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少年隊、あの強烈なイントロはどうやって生まれたのか?

「令和の少年隊ミュージック論」全起こし①

2022年3月26日(土)、下北沢の本屋B&Bで書籍『令和の少年隊論』の増刷を記念して配信トークイベント第2弾「令和の少年隊ミュージック論」が開催され、本当に多くの方にご覧いただきました。

第1弾トークイベント「令和の少年隊ダンス論」レポート①~⑥はぜひ以下のリンクよりお楽しみください

ゲストは『令和の少年隊論』でインタビューに応じてくださった、“ジャニーズ音楽のキーマン”こと音楽プロデューサーの鎌田俊哉さん、「今、少年隊が再評価される理由」をマキタスポーツさんと鋭く分析してくださった音楽評論家のスージー鈴木さん、そして「シングル・アルバム批評」を執筆してくださった矢野利裕さんの3名です。
 
イベントのアーカイブ視聴は終了しましたが、第1弾に続き、今回もその内容をできるかぎり忠実にテキスト化しました。第1弾のレポート量をさらに超え、5万字近いので(!)数回に分けてアップしていきます。

写真左から、スージー鈴木さん、鎌田俊哉さん、矢野利裕さん

365日24時間、昼も夜も少年隊メンバーと過ごしてきた鎌田さんのリアルエピソードとともに、数々の名曲が生まれたアツい舞台裏に迫ります! ジャニー喜多川さんとの珍事件や、日本の音楽業界を支えてきた大御所たちとのリアルな会話など、日本の音楽史を語るうえでも貴重な記録となるトーク、じっくりとお楽しみください。
 
Text by WE LOVE SHONENTAI編集部
Photograph by 宮田浩史

ジャニーズ音楽を語るのに最強の布陣でお届けします

高岡 さっそく『令和の少年隊論』増刷記念トークイベント、「令和の少年隊ミュージック論」を始めてまいります。本日司会を務めますWE LOVE SHONENTAI編集部のひとり、編集者兼ライターの高岡洋詞です。よろしくお願いいたします。12月にボビー吉野さんとARATAさんをお迎えして……って、あ、ドリンクだ。せっかくブックカフェなので、お三方にドリンクのオーダーをおうかがいして、その間におしゃべりをしていこうかと思います。
スージー 鎌田さん、どうしましょうか。
鎌田 僕はね、コーヒーをください。
スージー じゃ、私はビールを。
矢野 僕もビールいただきます。
高岡 12月にボビー吉野さんとARATAさんをお迎えして、第1弾トークイベント「令和の少年隊ダンス論」を開催し、おおいに盛り上がりました。おかげさまで増刷がかかりまして、発売3か月後に満を持して、第2弾のトークイベントを開くことになりました。本日のゲストのみなさんをご紹介いたします。まずは、真ん中に座っていらっしゃいますのが、音楽プロデューサーの鎌田俊哉さんです。
鎌田 よろしく。
高岡 (拍手)。鎌田さんは、ジャニーズ音楽出版の制作ディレクターとして、少年隊の楽曲やグループのコンセプトをイチから作り上げた、“ジャニーズ音楽”の最重要キーマンと言える人物です。ジャニー喜多川さんや筒美京平さんとの関係も非常に濃く、「仮面舞踏会」「君だけに」をはじめ、数々のヒット曲を世に送り出してきました。SMAPの「$10」「夜空ノムコウ」、嵐の「A・RA・SHI」、修二と彰の「青春アミーゴ」、KAT-TUNの「Real Face」なども鎌田さんの手によるものです。現在はMISIA、EXIT、リトルブラックドレス、倉木麻衣などをプロデュース。紅白歌合戦で話題をさらったMISIAと藤井風のコラボ、藤井風にあの曲「Higher Love」を書いてもらったのも、鎌田さんのお仕事だったそうです。では鎌田さん、ひとことご挨拶をお願いいたします。
鎌田 こんにちは。みなさんよろしくお願いします。17歳のときにバンドでデビューして、バンドは成功しなかったんですけども、ひょんなきっかけでジャニー(喜多川)社長に会って、たまたま少年隊に巡り会って、そしたら本当に史上最高のグループだったっていうね、ありがたいことで。そういう巡り会いに非常に感謝していますし、ジャニーさんの教えをこれからの人たちにどんどん伝えていければなと思っていますので、みなさんが何かのきっかけで少年隊を愛してくれたということを、ぜひそのまま続けていってほしいと思っていますね。

高速&パワフルな語り口から、次々と驚きの事実が明らかに!

