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みっしょん!! 第4話「初めての熱い夜」 

第4話「初めての熱い夜」


第3話の続き

「おお! 勇者ファブリスよ! よくぞ魔王ムレクを倒してくれた! そして……そちらの者は?」
城に戻るとすぐに王の間へと通された若矢たち一行。
そこで彼らは魔王討伐の報告をしたのだった。
王と王妃はその報告に大いに喜んだあと、見慣れない若矢に視線を移した。

「はい、彼が魔王を仕留めた者でございます。魔王に苦戦した我々と違い、彼はその拳のみで魔王を打ち倒しました。まさに彼は人類の救世主、彼こそが真の勇者です!」

「うむ、なるほど……。だが勇者ファブリスとその一行よ。そなたらの活躍あっての魔王討伐であることもまた間違いない。礼を言うぞ」
「はっ! ありがとうございます!」
王の言葉に、勇者たちは深く頭を下げた。

そして王の視線が若矢に移る。
「そして魔王を仕留めた勇敢なる若者よ……。名を聞かせてはくれまいか? 褒美を取らせよう」

「は、はい! あ……俺は、若矢といいます。あの……その……。俺、異世界から召喚されて来たんですけど……」
初めてみる本物の王様の威厳に緊張しながらも、正直に答える若矢。

「なんと!? 異世界と申すか? だが確かにそなたのその出で立ちは我々とは異なっているな」
王は驚いたような声を上げると、興味深そうに若矢を見つめる。

「ところで……。なぜそなたは、そんな変な恰好をしておるのだ?」
王が首を傾げるのも無理はない。
若矢は学生服に革靴という出で立ちだったからである。

この世界に召喚された時、すでに彼の格好はこの状態であったのだ。
自分の世界で学校に通っていたままの姿であり、そのまま転送されてしまったのである。
そんな事情を知らない王たちは、彼の出で立ちに疑問を抱いていたのだった。

「あ、あの……。俺、学生でして……。その、学校帰りだったんです……」
王様は興味津々といった感じに頷き、次の質問をしたかったようだが王妃に諫められる。

「まぁまぁ、そのお話は次の機会でもよろしいのでは? 長きに渡った魔王による圧政も終わったのですから、みな盛大な宴を待ちわびていますよ」
「おお、そうであったな。では皆の者よ。魔王討伐の宴を準備するぞ!」
王は王妃の言葉に頷くと、ごきげんな様子で兵士たちと共に城の中へ戻って行ったのだった。

若矢は、ほっと息を吐いた。そんな彼にラムルが声を掛ける。
「お疲れ様! 若矢くん! ついにやってくれたね!」
そんな彼の態度に苦笑いしながら若矢は言った。

「ありがとうラムル……いやエルさんか」
「いいやラムルでいいよ。これからもよろしくね! 若矢くん!」
「うん、こちらこそよろしくな、ラムル」

勇者たち一行と共に王城を後にすると、勇者のファブリスが若矢に声を掛けた。
「改めて今回はありがとう。今夜は魔王討伐の宴がある。君にもぜひ参加してい欲しい。君はこの国の救世主だ。一緒に祝おう」
「はい、ありがとうございます!」

若矢は夜の宴会までの間、酒場で勇者一行と過ごすことになった。
若矢は勇者たちの旅の体験談を聞いたり、また若矢の元の世界での体験談を話したり、と楽しく時間を過ごしていた。

「そういえば、ちゃんとした自己紹介がまだだったね。俺が勇者の血を引くファブリスだ」
「あたしは魔法使いのエレーナ。よろしくね」
「武闘家のカルロッテよ」
「私は僧侶のリズです。よろしくお願いします
勇者たち一行は、各々に自己紹介をしていく。若矢もそれに倣って自己紹介をしたのだった。

「……ところで若矢。君はこれからどうするんだい? ラムルくんもいるからあまり困らないかもしれないが……もしよかったら俺たちのパーティーに加わってくれないか?もちろんラムルくんも歓迎するよ」
突然の申し出に驚く若矢。

「え!? 俺が……勇者のパーティーに!?」
そんな彼をファブリスは笑顔で見つめていた。そして、その横でラムルも嬉しそうに飛び跳ねているのだった。

「ああ、うちの女性連中も君の強さに興味津々みたいだしな」
ファブリスは3人の仲間たちを見て、愉快そうな笑みを浮かべる。

「若矢くんが私たちのパーティーに入ってくれたら……えへへ……私、嬉しいです」
リズは両手を頬に当てて照れる仕草をしているが、その目は期待に満ち溢れていた。
そしてエレーナは興味なさそうにしながらもチラチラと若矢の方に視線を送っている。
カルロッテは若矢の視線に気づくと、いたずらっぽくウィンクする。

