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肌のいとおしさ(ゲイの恋②)

前回の①のつづき。

見えないゴール

実際に会う前までは毎日メールの往復があった。
でも、会ってしまうと何を書いていいのかわからなくなってしまった。
何の目的で会うのか、ゴールはどこなのか。
それでも、少しでも気にかけて欲しくてメールを送り続けた。

一度だけしか会っていなくお互いをなにも知らない。
けど、彼からの返信に明らかにトキめいていた。
乙女っぷりが自分でも気持ち悪い。

ある日、「ごはん行こうよ」とメールを送った。
社交辞令の「ごはん行こうよ」ではなく、本気の「ごはん行こうよ」を送った。
「いいですね!いつにします?」と返事があり、なんとか「次」に繋がった。

そこから平日夜のごはんやらお茶やらを重ね、休みの日も時間を作ってくれて、ほとんどの週末を一緒に過ごした。

波長が合うし居心地もいい。
俺の感情は「友達になりたい」ではなく、明らかに恋愛感情だった。
自分の中でゴールが明確になっていた。

「付き合いたい」

でも、向こうはどう思ってるのか。
俺に気のある素振りは見せないし、お互いの元カレの話をして盛り上がったり、当然カラダの関係もない。
このまま仲の良い友達になんてなれるだろうか。
たとえば、彼に「好きな人ができた」という相談を受けたら、俺は話を聞いて相談に乗れたりするのだろうか。それはキツいな...

はじめて触れた手

特に進展もないまま何度目かのドライブデート。
進展はなかったものの、その頃には車の中での沈黙も心地よくなっていて、会話がなくとも居心地がよかった。

その帰り途。
高速道路を走っていると、彼の手がすっと伸びてきて俺の太腿の上に置かれた。
助手席で少し眠たそうな顔をして外を眺める彼。

え...
この手を、この手を握りしめたら...
そのままにしておいてくれるだろうか、拒否されるだろうか。
そんなことを考えたのは一瞬で、俺は彼の手の上に自分の手を重ねた。
手を握ってきたのは彼の方だった。

関係がまたちょっと前進。
彼の家の前までお互いに口を開かなかった。それでよかった。

帰宅すると、彼からメールが来ていた。
「送ってもらって自分の部屋に帰ってきた時が一番さびしい。」

これって俺への好意?だよな?
こんなメールもらったら引けない。前に行くしかない。
思えば、恋愛ってこの頃が一番楽しいのかもね。

決戦の夜

そこからまた数週間が経ち、初めて一緒にクラブに行ったときのこと。
そこで俺の仲の良い友達に遭遇したので、彼を紹介した。
「友達」と紹介するのは悔しく、かと言って「彼氏」と紹介するのは事実ではなく。
ただ、名前でだけ紹介した。

フロアで踊っていると、その友達に言われた。
「あの人のこと好きなんでしょ 笑」
え!なんで!?
「見りゃわかるわ!」

そうか、わかりやすかったか俺...

楽しいひとときはあっという間に終わり、「じゃ、またね」という悲しい時間がやってくる。
でもその日、その状況にはならなかった。

「うち泊まっていかない?」
突然の申し出に正直とまどったが、「いいの?」 とだけ答えておじゃますることにした。

シャワーを浴びながら考えた。
いつもこうやって彼にばかり行動を起こさせて、俺は何もしてこなかった。

よし、今夜告白しよう。
好きだと言おう。

シャワーを浴び終わってからは、「なんて言おう」とばかり考えていてプチパニック。
そこへパンツ一丁でバスルームから出てきた彼。
彼の裸を見るのはそれが初めてで、マッチョなのはわかっていたけど想像以上でさらにパニック。

やば、頭の中真っ白。

ベッドの上であぐらをかいている俺の横にパンツ一丁の彼がきて、
「俺、じんさん好き、彼氏になって?」

予兆もなく言われた。ひと息で言われた。さらりと言われた。
(年上なのに立場ないな、俺...)

「もちろん!」

そして、

<中略>
<中略>
<中略>

「はじめまして」から3ヶ月。
全身の肌で感じる幸福感。
やっと目指していたゴールに立った。


テキストにしてみるとドラマチックだけど、こういう平凡な恋をゲイもしているのです。

数年後、すれ違いが続き終わるまでは③につづく。


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