高岡 鎌田さんのお話を聞ける機会は本当に貴重なので、ファンの方たちは楽しみにされていると思います。お次は音楽評論家のスージー鈴木さんです。
スージー よろしくお願いします。
高岡 ラジオ「9の音粋」や、先週、特番で少年隊を特集された「ザ・カセットテープ・ミュージック」などでご活躍中です。今日もNHK文化センター青山で講義をされた足で、こちらに駆けつけてくれました。
スージー 駆けつけました。本当に。ありがとうございます。
高岡 ご著書も『EPICソニーとその時代』『平成Jポップと令和歌謡』『恋するラジオ』『80年代音楽解体新書』『イントロの法則80’s』『サザンオールスターズ1978-1985』など、多数ございます。ではスージーさんから、少年隊のお好きな曲をひとつ挙げていただきつつ、ご挨拶をお願いします。
スージー わかりました。まず呼んでいただきありがとうございます。よかったのは、鎌田俊哉という人が怖くなかったことです。
全員 (笑)
スージー 殴られたらどうしようかなと思ってたんですけど、いちおう優しい人です。あと矢野さんという若くしてジャニーズに一番詳しい方がいるんで、今日は気楽だなぁと。さっきもお酒いっぱい飲んじゃいました。
えーと、好きな曲でしたっけ。他の番組でも言いましたけど、1986年の4月に上京してまだ貧乏でテレビがなかった頃に、「デカメロン伝説」がポーンと耳に入ってきまして。大阪から東京出てきてね、さびしいの嫌だなぁ、孤独だなぁと思ってたときに、ラジオ入れたら「ドレミラ~ミレド、ラシドミ~……♪」って。
鎌田 (笑)
スージー 最近は筒美京平研究といいましょうか。その流れのなかでシティポップの先駆けっていうのか、いわゆる都会的な音作りっていうのを敢然とやってたんじゃないかってこともありますんで、その仕掛け人を目の前にして、今日はいろいろ聞いてみたいと思います。よろしくお願いします。
高岡 (拍手)ありがとうございます。さぁ、そしてラストはですね、台本にすごいこと書いてありますね。えー、ジャニーズ音楽への愛情と造詣の深さでは業界ナンバーワンと呼び声の高い……。
スージー (矢野さんの著書『ジャニーズと日本』をカメラに見せながら)ナンバーワンです。
高岡 批評家の矢野利裕さんです。
矢野 はい、よろしくお願いします。
高岡 (拍手)1983年生まれと、このなかではグッとお若いですが、ご著書はたくさんありまして、講談社現代新書の『ジャニーズと日本』、P-VINEの『コミックソングがJ-POPを作った』、あと共著に『ジャニ研! TWENTY TWENTY』(原書房)などがあります。先月には講談社から『今日よりもマシな明日 文学芸能論』が刊行されました。現役の中学・高校の先生でもいらっしゃいます。矢野さんもお好きな曲を1曲挙げつつ、ご挨拶をお願いいたします。

推し曲を手に。何枚もシングルやアルバムレコードを持参してくれた矢野さん

矢野 僕はもともと古いレコードを集めるのが好きで、そのなかで少年隊を一番最初に聴いてグッときて、そのまま一番好きっていうか。「バラードのように眠れ」が一番好きですかね。このディスコな感じが本当にたまらないっていう感じで。さっきご紹介いただいたように、ジャニーズに関して、造詣の深さとかね、本当にちょっと畏れ多い感じですけど。でも聴いて、楽曲面から文化論的に論じたのが、さっきご紹介いただいた『ジャニーズと日本』でして。(スージーさんが本をカメラに見せたのに対し)ありがとうございます。今日は、そんな立場から、おふたりの話を聞くのを本当に楽しみにして来ました。よろしくお願いします。
高岡 (拍手)。本日はこのお三方で、少年隊ミュージックの真髄、ヒット曲が生まれた熱い舞台裏に迫ります。どんなアイデアと試行錯誤の数々があのキラ星のような名曲群を生み出したのか。じっくり掘り下げてまいります。ちなみに、注意事項なんですけれども、少年隊の曲は流れません! 音楽は一切流れませんので、そちらご注意ください。
本日の流れを簡単にご説明いたします。21時になりましたら10分間の休憩を挟みます。まず前半の1時間は、少年隊の楽曲制作秘話を紐解いてまいります。そして後半の1時間は、メンバー3人の素顔とスゴさに迫るべく、読者やファンのみなさんから事前に寄せられた質問にジャンジャンお答えしていきたいと思います。とはいえですね、第1弾のトークイベントはまったく予定通りに進まなかったので、盛り上がりすぎて予定が狂ってしまったらごめんなさい。

