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夢か現か 救われた僕 4睡目

4睡目「守りたくて」


「はったりぼんのみんなを傷つけさせやしないぞ!!」
僕は精一杯声を張り上げる。
しかし、ガラの悪い男たちはニヤニヤと笑みを浮かべたまま、余裕そうな態度を崩さない。

「なんだ? 兄ちゃん……まさかコイツらを助けようとでも思ってるのか?」
1人の男がそう言って僕の正面に立つと、ドンと肩を小突いた。
僕はその衝撃で尻餅をつく。

「ぐあっ!」
その男は僕の腹を思い切り蹴りつけた。

「こうたんっ!!」
「幸太くんっ!!」
ひなたん、はったりぼんのみんなの悲痛な叫びが僕の耳に届く。

僕はそのまま後ろに倒れ込んだ。
「ぐあっ!」
そしてまた蹴りを入れられる。
痛い……苦しい……。
でもここで僕が倒れるわけにはいかないんだ!! 僕は腹を押さえながらなんとか立ち上がる。
しかし、そんな僕の様子に男たちはゲラゲラと手を叩いて笑う。

「腹の肉のおかげで随分とタフだな」
男たちが僕を痛めつける様子を、はったりぼんのみんなが怯えた表情で見つめているのが目に映った。

「ひなたん!みんな!!大丈夫だからね!」
僕は腹を押さえながら、痛みを堪えて笑顔を作る。僕がみんなの盾にならないと!! 絶対に……絶対に許さないぞ!!コイツらを全員ぶっ飛ばしてやるっ!!

「へへっ、お前みたいなデブに何ができるんだよ?」
1人の男が僕の胸ぐらを掴むと、ぐいっと引き寄せた。

「こうたん!」
ひなたんの悲痛な叫び声が聞こえる。
ひなたん……僕は大丈夫だから。だからそこで待っててくれ!

「調子に乗ってんじゃねぇよ、コラァッ!!」
男の拳が僕の顔を捉える。

「うがぁっ!」
僕はそのまま床に叩きつけられる。痛い……痛いよぉ……。
でも、みんなの方がもっと辛いんだ!だから僕は大丈夫だっ!!

「ぶっ飛ばしてやるっ!!」
僕は立ち上がると、目の前の男に向かって渾身のパンチを繰り出した! ……が、それはあっさりと避けられてしまう。
そして次の瞬間には、また腹にズシンとした衝撃が走っていた。そのまま床に叩きつけられる。

僕の決死の抵抗も虚しく、男の拳が振り下ろされる。
「ぎゃあっ!」
僕は口から血を吐いてその場にうずくまった。腹の痛みが脳天まで響いて、頭がクラクラする……。

男2人がかりで僕を押さえ込むと、リーダーらしき男がひなたんに近づいていく。
「どうやらあのデブの推しってやつは、お前みたいだな」
男はひなたんの顎をくいっと持ち上げると、ニタニタといやらしい笑みを浮かべる。

「い、いやっ!離してっ!」
ひなたんは目に涙を溜めて必死に抗議するが、男は僕の方を向いて邪悪な笑みを浮かべると
「おいデブ。お前の大好きな推しを、今からお前の目の前で汚してやるよ」
そう言ってひなたんの太ももをまさぐり始めた。

「いやぁああ!やめてぇっ!」
ひなたんが泣きながら叫ぶ。

「へへへっ、お前も推しのアイドルの裸見てぇだろ? 全裸で乱れる姿見てぇだろ? お前みたいなデブじゃ絶対にこんないい女とヤれねぇもんな? お前の代わりに俺がこいつをブチ犯してやるよ!」
そう言うと、男はひなたんの服に手をかけると、ビリビリと引き裂いた。彼女のブラジャーが露になってしまう。

「きゃああっ!!やめてぇっ!!」
ひなたんの悲痛な叫びに、僕はもう我慢できなかった。

「やめろぉおおおお!! もうやめてくれぇえええ!!」
僕がそう叫ぶと、男は苛立った様子で怒号を発した。
「うるせぇっ!! おい、そのデブぶっ殺せ!見せしめにしろ!!」
リーダーの男の指示が飛ぶと、僕を押さえ込んでいる1人が僕の背中にナイフを突き立てた。

「うあああっ!! 」
背中に灼熱の痛みを感じて、僕は絶叫する。
しかしその痛みは1度や2度じゃ済まなかった。
男は何度も何度も僕の背中や肩、首にナイフを突き刺した。

霞んできた視界の先に映ったひなたんと目が合った……彼女は先ほどよりも絶望的な表情を浮かべ、身体を震わせて大粒の涙を流している。
そして彼女は僕に手を伸ばして
「こうたん! こうたんっ!! やめてっ! こうたんが死んじゃうっ! やめてぇええ!!」
と、半狂乱になりながらそう叫んだ。

僕はそれに応えようと手を伸ばしたけど、正直もはや絶叫をする余裕すらなく、呻き声しか出てこない。
そんな僕の様子さえ、目の前の男たちにとっては滑稽なのだろう。奴らの満足そうな高笑いが廃墟に響いた。

そしてその瞬間、僕は全てを悟ってしまった。
もうだめだ……僕は死ぬんだ……はったりぼんのみんなを……ひなたんを守ることができなかった……。ごめんよ、本当にごめん……。
ああ……僕はこのまま死ぬのかな……ひなたんを守ることもできないなんて……最悪だ……。

「はっ! 大人しくしてりゃあ、コイツの下着くらいくれてやったってのに残念だったなぁデブ?」
リーダーの男が僕の頭を踏みつける。僕はもう呻き声すら出なかった。

ああ、意識が遠のいていく……僕死ぬんだな……はったりぼんのみんなも守れずに……ひなたんも守れずに……!
ああ、神様!どうかお願いします!もう一度僕にチャンスをください!!
僕はもう、どうなっても構いませんから!
どうか、ひなたんたちだけは助けてください——!お願いしますっ!!

僕は必死に心の中で願う。助けたい……彼女たちだけでも——

"問いを1つ—— 本当にどうなっても構わないのかな?"
薄れゆく意識の中で、誰かのそんな言葉が聞こえた気がした。


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