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ストレスチェックを再確認! メンタルヘルス対策を見直そう

前回の記事で、令和3年度全国労働衛生週間で取り上げられたワーク・ライフ・バランスのお話をしました。
本記事では、実施要綱の2番目に挙げられるメンタルヘルス対策について、ストレスチェックを軸に詳しくみていきましょう。

職場のメンタルヘルス対策は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づいて推進するよう推奨されています。この指針は厚生労働省によって2015年にまとめられました。

また、2015年からは、メンタルヘルス対策の充実・強化を目的に、従業員数50人以上の事業所で「ストレスチェック」が義務付けられています。50人未満の事業所は義務ではありませんが、メンタルヘルス対策の重要性を考えると、要点だけでも取り入れて職場の環境維持に役立てたいところです。

メンタルヘルス対策とは

厚生労働省の指針をもとに、メンタルヘルス対策について少し整理しておきましょう。

メンタルヘルス対策の「3つの段階」
メンタルヘルス対策は、予防⇒悪化防止⇒再発・離職防止のフェーズで捉えると、次のような3つの段階での対策が求められています。
・一次予防:未然に防ぐ段階
・二次予防:不調が現れた従業員を早めに発見し、適切な措置を行う段階
・三次予防:不調により休職した従業員の職場復帰を支援する段階

メンタルヘルス対策の「4つのケア」
そして、職場において事業者側が講じるべき労働者の心の健康に関する措置として、次の4つのケアを継続的・計画的に行うよう求めています。
セルフケア:従業員自身が理解し、気づき、対処できるよう支援
ラインによるケア:職場の管理監督者が把握し、職場環境を改善
事業場内産業保健スタッフ等によるケア:企業内の産業医、保健師・人事労務管理スタッフが支援
事業場外資源によるケア:企業外と連携し情報・助言・サービスなど活用

一般的なリスク管理から考えても、最も重要なのは「一次予防」でしょう。心の不調の兆しにできるだけ早く従業員自身と職場が気づくよう、企業全体で小さな芽のうちに摘み取るしくみをつくり、支えていく必要があります。
この不調の兆しを見つけるツールが「ストレスチェック」です。

ストレスチェックとは

ストレスチェックは、従業員が自分のストレスの状態を知ることにより、ためこまないように気をつける「セルフケア」や、ストレスが高いとわかったときに職場環境を改善する「ラインによるケア」がうまく進むようにしてメンタル不調を未然に防ぐ「一次予防」のしくみです。

ストレスのしくみ
ストレスは、もともと機械工学の用語の「物体が歪んでいる状態」で、この概念が医学に持ち込まれ、内外からの刺激(ストレッサー)により心身が歪んでいる状態を「ストレス状態」と表現するようになったものです。
ストレッサーの要因は、外的・内的と、身体的・心理的の2つの軸で表すと、次の4象限で考えることができます。
環境的要因:天候や騒音など
身体的要因:病気や睡眠不足など
心理的要因:不安や悩みなど
社会的要因:人間関係がうまくいかない、仕事が忙しいなど

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これらのストレッサーにさらされる「ストレス状態」が長期間続くと、環境に適応し心身を安定させるホメオスタシス(生体恒常性)の3大システムである「自律神経(交感神経と副交感神経)」「内分泌(ホルモン)」「免疫」のバランスが崩れ、心身の健康が失われていきます。

ストレスチェックが調査する3要素

ストレスチェックでは、職場の中でどのようなストレス要因(ストレッサー)があるのか、どのくらい心身に歪みが出ているのか、またその状態に対してどんなサポートがあるのかを調査します。
質問項目としては、大きく次の3要素が含まれるようにしましょう。
・ストレスの原因に関する質問
・ストレスによる心身の自覚症状に関する質問
・従業員に対する周囲のサポートに関する質問

厚生労働省では、簡易調査票として次の57項目を挙げています(さらに簡略化した23項目版もあります)。参考にして、自分の職場に合った調査を行うとよいでしょう。

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(出典:厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド」)


ストレスチェックの実施手順

具体的なストレスチェックの実施方法ですが、以下の手順で年に1回実施することが求められています。

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(出典:厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」)


ストレスチェックの実施における注意点

ストレスチェックは、従業員の心身の内面や周囲との人間関係についての回答を求めます。個人のプライバシーに関するものであると同時に、働く場への評価も含み、センシティブな内容を含んでいます。

ストレスからの不調を未然に防ぐために最も重要な現状把握を行いたいのに、回答結果が職場批判や労働能力の査定とつながることを恐れ、実態に沿わない内容に書き換えてしまう可能性もあります。

企業は、健康情報が特に適正な取り扱いの厳格な実施を確保すべきものであることに十分注意し、以下の点に十分注意してストレスチェックを実施する必要があります。

労働者の同意
ストレスチェックを実施した場合、医師や保健師などストレスチェックの実施者は、従業員本人の同意がない限りその結果を企業へ情報提供してはなりません。

事業場内産業保健スタッフによる情報の加工
産業医等は、相談窓口や面接指導などで知り得た従業員の個人情報を企業に提出するときは、範囲と提供先を措置上の最小限にする必要があります。
また、従業員の情報は、集約・整理・解釈するなど適切に加工して情報提供します。診断名や検査値、具体的な愁訴内容など詳細な医学的情報は提供してはなりません。

健康情報の取り扱いに関する取り決め
健康情報の保護に関して法令で守秘義務が課されている医師や保健師、関連事務を取り扱う者以外の人が個人情報を取り扱う場合に備え、企業はあらかじめ、個人情報を取り扱う者と権限、取り扱う情報の範囲、管理責任者、守秘義務について規程などで取り決めておくことが望ましいとされています。
さらに、こうした個人情報を取り扱うすべての者を対象に、規程の周知や教育を行うことが求められています。

心の健康に関する情報を理由とした不利益な取り扱いの防止
企業が従業員の心の健康に関する情報を把握したとき、その情報を理由として以下の不利益な扱いを行ってはなりません。
・解雇
・雇い止め
・退職勧奨
・不当な動機または目的による配置転換、職位(役職)の変更
・その他、労働契約法等の労働関連法令に違反する措置を講ずること

また、ストレスチェックの結果、高ストレスと判明した従業員は、医師による面談を受けることができます。企業がこの申し出に対して不利益な行いをすることは禁止されています。


データの取扱いには細心の注意を

ストレスチェックの結果の取扱いには細心の注意を払いましょう。

結果の通知は本人のみに行い、結果は本人の同意がなければ他者へ開示できないようにする必要があります。企業や職場の監督者が見るのは、個人情報ではなく加工された集団分析結果でなければなりません。
また、データは厳密な管理のもと、5年間保管することが義務付けられています。

従業員全体に対して調査を行い、厳密に個人情報を管理しつつ面接指導や職場環境の改善を促し、報告の義務を果たしていく。毎年行われる一連の業務は、担当者にとって大きな負担となる可能性があります。

ストレスチェックのデータを一元的に管理し、誰もが安心して取り扱えるようなしくみにするのは、単なる効率化だけではありません。
メンタルヘルス対策に関わるすべての関係者が、各自に必要な情報を適切にまとめられた状態で受け取り、改善の行動に集中する。この環境をつくるために求められるのは、情報管理のミスを生まない安全なデータをつくり、管理するシステムです。

特定の人の手や目を介さず、本人の回答が適切なデータになって管理されるする一元管理システムが、職場全体に大きな安心を生みだし、メンタルヘルス対策の基盤となる情報管理の環境をつくるのです。

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