「ワカチコ」の衝撃~デカメロン伝説

高岡 さて、最初の話題なんですけれども、少年隊のシングルといえば強烈なイントロが有名だと。「仮面舞踏会」「デカメロン伝説」「バラードのように眠れ」「君だけに」もそうですね、指パッチン。このイントロ作りの秘密をうかがってまいりましょう。強烈なイントロというと、スージーさんと矢野さんは何が思い浮かびますか?
スージー 僕はもうさっき言いましたけど、本当「デカメロン伝説」の、日本歌謡曲史上唯一にして絶対の階名イントロ「ドレミラ~ミレド、ラシドミ~ドラソ、ワカチコ」(笑)。(鎌田さんのほうを向いて)あれはなんですか? あれは。

すばらしい回し力でトークを仕切ってくれたデカメロン派のスージー鈴木さん

鎌田 いやあの、「ダダダダンダダン」っていって、音階がたまたまそれだったんで、まあ印象的でね。アレンジをやりながら、印象的だからこれ歌ったほうがいいんじゃないかと。詞は秋元康さんに書いてもらって。「仮面舞踏会」ってアイドルにしては大人っぽい世界だったんで、もうちょっと、ちびっこが飛びつくような、うーん、「ピンポンパン」的なところがほしいなと思って、秋元さんにも相談したら、「子どもも歌ったらいいんじゃないですか」とか、みんな曖昧にいろんなこと言うわけですよね。それで「ちょっと子どもを集めてやろう」とか言って。「ワカチコ」は、錦織がスペクトラム(「トマト・イッパツ」)を聴いていて、僕はサディスティック・ミカ・バンドのワカチコもあって。あいつはスペクトラムだと思ってるし、僕はサディスティック・ミカ・バンド(「WA-KAH! CHICO」)と思ってるけど、やろうと思ってることふたり一緒で、ワカチコってやろうって。で、「仮面舞踏会」もあの5拍子の「ダーン」ってね、ああいう始まりじゃないですか。僕がバンドやってる頃から「ドレミファドン」って番組がありまして。
スージー ありましたね、「クイズ・ドレミファドン!」。
鎌田 あれイントロ当てクイズじゃないですか。まずあれで、一瞬でみんなが、パッて(テーブルを叩きクイズの早押しボタンを押すマネをしながら)当てられる曲にしなきゃいけないと。
矢野 なるほど。
スージー あー、なるほど、なるほどね。(「仮面舞踏会」のイントロのマネをしながら)ゔぅ~♪、(ボタンを押すしぐさをして)ピンポンって。
鎌田 そう、もう一発じゃないですか。で、「ぅう~ワカチコッ」(ボタン押すマネをする)でわかるじゃないですか(笑)。

「ぅう~ワカチコッ」も、ドレミファドン対策だったとは!

スージー わかるわかるわかるわかる。
鎌田 だからもう全部、「バラードのように眠れ」も電話の音だし、ジェット機が「ヒュー」といってるんですよね。「じれったいね」も風の音で。そういう「出し物」なんですよね。作詞の松本(隆)先生と話をしてるときに、やっぱり物語、1曲を短編の映画にするっていうような考えをしてるわけですよ。そうすると、そのなかにドラマがなきゃいけないから、始まりがあって、「What’s your name?」なんか、タタタタタと走ってきて、コンコンコンコンって始まって、最後バタンって閉まるじゃないですか。だからそういうことで作ってるんですよ。

わちゃわちゃと雑談しながら曲ができあがる!?

