言葉のいとおしさ(ゲイの恋①)
今日はちょっとキラキラした話。
めんどくさい彼氏ではない元カレの話です。
こんなことがあった。
見つけてしまった
友達と、あるクラブイベントに行ったときのこと。
一人フロアで踊ってたとき、ふと隣で踊っている彼をみつけて。
「うわ、イケメン!」
一目惚れなんてありえない派だったのに、すっかり一目惚れ。
そこから彼の近くを離れられなくなってしまったのだが、かと言って話かける勇気もない。
ほかに術もないので、無駄に彼の正面に踊り出てみたり、無駄にぶつかってみたり、無駄に足を踏んづけたり。
とまぁ、いろいろと偶然を装ってはみたものの、すべて失敗。
しまいには背を向けられ、遠く離れた場所へさようなら。
なんて表現していいのかわからないんだけど、イケメン(自分がイケる人)って、なんかコワくない?
んー、「自分なんて気に入ってもらえないだろう」 って心理なのかな。
結局、その日は何もアクションを起こせず、きっかけすら作れず「クラブでイケメンを見かけた」という、それだけのことに終わってしまった。
「また今度見かけた時に近寄ってやろう」「次こそ、なにか行動に出てみよう」と、漠然としたことを考えながら帰りの電車に揺られていた。
「いや、ちょっと待てよ。今度見かけることなんてあるのか?次なんてあるのか?」
声を掛けなかった悔しさと変な焦り。
そこからあの手この手を使って、彼とコンタクトを取ることができた。
まぁ、ひらたく言うとゲイの尋ね人掲示板的なものを使ったわけなんだけど、本人からメールが来た。
やりとりの始まり
「 あの日は楽しめましたか? すいませんが、そちらがどの人かは分かりません。〇〇(クラブイベント)にはたまに行ってます。次はいつ行くかわかりませんが。では。」
うわ、素気ない 笑。
でも、せっかくきっかけができたんだし、途切れさせてたまるかとメールを送りまくった。
「ちょっと引いてるかな」とも思っていたんだけど、ちゃんと返事が来るんだよね 笑
天気の話、自分の歳、自分の住んでいる街...そんな他愛もない話題から段々と話が広がっていき、気が付いたら毎日メールをするようになっていた。
毎日メールをしているものの、こちらから「会おう」とは言えず、やりとりのゴールは見えなかった。
(意気地なし!)
ある朝のこと。
彼からのメールを開くと、「じんさん、面白そうな人ですね。今度会いませんか?」
きたよ、きた!
初リアル
そして迎えた「はじめまして」の当日。待ち合わせ場所は渋谷のTSUTAYA前。胸をバクバクさせながら地下鉄の出口を出て待ち合わせ場所へ。
彼の方が先に来ていたのだが、「やばい、やっぱかっこいい」と少しビビる俺。
近づいていくと俺だとわかったらしく、軽く会釈をされる。
自分が緊張している分だけ相手が落ち着いて見えてしまう。
「 はじめまして。どうします?」
「はじめまして」から「どうします」までひと息で言われ狼狽する。
まぁ、最初は無難にお茶だよね...
沈黙は敵
二人で同じ飲み物を頼み、それまでのやりとりの話から始まり、とりあえず自分のことでも話しておこうとダラダラしゃべり始めた。
人見知りの人にはわかると思うんだけど、初対面の人と話すときのパターンは二つ。
・何を話していいのか分からず黙ってしまう。
・沈黙がイヤで、とにかく話しまくる。
その日の俺は完全に後者。
彼が聞き上手だったのもあるけれど、俺はひとりで自分の話ばかり。
3時間。
アイスティー1杯。
ありえないだろ 笑
しかも割り勘...
いとおしい言葉
「もうそろそろ電車の時間ですね」と彼に言われるまで話し続けていた俺。
店を出て目的もなくフラフラ歩く二人。歩いていてもすることのない二人。
並んで歩いているのに会話もなし。
(一人でしゃべっちゃったしなぁ)
(しかも自分のことばっかり)
(アイスティーおかわりすればよかった)
(無理やりでも俺が奢るべきだったよな)
---次はないな---
そんなことを考えながらたどり着いたハチ公前。
俺はこっち、彼はあっち。
「じゃ、俺あっちなんで」
初めて会ってさ、楽しい会話ができたなら「楽しかったです」 とか 「じゃぁ、また」 くらい言うじゃない?
それを「俺、あっちなんで」だけ。
次はないなとは思いつつ、そのまま別れるのも惜しまれて最後の悪あがき。
「じゃ、俺もあっち側の入口から乗るよ」
あっち側に渡るために赤信号を待つ二人。
彼は通りの向こうを見ていて特に何も話してはくれない。
俺の方からも特に何か話し掛けるわけでもなく...
長い長い赤信号。
長い長い沈黙。
苦しい 笑
やっと信号が変わり、雑踏と一緒になって信号を渡っていく。
階段を昇って改札口まで見送るのは彼にとってもウザいだろうなと思い、階段の下で見送ることにした。
「今日はありがとうね」
それ以上のことが言えなかった。(意気地なし!)
彼も「いえ、こっちも時間作ってくれてありがとうございました。じゃ...」とだけ言って階段を昇っていった。
階段を昇る彼をボケっと見送る俺。
すると、階段を昇り終えようとした彼が俺の方に振り返った。
あぁ、最後にバイバイくらいはしてくれるんだね...なんてイジけていると、彼がダッシュで階段を下りてきた。
え?
俺の前まで戻ってきた彼は、息を切らせながら言った。
「 次は、いつ会えますか?」
その言葉にドキッとして口から心臓が飛び出るかと思った。
こうして、俺の恋が始まった。
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