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パッケージデザインで、売上は変わる。「サンパック」vol.1


9 月に入りました。台風が心配ですが、少しずつ暑さが和らいでいくといいですね。


さて、GRAPHが手掛けたお仕事の中から今回ご紹介するのは・・・

サンパックの商品パッケージです。

既存商品のリニューアルや新商品販売のタイミングでとても重要な役割を果たす、パッケージデザイン。GRAPHが、サンパックのどんな商品を、どのようにとらえ、価値を作り出していったのか、お話を聞いてきました。

話してくれたのは、村部悠蔵さん(兵庫本社)、高島功さん(東京オフィス)、大原史剛さん(京都オフィス)。プロジェクトマネージャー職にあるみなさんがいろいろ教えてくれました。


色とパッケージを変えたら3万個売れた!? フットグルーマーグラン

GRAPHとサンパックとのお仕事の第一弾は、2018年発売の「フットグルーマー グラン」。研磨剤を塗布したブラシで足裏をマッサージすることで、角質や臭いをケアできるという商品です。

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サンパックさんの公式ツイッターによると、足裏をキレイにしておくと蚊にさされにくくなるらしいです・・・!!

残暑厳しいこの季節にもおすすめの商品です。

サンパックのフットグルーマーは、足用のブラシマッサージャーの元祖

しかし市場には類似品も多く出回っており、中にはフットグルーマーグランより性能が劣っているのに、6分の1ほどの価格で売られていることも。

フットグルーマーグランはしっかりとした科学的なエビデンスに基づいて開発されており、そこをもっと消費者に伝わるようにしたいという思いをもっていました。そこで、商品とパッケージを見直すことになったのです。

2017年秋のギフトショーでデビューしたこちらの商品、すぐにメディアで取り上げられたこともあり、あっという間に3万個を受注。

デザインが果たした役割も、決して小さくはありませんでした。


商品本体の色を変更し、差別化

リニューアルにあたり、まず商品本体のカラーリングが見直されました。

結果、「特許技術で研磨剤を塗布した、先端部分の色を変更。より長くして、強調する」ことに。

こちらがリニューアル前の商品の色。ピンクです。(ほかにグリーンも展開)

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そしてこちらがAfter。蛍光のオレンジです。(他に蛍光のイエローもあり)

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▲1456本のブラシで足裏をマッサージする「フットグルーマーグラン」。先端の研磨剤は、職人さんが1本1本手作業で塗布しています。


村部:「蛍光色は、科学的なエビデンスに基づく開発をイメージできるカラーであること、テクノロジーを駆使した未来的なイメージを想起させることなどからご提案した色です。

サンパックさんは自社工場で商品を製造されているので、色の変更や調整などは臨機応変に対応していただくことが可能です。

最終的には先端は蛍光色、ブラシ本体は乳白色になりましたが、ブラシ本体の色も塗料を混ぜて変更することが可能なため、さまざまな組み合わせを試作しました。

たとえば先端が蛍光オレンジ、ブラシ本体もオレンジなど。

試作品だけで、段ボール10箱分くらいはあったでしょうか」

実際に工場を訪れて、色味の調整を行ったこともあったそう。


商品を”魅せる”パッケージに

商品開発と並行して、新しくパッケージの提案も行われました。

以前の商品からの大きな変更点は、ボール紙製の箱から、中身が見える透明の箱にしたこと。

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▲透明プラスチックボックスのパッケージ。


新しく蛍光色に生まれ変わった商品本体の素晴らしさが直感的にわかるように、パッケージは商品そのものを“魅せる”方向で設計されました。

このパッケージについて、ちょっと詳しく見ていきます。

プラスチックのケースの側面には、幅広の緑の箔押しが、ぐるりと施されています。この箔押しは、高い技術をもつ加工会社さんのお仕事。


なぜ、緑を選んだのでしょう?

