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「異なる価値観を持つことを前提に、うまくやっていく」という社会構成主義の教え

いま自分は教育現場の支援に関わる身として、サポートする相手である先生方と自分の関わりは、どうあるべきかをいつも考えています。

その根底にある価値観はなんだろうか? 自分の普段の仕事のあり方を少し立ち止まって考えてみました。

改めて考えてみると、相手とは異なる価値観を持つことを前提に、うまくやっていく道を模索することではないかと思いました。この背景にある読書体験を今回は書いてみたいと思います。

「あなたへの社会構成主義」という読書体験

5年ほど前に、社会構成主義という、人間関係が現実を作るという考え方の勉強会に参加したことがきっかけでした。勉強会では、ケネス・J・ガーゲンの「あなたへの社会構成主義」という本を読みました。

かなり分厚い本ですが、様々な哲学者の議論を踏まえて、人同士の対話がなぜ必要なのかというガーゲンの主張が平易な言葉で語られています。ガーゲンは、対話を重視する人というだけあって、本の中では素敵な文章がいくつも登場します。

大切なのは、多様な価値があることを問題にするのではなく、価値の対立が広がっている世界においてうまくやっていくにはどうすればよいかを考えることです。(P343)

人によって世界の認識は異なります。育ってきた背景や教育環境、人生経験をもとに現実を見ようとしますが、誰一人同じ背景を持つ人はいません。ただ、過去の経験やイメージをもとに、人は新たな事象を解釈します。

言葉を使って、ほかの人とのやり取りは成立しているように見えますが、それぞれの人同士で頭に浮かんでいることは違うかもしれません。

つまり、人によって見ている現実は異なるのです。本質的には、人はそれぞれに異なるかたちで世界を見て、異なる価値観を持っていることになるでしょう。

ガーゲンの主張で面白いのは、その先です。異なる価値観を人々が持つという前提にたったとき、その現実にどう立ち向かうべきでしょうか。

「うまくやっていくにはどうすればよいかを考えること」であると述べます。はじめてこの言葉に触れた時、衝撃を受けました。

相手と異なる価値観を持っていというと、相手とは決してわかりあえないという、とても悲観的な文章のように思えますが、単に悲観的な言葉ではありません。

異なる価値観をもった人がいるのは当然で、それが真実なのだ。だったら、それを前提に、異なる価値観を持つ人と、うまくやってくことを考えればよいじゃないか。こうした、スーパーポジティブ思考が目からウロコで、それ以降、自分自身とても生きやすくなり、ものごとの見方ががらっとかわったように思いました。

支援対象である先生と私の教育とは○○である「べき」だというお互いの価値観の違いを超えて、一緒に良いことをするためにはどうすればよいだろうかという思考スタイルに変わったのです。この考え方を知って、随分肩の荷が降りて、仕事が楽しくなったような気がしました。

今後も、ガーゲンのこの言葉を大事にしていきたいと思います。

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