【Meet Refugee Talents!! ~世界の激レアさんをご紹介~】 Vol. 2 クリスさん
美しき故郷の発展を願う。
「おもいやり」の心をITの力に変えるアフリカ人青年。
クリス|1994年生まれ(26歳)|中部アフリカ出身|学士号取得済(応用情報工学専攻)|開発環境で多いのはWindows、Microsoft SQL Server。得意な言語は、C#、最近ではPython 等。
6人兄弟姉妹の次男坊であるクリスさんは、中部アフリカの国境にまたがる美しく雄大な「キブ湖」のほとりの町に生まれ育ちました。
地方で生まれ育った彼は、兄の影響により、ITが人々にもたらす利便性に衝撃を受け、ITの力で人々の生活を豊かにするという志をもちます。
しかし、命の危機に直面し、アフリカを去らなければならなかった彼。
彼は、どのような人物なのでしょうか?
<生い立ち>湖のほとり、教師の両親に育てられて
坂下:どんな町や家庭で育ちましたか?
クリス:コンゴ民主共和国東部の人口は約25万人ほどの街で生まれ育ちました。綺麗な湖に隣接していて、ゆったりとした時間が流れるところです。
クリス:家族は、父と母、そして6人の兄弟姉妹。兄弟は僕と兄の2人。日本の人にとっては大家族に感じるかもしれませんが、実はアフリカだと小さな家族の部類に入ります。
僕の家庭には、いろんな考えやアイデアを、共有したり、話し合ったりする習慣がありました。そのような家族の文化があるから、僕は広い世界に興味をもち、ITにも興味を持つことができたのだと思います。また何よりも感謝しているのは、両親が僕たちの教育に関わることに、金銭を惜しむことなく使ってくれたことです。彼らの学生時代は、ベルギーによる植民地支配から国が解放されておらず、社会的にも経済的にも、教育を受けるための環境が整っていませんでした。勉学よりも働くことを求められた時代です。そのような時代に生まれた両親なので、「自分たちにはできなかったからこそ、子供には大いに学んでほしい」と、よく話していました。
坂下:クリスさんの大らかな雰囲気や柔和な表情は、そういった家族の背景からきているのですね。そういえば、クリスさんは5分前には打ち合せに入っていて、時間に対してしっかりしていますね。アフリカ出身の人たちは来日当初、日本社会の時間の厳しさに驚く人が多いのですが、なぜクリスさんはそのように時間に厳しいのでしょうか?
クリス:僕の両親は二人とも教師として勤めていました。職業柄なのか、二人とも時間に対して厳しかったのです。あと両親とも学生時代は、ベルギーが運営する学校に通っていました。コンゴの学校よりは…もちろん時間に厳しいです(笑)。そんな両親のもとに育った僕は、おのずと時間に対してもきっちりするようになりました。時間を守ることは、自分自身だけではなく、時間を共有している誰かにとっても大切なことですよね。
<学生時代>「人に役立つイノベーション」を追い求めて
坂下:クリスさんと話していると、言葉の端々に人への思いやりが感じられますね。
クリス:僕の楽しみは、人に喜んでもらったり、生活を豊かにしてあげたりすることです。だから仕事でも、人の生活に役立つような、イノベーションを生み出したいです。イノベーションはいつだって人から始まる、そう思っています。
坂下:イノベーションに繋がりますが、クリスさんは学生時代、ITを専攻としていましたね。どのようにして、ITに興味をもったのですか?
クリス:僕が高校生のとき、兄はウガンダでコンピューターサイエンスを勉強していました。彼が僕にはじめて「IT」というものの本当の価値を教えてくれました。そしてプログラミングも教えてくれたのです。コードをかくだけで、あんなにも沢山のことができるようになるなんて、魔法みたいでとても驚きました。それで僕も高校を卒業した後、兄のあとを追うように、ウガンダの大学に通うことにしました。
坂下:お兄さんの影響が本当に強いのですね。大学ではどのような生活を送っていましたか?