村部:「パッケージを考えるときには、売り場での見え方が重要になってきます。

類似品のビューティー系、ケア用品系のブランドを調査したところ、「白・黒・銀」を基調にした高級感のあるイメージや、大人の女性をイメージさせる「濃いピンク」などが多くを占めていました。

グリーンは健康的なイメージでもあり、爽やかさもあるのに、意外に市場にはなかったんです。

店頭で映えるのではないかと、採用されました」


一般的な緑よりも、黄色味が強く、明度も高いライムグリーンで、爽やかな印象です。緑の箔はその後の商品パッケージなどでも踏襲され、グリーンは印刷物にも使われ、現在では徐々にブランドカラーに育ってきています。

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▲紙袋もライムグリーン。「紐は既製品から選びました。全体のバランスが取れるように、紐に合わせて袋本体のグリーンの色味を調整しています(高島)」


また、パッケージの表面は商品がよく見えるように透明になっていますが、その分、機能面の説明は、裏面にすっきりとまとめました。

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▲「フットグルーマーグラン」のパッケージの背面。科学的エビデンスに基づく機能をわかりやすく説明しています。使用方法も、写真入りでわかりやすく。


機能説明は、商品本体を収める台紙にもなっています。

この台紙を引き出してみましょう。

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▲台紙を引き出したところ。台紙の側面はライムグリーンが印刷されています。外パッケージの緑の箔と同じ印象に見え、違和感がないように、色味を調整されているそうです。


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▲この台紙、光沢の強い銀のメタル紙を使用しています。ピカピカ面が表で、商品をセットする面です。

このピカピカのメタリック感が、より未来的なイメージを高めています。


機能説明は、このピカピカメタル紙の裏面に印刷されているわけですが・・・

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高島:「紙の裏面なので、平滑度は高くなく、触るとザラザラとしています。ザラザラしているとインクがのりにくく、色も沈みやすかったりするので、印刷前にインキを調整することが必要です。

そのあたりは、GRAPHが得意なところといえると思います」


インキや機械を調整することで、商品の蛍光色や、文字情報も美しく印刷できています。


ブランドに統一感を与える、新しい冠を


フットグルーマーグランの販売後、次の商品展開に先駆けて考案されたのがブランドマークでした。


村部:「フットグルーマーグランの発売開始時は、『サンパック(Sunpac)』というブランド名はあっても、シンボルマークはありませんでした。

しかし、今後、フットグルーマーグランだけではなく同様にさまざまな製品のパッケージリニューアルを行い、ブランドとして展開していくことを想定していたので、統一感を持たせ、“面”で見せていく必要がありました。

そのために、ひと目でサンパックとわかるマークがあれば、ブランド認知がより効果的になると考えたのです」

こうして考案したマークがこちら。

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サンパックの「サン」から、太陽や数字の「3」をイメージして作られました。

しかし太陽そのものをモチーフとするのではなく、太陽の化身であり神の使いとされる八咫烏(やたがらす)を思わせるデザインに。キャラクター性もあり、親しみやすい愛嬌もあります。


胴体の部分は黄金比で構成された長方形や、大きさの異なる「3」つの円などの組み合わせにより生まれた形です。

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▲赤い「1:1+√5/2の四角形」が、黄金比でできた四角形。


黄金比は古来、建築や芸術の分野で使われてきました。

人間が、最も安定していて、美しいと感じる比率です。

植物の葉の並び方や巻き貝、ヒマワリの種の並びなど、自然界にも見られるといわれています。

そこに数字の3と長方形をプラスして、鳥のように見える造形に整えました。

3はサンパックのサンであり、太陽のsunであり、八咫烏の3本脚でもあるのですね。


そして、シンプルな造形なので、使い勝手のよいマークである、ということも重要ポイント。

商品やパッケージに刻印されることを想定しているので、どんな縮尺でも、どんな形状でも認識しやすく、刻印・印刷がしやすい形であるといえます。

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▲シンプルな造形なので、拡大しても縮小してもマークのイメージが変わらず、認識しやすい。


こうしてブランドの新しい冠としてマークがつくられたのが、2018年。

以後、GRAPHが関わる商品パッケージや、カタログ等、ウェブサイトなどにはこのマークが登場しています。

現在もサンパックと定例ミーティングの機会をもち、商品開発やクリエイティブのあり方を共有しているそうです。


次回は、サンパックのまた別の商品の開発とパッケージについての裏話をお届けします! どうぞお楽しみに!



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