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立川に行ったら、透けるサインにご注目。

東京都立川市、ファーレ立川街区。

立川駅北口から歩いて3分ほどの場所に、昨年、カラフルなガラス製のサインが設置されました。

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このサインは、立川駅周辺に点在するパブリックアートのプロジェクト「ファーレ立川」に関連するもの。

GRAPHは2016年に「ファーレ立川」のシンボルマークを考案して以来、継続的にこのプロジェクトに関わっています。

「公共の場所に設置されるサイン」という、立体作品。

もしかしたらGRAPHのイメージにはあまりないかもしれませんね。

そんなわけで、今回はこのサインに注目して、コンセプトから、設置に至るまでの話をご紹介します!

<ファーレ立川とは>

「ファーレ立川」は、1994年10月13日に、立川駅北口の米軍基地跡地に誕生したホテル、デパート、映画館、図書館、オフィスビルなど、11棟の建物からなる5.9haの街です。36か国92人の作家による109点のアートは、車止めやベンチ、街灯、換気口など街の機能を併せ持ち、20世紀末の現代世界を映し出しています。(公式HPより)


「黄金比の四角」を重ねてつくったマーク

サインについてご紹介するには、2016年に一成さんが考案したマークのコンセプトに言及しなければなりません。

「ファーレ立川」は1994年にスタートしたプロジェクト。

20年以上の時を経て、2016年にリブランディングされることになり、新しくシンボルマークがつくられました。

それが、こちらのマークです。

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複数の四角形が組み合わさり、4色で色分けされているように見えます。

実はこれ、次のような考えでつくられているんです。

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▲左の3つの四角を重ねていくと・・・右のマークが生まれます。

印刷に関わったことのある人ならお馴染みの「CMYK」。シアン・マゼンダ・イエロー・ブラックの4色で、一般的な印刷物は、これら4色の組み合わせでつくられています。

家庭用のプリンタインクで見たことがある、という人も多いのではないでしょうか。

「ファーレ立川」のマークは、この4色のうち、「CMY」が“重なり合って”生まれたものなのです。CMYを重ねると暗くなっていき、3色を等しく重ね合わせると黒色になります(「減法混色」といいます)。

「ファーレ立川」のマークの色は、この考え方でつくられたものなのです。


そして、元になっている3つの四角は、「黄金比」でつくられています。

黄金比は古代ギリシャで定義された、人間が見てもっとも美しさや安定感を感じる比率です。パルテノン神殿やモナリザの顔、ピラミッドなどの歴史的建造物にも使われ、芸術の象徴でもあります。

そして芸術とは、人間固有のもの(他の動物には芸術的活動は見られない)だと言われています。


つまりは黄金比=芸術=人間の象徴として、このマークの土台モチーフとしたのです。


このマークに込められたもう一つの重要なメッセージが、「多様性」。

マークのもととなった3つの黄金比の四角形のひとつひとつが「人間」の象徴であり、まるで父・母・子のように3つが重なり合うことで、さまざまな色が生まれます。

マークでは、CMYの四角の配置を変えることで、6つのバリエーションをつくることができます。

元になっているのは3つの同じ四角形なのに、重ね合わせた結果は実に多様です。

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▲マークのカラーバリエーションは7種類。 すべて、CMYの3つの四角形が元になっています。現在、主に使用されているのはフルカラーの左上のパターンですが、7種類のいずれも公式マークです。


フルカラーバージョンだけでなく、上の画像のうち、上段左端の「アウトラインだけで表現されたパターン」も、実は“色を重ねる”という同じ考え方でつくられています。

こちらはCMYではなく、“光の三原色”と呼ばれるRGBを組み合わせてできた白色、という考え方なのです。(減法混色に対して、色を重ねるごとに明るくなる「加法混色」と呼ばれます)


アート(芸術)と、それを生み出し楽しむ、人間の多様性を表したマークになっているのです。


透過するサインができるまで

さて、マークのコンセプトがわかったところで、もう一度サインを見てみましょう。

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▲もうお分かりですね。そうです、マーク同様、「透過するCMYの四角形」がもとになっている、というわけです。


2019年以前にも、JR立川駅前にはガラス製のサインがありました。

しかし老朽化してきたことや、掲載されている情報が古くなってきたこと、そして2016年に新しいシンボルマークができたことから、リニューアルする運びとなったのです。

2016年から「ファーレ立川」に関わっているプロジェクトマネージャーの若狭さんによると、


若狭:「新しいサインは、「ガラスを使うこと」と「L字型に配置すること」などについては、すでに決まっていました。

そこで、ガラスを使うにあたり、“透過する3色の四角”をそのまま実現することを提案したのです。

L字型の配置も、ちょうど“光が重なり合う”という意味ではプラスに働いてくれるのではないかと思いました」


しかし、アートうんぬん以前に、老若男女が利用する“公共のサイン”ですから、「文字の見やすさ、わかりやすさ」はもっとも重視されます

そこでGRAPHは、最初のプレゼンで、マークの考え方をベースにカラフルにしながらも、文字の見やすさと色の多様性を表現するサインシステムを提案。そちらが通った後、2回目のプレゼンでガラスの色などについての提案を行いました。


若狭:「実はGRAPHは今までにも、いくつか公共のサインを手がけているんです。

あまり表には出ていませんが、神奈川県庁のサインなどを手がけたこともあります。その際いろいろな書体や大きさなどを検証してきた経験があり、「ファーレ立川」でも、知識と経験を活かすことができました」


文字のレギュレーションが決まったら、次は色の検証です。

マークと同様の、C、M、Yの3色を使い、ガラスにカラーシートを貼り付けるという方法で、色付きガラスを制作することになりました。

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▲色のサンプル。この写真はプラスチック板にシートを貼ったものですが、ガラスに貼ったサンプルでも色味を検証しました。


また、現地に設置するガラスは、丈夫なものでなければならないため、かなり厚みがあります

サンプルは薄いガラスにシートを貼ったものだったため、ガラスを何層も重ねて厚みを同じにして、光の通し方、文字を載せたときの見え方など、たくさん検証を積み重ねたそうです。


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▲こちらは色の“濃さ”の検証。上に行くほど濃くなっていますね。文字の視認性がもっとも高いのはどれでしょう?


こうして完成したガラスサインは、陽が当たると、しっかりと光を通してくれているようです。

ほら、こんな風に!!

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▲キレイに光が透けて地面にうつっています。


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▲こちらは、CMYが重なりあって、緑色やオレンジ色が生まれていることがわかります。変わった形の車止めや、ビルの壁にあるネオンサインは、「ファーレ立川」のアート作品です。


立川駅北口周辺に行かれました方には、たくさんの「ファーレ立川アート」作品をご覧になるのはもちろん、このサインにも目を留めていただければと思います。


<お話を聞いた人>

若狭  健(わかさ・たけし)

GRAPH東京オフィス プロジェクトマネージャー。ものづくりに関するプロジェクトと主に担当。元書店員という経歴をもち、本や印刷に関すること、加工全般に精通している。ファッションやアートにも詳しい。

若狭さんへのインタビューはこちらから!

                         




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2019年12月連載開始。Design×Printing=GRAPHを標榜する、グラフ株式会社のことについて、主につづります。おおむね毎週金曜日更新。 執筆者:八木美貴 編集・ライター。 デザインや建築、インテリアなどのジャンルでムックや雑誌、ウェブ等を編集執筆しています。
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