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日刊アルカディア

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毎週刊行日である土曜日の19:00以外に、投稿する場合にこちらにも追加します。
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#書物

【書物】魅了という毒

【書物】魅了という毒

ロマリアル中央大学教授 
オルガド・ラッシウム 著

「魅了」とは、生まれ持った才能の一つであり、その名の通り他者を魅了する恐ろしい能力である。

この能力を持つ者は、異性や同性を問わず、自らをより魅力的に見せることができ、その力は時に破壊的な影響を及ぼす。

この魅了の能力の起源は、始原祖「フィニス」にまで遡ると言われている。

フィニスは最初に性別の概念を得た存在であり、あらゆる能力の起源と到

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【書物】朽ちた機械要塞

【書物】朽ちた機械要塞

ロマリアル中央大学教授 
オルガド・ラッシウム 著

この惑星セノーラの世界各地には、精密機構要塞と呼ばれるものが存在している。

かつて一大時代を築きながらも、ある日一夜にして国民全員が変死を遂げた巨大国家「アルヴァン帝国」の残した遺跡、俗に「アルヴァン要塞」と呼ばれるもののことである。

アルヴァン帝国は、強大な機械兵器を操ったヒューマン種主体の国家である。
ドラゴンや大型生命体との戦いに勝利

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なかよち、くるちい

なかよち、くるちい

なかよちがいいね

でもつらいよ

だいすきなあなた

だいすきなあなた

どうして

どうして

どうして

そのこがいいんだ

わかるよ

むかし、いってたもんね

まるいめをしてほっぺたがふくらんでて

えくぼがかわいいこがはつこいだったって

いまなの

いまなんだ

わたしがしらないところで

なかよちなんだね

だいじょうぶだよ

わたしきにしないようにするから

でもあなたのおとうさ

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【書物】魅了のハエ

【書物】魅了のハエ

ティントゥス・リピゥス 著

クライシス期 435年。
その当時世界は、数百年前に突如として滅んだアルヴァン帝国の跡目を狙った争いが、各地で起こっていた。
これは一匹のハエが世界を魅了し、そのハエを手に入れようと多くの血が流れた事件である。

そのハエは、アムズマ地方の西大陸「ディペリ」の原生林で生まれた、と言われているが、これは正直信ぴょう性に欠けると言わざるを得ない。
たった1匹が、一度に10

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【書物】倒壊導誅膝蹴区(とうかいどうちゅうひざげりく)

【書物】倒壊導誅膝蹴区(とうかいどうちゅうひざげりく)

むかしむかし、ある国に「導誅」という街がありました。導誅は崖がちな山々に囲まれ、住民たちは日々平穏に暮らしていました。

ある日、この導誅を訪れた若い旅人がいました。
彼の名前はリョウで、勇敢で好奇心旺盛な性格を持っていました。
リョウはこの崖の上には何があるのだろう、と好奇心の赴くままに探索することにしました。

リョウが崖の上に足を踏み入れると、そこには驚くべき光景が広がっていました。崖の上に

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【書物】けもののこども

【書物】けもののこども

ある森の奥深くに、ティガという小さな獣人族が住んでいました。
ティガは幼い頃に、ヒューマン種との間に起きた戦争で親を失っており、孤独な生活を送っていました。

「お父さん、お母さん……ティガはもう疲れたよ……」

ヒューマン種が台頭するその時代。
ティガは行く先々でいじめや迫害を受け、彼にはいつも居場所がなかったのです。

「どうしてみんなティガをいじめるの? ティガは悪いことしてないのに……」

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【書物】神はいない

【書物】神はいない

むかし、ある村に「神はいない」という言い伝えが伝わっていました。

この言い伝えは、村人たちの間で代々語り継がれ、彼らの生活や信念に深く根ざしていました。

その村は、昔から厳しい自然環境に囲まれており、豊かな作物を育てることが難しい場所でした。

さらには頻繁に自然災害に見舞われ、人々は常に生きるための厳しい闘いを強いられていました。

そんな中、村人たちは神を信じることをやめ、自らの手で生きる

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【伝え話】人を喰らう人形

【伝え話】人を喰らう人形

桜京の飢鬼山には 人を喰らう鬼が棲む

夜の闇に 近づくな その身を食われるぞ

結界にて遮られ 鬼どもは里へは降りて来ぬ

だが油断するべからず 鬼は人形に姿変え

屋敷の中へ 幼子の腕の中へ

見知らぬ人形あらば

杭で胸を打ち 焼き尽くせ 

今宵も一人 また一人 鬼の獲物

人形の姿で 肉喰らい 魂奪う

夜明けまで 身を隠せ

決して人形と目を合わせるな

夜の闇に響く 哀れな犠牲者たち

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勇気があれば……

勇気があれば……

美しい夏の日、初老の男性オジアスは、娘と彼女の娘である孫娘を連れてサバンナ観光ツアーに出かけました。
オジアスは地元では知らない者がいないほどに好かれ、信頼されていました。

しかし、彼の幸せな日常は一変します。

ガイドの素人案内のせいで、ライオンの群れに遭遇してしまったのです。

ガイドは一目散に逃げ出し、娘と孫娘の2人はライオンの群れに包囲されました。

オジアスは勇気を振り絞って助けに入ろ

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【書物】臭い王様

【書物】臭い王様

むかしむかし、ある王国に「臭い王様」と呼ばれる王様がいました。
彼はとても臭かったのですが、それを自覚している様子はなく、日々の生活を楽しんでいました。

王様の臭いは王国中に知れ渡っており、王国の人々は彼から一定の距離を保って暮らしていました。
しかし、臭い王様は自身の臭いを気にせず、いつも笑顔で王国を歩き回り、民衆との交流を楽しんでいました。

ある日、王国に美しい花の香りが漂い始めました。

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お金はオッカネー

お金はオッカネー

あるところに、金次(かねつぐ)という若者が住んでいました。

金次は幼い頃から家族の貧困と苦難を味わい、お金の大切さを身を持って知ることとなりました。

彼の父親は多額の借金を背負い、それが原因で自ら命を絶ちました。母親はその悲劇に耐え切れず、精神を病み、精神病院に入院せざるを得なくなりました。
金次の姉も、稼ぎのいい風俗業に身を投じるほどの苦境に立たされました。
やがて姉も病に倒れ、金次は彼女の

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【書物】蟹の襲撃

【書物】蟹の襲撃

昔々、ある美しい湖のほとりに小さな村がありました。
その村では、毎年春になると美味しい魚が湖から獲れ、村人たちは幸せに暮らしていました。

ある年の春、村に大きな蟹の群れが現れました。
蟹たちは湖の水を汚し、魚を食べてしまい、村人たちは困り果てました。
蟹たちはとても強く、村人たちは手も足も出ないでいました。

そこで、村の一人の若者が立ち上がりました。彼の名はカイでした。
カイは勇敢で知恵もあり

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【書物】時空を司る者

【書物】時空を司る者

昔々、遥か彼方の宇宙に、勇敢だが獰猛で野蛮な獣たちが住んでいました。

彼らは知性を得て、他の種族に近しい存在になりましたが、それでもなお、溢れ出る闘争本能を抑えることができず、星々に戦争を仕掛けていたのでした。

ある日、その星に生まれた一人の青年が、生まれながらにして究極の生物と呼ばれた怪物と出会いました。
その怪物は雌であり、彼女の力強い姿に彼の心は打たれました。二人はお互いに惹かれ合い、や

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