スージー 1回止めていいですか?(笑)「ドレミラ~ミレド、ラシドミ~ドラソ♪」から問題提起していいですか?
鎌田 はい。
スージー 今さっき、作ってるなかで、秋元さんが「子どもの声がいいじゃないか」って言ったというお話がありましたけども、ジャニーズのアレンジっていうのは完璧な設計図があって、ルールを決めてピシッとやるんじゃなくて、なんかその場で決めてません?
鎌田 そう、そうそうそうそう。
スージー (手を叩いて笑いながら)え゛ーっ、え? そうなんですか?
鎌田 プロだから、みなさん。筒美(京平)先生も、松本隆さんも、秋元さんも、もちろんジャニーさんも。演奏する人たちもプロだから、みんなその場で、ああでもないこうでもない言うわけですよ。
スージー あ、そういう場があるわけなんですね。
鎌田 いやいやいや、場を作ってるわけじゃなくて、たまたまその頃は、みんなスタジオに集まったりしてたから。松本さんと筒美先生が雑談しながら、「なんかこういうのはどう?」みたいな。僕も横で聞きながら、歌入れしながら、「あ、それいいからやりますよ」みたいな。そんな感じで。
スージー 「ドレミラ~ミレド」、筒美京平、怒りませんでした? ふざけんじゃないって(笑)。
鎌田 怒らない、怒らないです。「いいじゃない、いいじゃない」って。
スージー あー、そうなんだ。
鎌田 筒美先生にとって、僕なんかもうほら小僧の小僧で、24、5歳で。ジャニーさんに会って、いきなり少年隊担当とかいって、デビュー(前の)1年半ぐらいずーっと筒美さんと曲を作って、本人たちに練習させてんですよ。僕は週に2回ぐらい先生と会うんだけど、すごく僕の話を聞いてくれるんですよ。ジャニーさんもそうだし、筒美先生も、「いや、若い人が未来だから」っていうことなんですよ。
スージー 怖くなかった?
鎌田 怖くないんですよ。「なになに? なに思ってるの?」って。引っ張り出そうとするんですよ、若者の話を。ジャニーさんも筒美さんも、おじさんたちがわかったようなことを言うのは全然聞かないで(笑)、若い人たち、少年隊のメンバーの話も聞くし。「なになに?」って、「それ流行ってんの? いいねー」みたいな。
スージー 鎌田さんのおかげだ、東京の孤独感を癒してくれた「ドレミラ~ミレド」。ありがとうございました。
鎌田 いやいやいや、スージーさんを癒そうとは思ってないんだけど(笑)。子どもたちをね、わちゃわちゃさせたいなと思ってね。
スージー 楽しいな。筒美京平が「いいじゃない、いいじゃない」って言うんですか。
鎌田 そうですよ。好奇心旺盛な子どもなんですよ。ジャニー社長も、筒美先生も、松本さんも。もちろん秋元さんも。みんなもう子どもっぽくて、それでわちゃわちゃさせたいって、そういうのが集まるから、いろんなネタが落ちてきて、それをなんとなく選んで。
スージー (司会に向かって)大丈夫ですか? コメント欄に「スージー鈴木、筒美京平のマニアックな話、聞いてんじゃねぇ」とか、「早くニッキの話しろ」とか(笑)。
高岡 大丈夫です。むしろみんな聞きたいと思います。
スージー ありがとうございます。
矢野 「ワカチコなんだったのか論争」、ずっと僕の回りでやってて、居酒屋とかで。あれなんだったんだって。
スージー スペクトラムの「トマト・イッパツ」で……。
鎌田 でもあり……。
矢野 ニッキさんが、ラジオでおっしゃってたのは、「トマト・イッパツ」もあれば、「ワッチコンワッチコン」をまねしてたのもあるんだけど、いやサディスティック・ミカ・バンドっていう話もあるぞとかね。
鎌田 僕のほうはね。
矢野 でもそれがなんていうんですかね。やりとりのなかでだんだん作られる感じだったんですかね。
鎌田 「やろう、やろう」ってね。
スージー でもあれですよ、「ザ・ベストテン」で語られたのは、ギターの(ギターを弾くふりをしながら)「ワクチョンッ」。
鎌田 そうそうそうそう。
矢野 ありましたね。
スージー っていうのが。
矢野 ワウワウギター(ギターでワウペダルというエフェクターを使うこと)的な。
鎌田 そうそう、ワウワウのね。ギターのあれなんですけど、かっこいいじゃないですか。
スージー かっこいいですね。

・・・・・・②へ続く!

【編集部メモ】鎌田さんと少年隊メンバーの親交の深さは、植草克秀さんのツイートからもはっきりとわかります。現在、ディナーショーツアーまっただなかですね、がんばってください💪
https://www.curtaincall.tokyo/katsuhideuekusa/

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