大槻玄沢に学ぶ 病家三不治
杉田玄白の弟子に大槻玄沢がいる。
江戸時代の蘭学医で、ビールを鎖国中の日本に紹介したことでも知られる。
玄沢は、杉田玄白の『養生七不可』に附録をつけた。
これが『病家三不治』である。
『病家三不治』には、病気に罹ったときに治らないであろう3パターンを記載している。
一、賤者病を治すにつくさず
貧しい人は経済的理由から医者の出す薬を思い通りに飲めない。また、知識が乏しいことで、まじないや占い、加持祈祷に頼ることになる。
こうやって軽かった病も重いものになり命を落としてしまう。
一、豪家病を治すに順わず
お金持ちには医者に耳をかさず、正しい治療に従わない人がいるので病気が治らない。また、高い薬は何にでも効くと思い、病のない状態から必要もないのに服薬することで、かえって体を壊してしまう。
また、医学書を読むことで知識をかじってしまい、医者の言うことを信じない。色々な治療ができることが災いし、一人の医者に身を委ねず結局病が治らない。
一、尊貴病を治すに決せず
貴人は生まれついての貴人だが、生死は天が定めるところなので、尊貴によらない。
貴人は生まれながらに乳母の乳で育てられ、昼夜問わず至れり尽くせりの世話を受ける。不自由なく育てられ、成長してからも多くの召使に囲まれ、労働することもなく心労もない。
常人のように運動もしないことは病気につながる。
この貴人が病気になると、多くの医者を集め、治療方針が決まらず、手をこまねいているうちに重症となり命を落とすことになる。
以上が『病家三不治』である。
仙台藩の藩医として、色々な患者を診た玄沢の経験から得た理論だろう。
現代ではインターネット等の情報過多により、間違ったり偏った知識を持っている人も多い。
勝手に薬やめちゃう人とか結構いるんですよ。
それで良くなってないって種類が増えたりして。
今は貧富や尊貴よりも情報が邪魔しているかも。
医師の言うことは聞いておく、疑わしければ尋ねる。
信頼できるかかりつけ医を見つけることも大事だ。
玄白も玄沢も、根本の考えとして
病危ふして後、薬して功験を得るは、到れるの術にあらず。たゞ初より病しめざるやうに教るこそ誠の良医なるべけれ
というものがある。
病気になってから薬が必要となるより、病気にならないようにするのが良医である。
これは昔ながらの未病の考えや、最近のウェルネスに近いものだろう。
治療より予防だ。