4.11 【DIY】素材づくり(棚板などの準備)

 プロによる設備の最終設営作業と時を同じくして、私たちにはまだまだ仕事が残っていた。

カナメ師匠デザインによる、仕事用デスク、棚の板、キッチンカウンター(作業台)の素材制作であーる。

カナメはこのために、めっちゃくちゃ動画を見ていた。

ちなみに私は文字に頼るところがあり、何かを調べるとなると、まずAmazon Kindle Unlimitedで検索をかけて、無料で読めるものを片っ端からダウンロードして斜め読みをして、タリーズで延々と本を漁り(買わない)、ネットの記事を検索する。まず最初から動画を探すことはない。色々と調べて(検索して)いるうちに動画にヒットして見ることはある。

カナメはまずYoutubeを探す。そして延々と見る。見る。見る。

私から見ると遊んでいるようにしか見えない........w

しかも、私なら飛ばして飛ばして必要なところだけ見ようとするのだが、彼の場合は、オープニングのどうでもいい話題から(うちの嫁がどうしたこうしたとか)、全部見る。横から音声が聞こえてくるので、時々耳に入ると、

「そこ、フツー飛ばさない?」

と思ったりする。途中で「ガハハ」と笑ったりしてる。

めっちゃ楽しんでるなー。

という感じで趣味と実益を兼ねて準備をしている。キミは多分長生きできそうな気がする。いや、ちょっとした勘なんだけどさ。人生楽しんでいてよろしいよろしい。

違う。

「スケジュール押してるから、早く決めてよーっ!!!!」

と言いたい気持ちをこらえて、カナメのガハハの声を聞く。今日も平常運転だ。

カナメの性格をよく知っているから、言いたくても言わない。見た目より実際はちゃんと動いていることが多い。逆に私はバタバタと色々とやってる感だしているけれど、実際はあまり進んでいないことがある。何故だ。

そんなカナメがホームセンターに行き、でかいカートに木材をカタカタと大量に積み込む。めっちゃワイルドである。手には複数枚に分かれた設計図と数字が書かれている。

謎に満ち満ち過ぎてる......

その大量の木材を、お店のカットカウンターに持ち込む。

カナメは、自分で書いた設計図を見ながら、この木を何センチのところで切ってください、とお願いしていた。

ワンカット30円!!!!!

カナメは、電気ノコギリも買っていて家にあるのだが、30円でカットしてくださるならいいよねー。

そして切った木材はすべて配達して頂く。楽だなー。いい時代だ。

これまでの間、遊んでいる様にしか見えなかったカナメであるが、デスクトップ、棚、キッチンカウンターの設計をしていて、強度などを考えて、それに適切な素材と厚さの木材を選んだりと、色々と細かいところまで研究していたらしい。

作業に必要な工具(電動工具含む)についても、大工のイチローさん、ケイテンのマサトシさんのアドバイスを聞き調達し、WATOCOオイルとBRIWAXを注文していた。


私がしたことは、「私のデスクは広い方がいい」「キッチンカウンターは防水が望ましい」などご意見しただけであーる。あ、カナメに言われてタワシは買っといたけどな。オレ、お気楽担当......

さて。

設計はカナメなのだが、作業はシェアしつつ行う。カナメが言う。

「この木は、デスク用ね。オレとバンリと同じ大きさでいいよね。幅145センチ也。サンディングしてBriwax仕上げにする。こっちのはキッチン用ね。ワックスでは防水できないから、一応WATOCOオイルに決めた。棚はデスクと同じでいいからBriwaxな。まず、サンディングから。サンダーあるからそれで。」

ということで、切った木材を屋上にあげる。作業台も買ってあったので、その上に板を置いて、カナメがサンディングを始めた。

私はランチの準備(ホットクックさんに材料ぶち込んでスイッチを押すという、非常に熟練を要する仕事)を終えて、屋上に上がった。

疲れ果てたカナメがいた。

「あかん。めっちゃ疲れる。ちょっと交代して。」

え、私がやってもいいの?やるやる!!