3人の女性たちは、若矢が仲間になることを期待しているようだった。
彼女たちからの視線を受け、若矢は顔を赤くする。

戸惑いながらも、彼はファブリスにこう言った。
「はい! よろしくお願いします!」
若矢の答えを聞いて、ファブリスも嬉しそうに頷くのだった。
「そうか、ありがとう! よし、じゃあ今日は一緒に楽しもう!」
こうして若矢は勇者パーティーに参加することになったのである。

その後、酒場でしばらく過ごした後、彼らは宴の会場へと移動した。
そしてそこで盛大な歓迎を受けたのだった。魔王討伐を祝って国中がお祭り騒ぎであり、人々はみな笑顔で勇者たちを歓迎した。
宴の会場では様々な料理が振る舞われ、人々はお腹いっぱいになるまで飲み食いした。

「そういえば若矢くん、さっきの酒場でもここでも全然飲んでないんじゃない?」
お茶を飲んでいた若矢のグラスを見て、カルロッテがそう聞いた。
「え? ええ、そうですね。俺のいた世界では、20歳になるまでお酒を飲むのは法律で禁止されていますし……」

若矢の言葉を聞いて、エレーナが目を丸くした。
「え!? そうなの?あたしの国だと15歳で成人扱いだから、みんな普通に飲んでるよ!?」
そして、リズも彼女に続く。
「私の国でも16歳で成人ですね」

若矢は驚きを隠せなかった。
「え!? そんな……俺の元いた世界では20歳からしか飲酒できないのに……。ははは……」
彼の乾いた笑い声が宴の中に溶け込んでいった。そして彼は改めて異世界に来たことを実感するのだった。

そんな彼にビールが入ったグラスを手渡すカルロッテ。
「せっかくだから飲んでみない? ここではあなたも立派な大人なんだから……ね?」
彼女の色気のある口調に勧められては、若矢も断ることができない。
「は、はい……」
若矢はグラスを受け取ると、恐る恐る口をつけ、中のビールを喉の奥に流し込む。
「う……うまい! うまいです!!」
若矢は歓喜の声を上げた。

そんな彼を見てファブリスたちは嬉しそうに笑う。
「はは! いい飲みっぷりじゃないか! よし、もっと飲むぞ!」
そして彼らは宴が終わるまでの間、大いに飲み食いして楽しんだのだった。

宴が終わった後、初めての飲酒が最高に楽しかった若矢は酒場でファブリスたちと飲み直すことになった。

「若矢くん、僕はもう眠いから先に宿に戻るけどあんまり飲み過ぎちゃダメだよ?」
眠そうに目をこすりながら、ラムルは若矢にそう言った。
「ああ、わかったよ」
若矢が笑顔で頷くと、ラムルは酒場を出てパタパタと翼をはためかせ、宿へと向かったのだった。

そんなラムルを見送るとファブリスが口を開く。
「さて……と、じゃあ行くとするか!」
若矢たちは楽しくお酒を飲み続けた。
若矢にとっては、この世界での話、全てが新鮮でとても興味深いものばかりだった。

しばらくして、ファブリスが眠たそうにあくびをする。
「俺はもう寝ることにするよ。お前らはゆっくり飲んでてくれ」
「おやすみファブリス」
ファブリスと若矢を含む4人は互いに挨拶すると、ファブリスは宿に戻っていく。

「よぉし! 今日は朝まで飲むわよ!若矢、あんたも行けるわね?」
エレーナがグラスをテーブルの上に置いて、若矢に尋ねる。
「はい、まだまだいけますよ!」
若矢は元気よく答えた。そんな彼を見てエレーナも嬉しそうに笑った。

「ふふっ! それじゃ朝まで飲みまくるわよ!」
カルロッテの掛け声と共に、再び宴が再開される。
若矢は自分が初めて酒を飲んだことを忘れ、浴びるように酒を飲んだ。
それくらい、今日という日が楽しかったのである。

そして、そんな若矢の姿を見て、3人は顔を見合わせて微笑む。
「それにしても、私たちが手も足も出なかった魔王をたった1人で倒してしまうなんて……若矢さんは本当に強いですね!」
リズが若矢を褒め称えた。その眼差しには羨望の眼差しが宿っている。
ふと、エレーナを見ると彼女も同じように若矢を見つめていた。カルロッテも同じだった。

