手足の伸びるところじゃなく、さらにその上と下、左右まで、全部を埋めます。

ARATA なるほど。「さらに」がすごくわかりますね。下って難しいんですよ、ダンスやっていて。フロアってなかなか使えないので。……(スタッフを一瞥して)時間大丈夫ですか? 「まいったネ」の顔になりましたね、今(笑)。じゃあ次いきますか。

≫≫≫⑤に続きます

このトークイベントの特典として実にたくさんの本にサインをしていただきました

【編集部メモ】先月、ARATAさんが「少年隊はケタ違いにすごい!」と話していました(日曜日の雑談会の切り抜き)

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2022/3/26(土)20:00-22:00 @ 本屋B&B
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