板をサンディングすると、目に見えて表面がキレイに仕上がってくる。

「これ、デスクな。」

カナメが言う。これって私が使うデスク???それは身が入るねぇ。

そう言えば同じサイズの板が2枚あるな。これが私とカナメのデスク2つね。別のサイズの板が6枚あるのだけれど、これは棚か。これもサンディングするのかな?

カナメは、

「そうそう。これ全部やんなきゃいけないんだけど、オレもう死にそう。バンリやって。」

と言い放って降りて行ってしまった。

カナメは言っていることと脳内が100%マッチしているので、間違いなく疲れてるんだろな。やるやる。私やっとくわ。

ということで、一人で黙々とサンディングマシン片手にウィーンと削り始めた。ずっとずっと削っていた。

実は、サンディングの動画は私も一緒に見ていたので、紙ヤスリをいくつも買っておいたのだ。番号は、60、80、120、240というもの。数字が小さいものから始めて、倍倍に進めていく。例えば、60番→120番→240番、という様に3回くらいすると良いらしい。どんどんヤスリの目を細かくしていくのだ。

私とカナメの机は横並びでつなげるので、左側に座る私の机の左端、右側に座るカナメの机の右端については、大きく面取りした方がいいのでは、と思いついた。同じようにカナメと繋げる部分については、シームレスにつながるように面取りはしない。自分たちの手に当たる側は面取りをして、壁につける面はそのまま。板の状態が良い方を表、そうでない方を裏、と決めた。

そして、まず60番ですべての板のすべての面を削る。途中で、何度か紙やすりを交換する。そして次に120番で同じことをやり直す。

数時間経ってカナメが見に来た。

「終わった?」

と聞いてきた。

「終わってない終わってない。あと240番が残ってるねん。」

カナメは心底驚いたようだった。

「え、もういいよ。こんなにキレイなんだから。もうやめやめ。疲れちゃうよ。」

と言われて気づいた。これって疲れる作業なのか???全然疲れないけど。めっちゃ楽しいで。

カナメは感慨深げに呟く。

「オレさー、そういう単純作業に対する適性が全くないんだよねー。色々とアイデア出したりするのって、まぁできると思うんだけど。それ、何にも面白くないよね。疲れるだけだよね。バンリはそれ、全然大丈夫なんや。良かったー。オレたち、性格違って良かったなー。でも無理しないでね。」

と言い放って、また降りて行った。

それから延々と240番までやり切った時には、かなり暗くなっていた。

それにも気づかなかった私って、本当に視界30センチ.......orz

実は、このサンディングについても、ホームセンターでちょっと空気読まない質問をしてしまっていた。カナメが木のカットを頼んでいる時のことなんだけど。

出来上がり寸法を伝えて切ってもらっていたので、私はカナメと店員さんの両方に聞こえるような位置で疑問を投げかけた。

「サンディングするのに、大丈夫なの?そのサイズで......」

カナメは、私が言わんとしていることが理解できなかった様だが、店員さんはすぐに理解して答えてくれた。

「サンディングしても、ミリ単位も削れないので、大丈夫ですよ。それは考えなくても。」

横で返答を聞いていたカナメが、私に言った。

「アホちゃうん.....。どんだけ削る気やってん。表面ならすだけや。」

相変わらず容赦ない。アホで悪かったな。

とは言え、延々と削っていたから、1ミリくらいは減ったかもしれない。知らんけど。

とにかく、与えられた課題(単純作業)を文句一つ言わずに従順に成し遂げるというのは、私の十八番だ。この性格でバブルの頃にOLしていた時は、かなり重宝がられたっけ。今の時代、クリエイティビティが重視される時代に生まれてたら、詰んでたな、私......orz

神よ、ありがとう。適切な時に、適切な才能を持って生まれる運も実力のうちかも。たぶん違うけど。

翌日。

サンディングで美しく仕上がった板に、塗装をしなければいけない。と同時に、キッチン用の板も同じように処理しなければいけないということで、私はまたまたサンディングに向かう。