(あれ……なんか……恥ずかしくてムズムズするような……)
若矢はそんな彼女たちの視線を受けて、少し落ち着かない気分になった。
「いや、そんなことは……。俺なんて、まだまだですよ!」

照れる若矢を見て、エレーナはニヤリと笑う。
「えー? そんな謙遜しなくてもいいのにぃ」
酒が入っているせいか頬がほんのり赤く色づいている。そんな彼女の様子に若矢はドキッとするのだった。

そんな様子をカルロッテとリズが見つめる中、エレーナは突然こんなことを言い出した。
「ねーえ? 若矢くん、ちょっとこっちに来てくれない?」
そう言って彼女は自分の隣の席をポンポンと叩いた。若矢は言われるままに彼女の隣に座る。

「どうしたの? エレーナさん」
「うふふ♡なんでもなーい♡」
若矢が隣に来ると、エレーナはさらに嬉しそうに笑い彼の腕にぎゅっとしがみつく。
彼女の柔らかい胸が腕に押し付けられ、若矢は頭が真っ白になった。

「あ、あの……! エレーナさん……? カルロッテさん! リズさん! た、助けてください~! エレーナさんて酔うといつもこうなんですか?
これじゃ俺……どうにかなっちゃいますよ~」
若矢は涙目になりながら助けを求めた。

そんな彼を見て3人は可笑しそうに笑う。
「もう! あんまり若矢くんをいじめちゃダメですよ?」
リズも笑いながら言う。

「若矢くん、ビックリさせてごめんなさいね? でも、エレーナの気持ちは分かるわ。こんなに大胆なエレーナは初めて見たけど、若矢くんにはそうさせる何かがある感じがするわ」
とカルロッテもクスッと笑った。

2人の視線もうっとりと若矢に向けられていた。
(な、なんか……2人まで……!? ど、どうしよう……!)
若矢は焦りを覚えた。
このままでは過ちを犯すと本能が告げていたからだ。

「あ、あの! 俺もう帰ります!」
彼が、慌てて立ち上がろうとするとエレーナに手を掴まれ、カルロッテに肩を押さえられ、リズに腰を押さえられる。

「え? あの……みなさん?」
若矢が困惑の表情を浮かべて3人を見る。

「うふふ♡逃がさないわよ?♡」
と言ってエレーナは若矢を再び自分の隣に座らせる。
そして彼の腕に抱きつき、上目遣いで彼を見つめた。その目は潤んでおり、頰は赤く色づいていた。

(な……なんだこの色気……!)
若矢はその妖艶さに思わずドキッとした。

すると今度はリズが反対側の腕に抱きつき、若矢の顔を覗き込みながら言う。
「若矢さん、もっとゆっくり飲みましょうよ」

さらにカルロッテが真正面に座って若矢の頬を優しく撫で、上目遣いで見つめてきた。
そして熱い吐息とともに切なそうな声で彼にささやく。
「若矢くん……顔が真っ赤よ?」

3人の美女が同時に彼に迫る光景はまさにハーレムそのものであった。
そんな状況に若矢はすっかり興奮してしまっていた。
心臓の音がうるさいくらい高鳴っているのが分かる。

酒と彼女たちの甘い香りで頭がボーッとしてきた。それと同時にイケナイ感情が芽生えてくる。
(ダメだ……! このままじゃ……!)
若矢は必死に理性を保とうとした。

だが、そんな彼の葛藤など知る由もない3人はそれぞれ妖艶な笑みを浮かべながらお酒を飲んでいる。
この羞恥と緊張には耐えられない。かといって無理に逃げ出すのも、彼女たちに悪い気がした。
彼はそれらの感情と欲求を掻き消すように、次々と酒を空ける。

「あら、若矢くんってば意外と強いのね」
カルロッテは感心したように言った。

「うふふ♡もっと飲みましょう?」
とリズがグラスに酒を注いでくれる。

「ほら、飲んで飲んで!」
エレーナが若矢の口に酒を流し込む。

3人の美女に囲まれながら飲むお酒は格別だった。
若矢は彼女たちの誘惑に負けまいと必死に耐えていたが、それでもなお彼女たちの魅力に惹かれていく自分を抑えきれないでいた。

そして飲みに飲んだ結果、
「じゃあ……そろそろ宿に移動しましょうか?」
というカルロッテの言葉で酒場から出る4人。
若矢の足はフラフラで、両脇を支えてもらわなければ歩くことさえままならない状態であった。
そしてそのまま4人は宿へと向かったのだが、彼の記憶はそこで途切れてしまうのだった。