クリス:入学にあたって、コンゴからウガンダの首都カンパラまで、バスで7時間かけて行きました。あんなにも大きな都市を訪れたのは生まれて初めてだったので、心底驚きました。大学の授業は、すべて英語でした。コンゴ民主共和国の教育はすべてフランス語だったので、英語はまったくと言っていいほど理解できず、当初授業についていけませんでした。1ヶ月半ほど英語学校に通ったり、CNNや外国のニュース番組を観たりして、必死に勉強しました。
大学のクラスには、フィリピンや南アフリカなど、いろいろな国の学生がいました。今まではコンゴ人に囲まれて生きてきたので、この環境はとても刺激的でした。また、それまでは自分の国で起こっていることを、あまり知らなかったのですが、知るきっかけにもなりました。多様な文化やルーツを持つ仲間と出会えたことは、僕の目を開かせてくれたのです。
▲ウガンダの首都、カンパラ
坂下:大学で専攻していた情報通信の分野。プログラミングも学んだとのことですが、何かサービスやアプリなどは開発しましたか?
クリス:交番に自分の位置情報を送信するアプリをつくったことがあります。「緊急犯罪通報システム」と呼んだらいいのでしょうか。僕らが住んでいたエリアは、日本ほど安全ではありません。ですので、このような防犯に役立つようなサービスは、きっと人の役に立つと考えました。このアプリでは、利用者が身の危険を感じた時、アプリを開いてボタンを押します。アプリは利用者の位置情報をもとに、最寄りの警察署を特定して、利用者の位置情報とともに警察署に通知を送る仕組みになっています。その情報をもとに、警察署は利用者を追跡することができます。
<来日後>新しい日常、自分、夢
坂下:人のためにサービスを思いついて、実行する力が素晴らしいですね。一方で日本での暮らしは、どうですか?
クリス:日本にきて驚いたのは、電車や駅がすさまじく混んでいることです。そして、それにも関わらずとても清潔で綺麗なこと。人々がお互いを尊重し合う習慣は、美徳だと思います。一方で、外国人であっても、守らなければならない暗黙のルールも沢山あるので、それに慣れるまではちょっと大変ですね。
坂下:ところで、クリスさんは沢山つらい経験をして来日しました。それにもかかわらず、どうして自分の経験を、ためらわず私たちに語ってくれるのですか?
クリス:僕は母国で命にかかわる危機に直面して、日本にきました。逃げる先を、自由に選べるわけではありません。最初は日本に住みたくて来日したわけではありませんが、日本は私が新しい日常を営む場所となりました。僕は友達をつくり、たくさん人と関わりたい、そして目の前の現実に適応しないといけない、と考えています。友達をつくるということは、自分のことをオープンにするということ。 私のことを知らない人には、自ら胸襟を開くことが大切だと思います。そして、僕が人生で体験したことは、きっと僕の日本の友達にも、勉強になることがあるのではないでしょうか。だからできるだけ、オープンでいたいのです。
▲ 週末に開催されたWELgeeメンバー同士の交流会で談笑する坂下とクリス
坂下:今も大変な境遇にもかかわらず、たくさんの物語や想いを聞かせてくれて、ありがとうございます。最後に、いまはどのような夢をもって日々を過ごしているのか教えてください!
クリス:将来的には、AIを学んで、修士号をとりたいと思っています。AIの可能性を通じて、人々のためにさまざまな情報を集めたり、整理をしたりしたいのです。そして、より豊かで便利な世の中をつくっていきたいと思っています。いつかは、僕の故郷のためにも。
<最後に>難民の人と一緒に働くことに、興味ある方へ
WELgeeでは、難民人材に特化した伴走型人材紹介サービス『JobCopass』を通じて、クリスさんのように「難民」と呼ばれる人たちが、これまでに培ったスキルと経験、あふれる情熱や志、逆境の中でも道を切り拓き、挑戦を諦めないタフネスを活かして、日本の企業に貢献できる仕掛けをつくっています。
「クリスさんや他の難民の人たちと交流してみたい」
「どんなスキルや経験をもつ人たちがいるのか詳しく知りたい」
「自社や知り合いの会社のニーズと照らし合わせてみたい」
・・などなどご関心がある方は、是非お気軽にお問い合わせください♪
問い合わせ先: nana@welgee.jp|WELgee 就労伴走事業部・山本菜奈
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