カナメは、板にBRIWAXを施す。ワックスを塗り込むのだ。

この作業が、もうびっくりするようなプロセスをとる。

すでにサンディングに慣れていたので、すぐに2枚の板を仕上げることができた。そしてカナメの作業に合流した。

部屋がめっちゃ臭い。靴墨臭がする.......。

もちろん換気はしているんだけど、かなり臭う。しかも、不思議な光景だ。

カナメが板に靴墨塗ってた、もとい、BRIWAX塗ってた。

本当に靴墨塗るみたいなのよ!!

ウェスと呼ばれる布を、靴墨形状のBRIWAXの缶に突っ込み、その固形物を少量とり、板に乗せて伸ばす

だけ。

ペンキ塗るわけでもなく、ワックスを塗るってそういうことだったのかーっ!!

と、めちゃくちゃびっくりした。

私も一緒にウェスで塗る。めっちゃ簡単。靴に靴墨塗る方が面倒だよな。しかもアバウトに塗っていいらしい。

「後で磨くから、まぁワックスが行き渡ればOK。」とカナメ。

磨くのかー。ふーん。それこそ靴墨と一緒だよね。

前日にサンディングした板のすべてに、BRIWAXを塗りたくってやったどー。

そこから30分ほど乾かす。珈琲飲んで休憩しながら待つ。

そして次に磨く。

タワシで。

タワシだぜ?

カナメに「タワシ買っといて」と言われて買っておいたタワシを使う。黙っていたけど、お店で亀の子タワシに手を伸ばしかけたのだが、そのあまりの価格の高さに驚いて、やっすいタワシを買った。良かったー。こんなの、高い亀の子タワシ使う必要ないよー。我ながらいい勘してる。

そんな刺激的なものでこすっていいのかな?と思いながらも二人でタワシをゴシゴシゴシゴシ......

おおおおおおおおおお。

なんということでしょう。ワックスが伸びて美しくなる!

これ、考えついた人、天才すぎる!

ワックス塗って、タワシでこするということを考えつく人間が、この世に存在し得たという事実に感謝したい。

その次に、乾いたウェスで磨き上げる。

うっとり........。

いま、DIY動画の世界では、BRIWAXって流行ってるのよねーっ!

カナメが選んだのは、「ジャコビアン」という色。ビンテージウッドっぽく仕上がって、めちゃカッコいい。それにしても、BRIWAX仕上げは、作業の難易度に比べて、結果の満足度は高いので、超絶おすすめ。

ところで、BRIWAXを塗る時に使ったウェスであるが、そのまま放置しておくと発火恐れがあるらしいので、すぐに袋に入れて水を含ませてから、捨てるようにした。火事だけは出したくないからね。

そして、次は、WATOCOオイル塗装であーる。

キッチン用の板に塗るのだが、カナメはウォルナットカラーをセレクト。

塗装プロセスは難しくはないが、面倒ではあーる。

まず1回目の塗装をして、30分ほど乾かす。ウェスで軽く拭き取ってから、1時間ほど乾かす。2回目を塗る。そして紙やすりでサンディングする。

紙やすりは「耐水」のものにする必要がある。

濡れた面にヤスリをかけるというのは、少し不思議なプロセスなんだよね。
最後に、もう一度ウェスでキレイに拭き取って、乾かして終わり、である。

そして、最終的な設備の設営日まで、このまま乾燥させておく。

これが現場にどんな風になるのか、楽しみである。

(実は、このWATOCO仕上げの板は、私がコーヒーカウンターを作成する時の素材にするつもりだったのだが、カナメのデザイン変更により、ぶった切られてキッチンの作業台の高さ調節の素材に使われてしまった。結局、キッチンの台は、別途購入して、水性ウレタン着色ニス(新ウォルナット)を塗ることになったのだが。)

そして、ここから、カナメの潜在能力が徐々に開花されていったのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?