「うーん……飲みすぎたな……初めて飲んだのに調子に乗りすぎた……」
頭がズキズキと痛むのを感じながら若矢は頭を押さえた。
記憶が曖昧だ。確かエレーナたちと酒場にいたところまでは覚えているのだが、それ以降の記憶が全くないのである。

(あれ……?)
ふと隣を見ると、そこには裸の美女たちがいた。
「え!?」

「うふふ♡もう……若矢くんったら♡」
エレーナ、リズ、カルロッテの3人だった。

「え!? 3人とも……どうしてここに!?」
驚く若矢に彼女たちは妖艶な笑みを浮かべる。
そして全裸のまま彼に擦り寄ってきた。

「昨日あんなに熱い夜を過ごしたじゃない……♡」
エレーナが若矢の耳元で囁くように言った。その吐息が耳にかかり、若矢はゾクッとする。

「え!? あ、あの……俺……何も覚えてなくて……」
戸惑う若矢に3人はさらに追い打ちをかけるように迫ってくる。

「うふふ……♡じゃあ今から思い出させてあげるね?」
3人の美女は妖艶な笑みを浮かべながら若矢に迫った。そして彼の服を脱がせ始める。

「ちょ! ちょっと待ってください!  3人とも!」
しかし、彼女たちは止まらない。
「うふふ……♡」

「ええい! ままよ!」
そして若矢もついに我慢できず、3人に飛びつくのだった。


「うわあぁぁぁっ!!」
若矢は叫び声と共に飛び起きた。

(ゆ、夢か……)
彼が辺りを見渡すとそこは宿屋の1室だった。

「そ、そうだよな……あんなの夢だよな……。でも異世界に来たのは、やっぱり本当なんだな……」
若矢はホッと胸を撫で下ろすと、自分の服を確認した。ちゃんと服を着ていることに安堵する。

ふと窓の外を見ると、まだ薄暗い空が広がっていた。
洋風の街並みとその奥に広がる草原を見ていると、異世界に来たことを実感する。

「少し歩こうかな……あれ? なんか腰が痛いな……それに股間も……。い、いや……あんな夢を見たせいに違いない……」
若矢は自らの肉体に違和感を感じつつも、頭を横に振ると身支度をして宿を出た。

外に出ると空気が澄み渡っている。まだ早朝だからか人通りは少なく、静かな街だ。
若矢はそんな街並みを見ながら歩き出した。
早朝の街の空気は冷たく、吐く息も白い。
だが、それが逆に心地よかった。

しばらく歩くと大きな広場に出た。噴水があり、その周りにベンチが置かれている。
若矢はそこで一休みすることにした。ベンチに腰掛けると、改めて街を眺める。

(本当に綺麗な街だ……)
彼は異世界の街並みをまじまじと見つめていた。

すると、一人の女性が歩いてきて若矢の隣に座った。
若矢が驚いて顔を向けると、その女性はニコリと微笑む。
それはカルロッテだった。

「あ、カルロッテさん! おはようございます!」
若矢は慌てて挨拶をした。
あんな夢を見たあと、すぐに彼女と出会ってしまい、少し緊張する。

そんな彼の様子を見て、彼女はクスッと笑った。
若矢は顔を赤くして俯いた。

そんな彼を見てカルロッテはさらに笑みを深めると、彼の耳元に口を寄せる。

「昨日はステキな夜だったわね……♡」

若矢はドキッとしてカルロッテを見ると、彼女は妖艶な笑みを浮かべていた。
若矢は頰を染めると視線をそらす。

彼は、カルロッテたち3人との燃えるような夜を過ごした今朝方の夢を思い出し、さらに顔を赤くするのだった。
カルロッテは若矢の様子を見てフフッと笑うと立ち上がった。

「それじゃ、私は先に戻ってるわね。朝食はみんなで食べましょう?」
と言って立ち去る際に、彼女は振り向いてこう続けた。

「そうだ……今夜も、する?♡」

と。
そしてウインクすると、そのまま去っていった。

若矢はその後ろ姿を見つめながら呆然としてしまうのだった。
(あの夢は現実だったのか……?)
そんな疑問を浮かべるが、すぐに頭を振って否定する。

(いや! そんなわけないよな!)
若矢は自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。

でもあの夢はかなりリアルだった……。
(いやいやいや! 異世界に来て初日で童貞捨てて、しかも3人と関係を持つって! あるわけないあるわけない!)
若矢は、頭の中の考えを振り払うようにもう一度頭を振るのだった。

~続く~


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