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「限界」を超えよう IOWNでつくる未来の世界|【特集】〚人類×テックの未来〛テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ[PART1-3 未来を拓くテクノロジー]

メタバース、自律型ロボット──。世界では次々と新しいテクノロジーが誕生している。日本でも既存技術を有効活用し、GAFAなどに対抗すべく、世界で主導権を握ろうとする動きもある。意外に思えるかもしれないが、かつて日本で隆盛したSF小説や漫画にヒントが隠れていたりもする。テクノロジーの新潮流が見えてきた中で、人類はこの変革のチャンスをどのように生かしていくべきか考える。

人類のインターネットに対する依存度は年々高まり、限界が近づいている。「IOWN構想」はそれを打破できるのか──。〝近未来の現場〟を歩いた。

文・編集部(鈴木賢太郎)

 IoTの進展によりスマートフォンなどの電子デバイスの数が増加するにつれ、データの流通量や消費電力が爆発的に高まっている。人類がいずれ直面するであろうインターネットの「限界」を打破しようと、日本電信電話(以下、NTT)が構想するのが、〝オール光技術〟をベースとする情報ネットワーク基盤「IOWNアイオン:Innovative Optical &Wireless Network」だ。

 われわれの生活に不可欠なインターネットは、LTEや第5世代移動通信システム(5G)などを使用し、情報を「光」で伝送し、コンピューター処理をする際に「電子」に変換する。一方、IOWNでは、情報の伝送から処理まで一気通貫で「光」のまま行う。情報を変換する際の大きな「ロス」が発生せず、電力利用効率や伝送容量が大幅に高まり、遅延も格段に低減できるのだ(下図)。

IOWNの〝オール光技術〟があらゆる社会課題を解決する
(出所)NTT公開資料を基にウェッジ作成 
(注)上記の図はイメージ

 情報通信に詳しいMM総研(東京都港区)の関口和一代表取締役所長は「久しぶりに日本発で世界に展開できる技術になるかもしれない」と話す。2024年の商用化実現を目指し要素技術の実証実験が行われているIOWN構想──。「インターネットの先」にはどのような未来が待っているのか。

タイムラグを解消し
〝もう一つのカラダ〟を円滑に

 「お待たせしました。お飲み物をお持ちしました」

 ドリンクの提供をきっかけにお客さまと会話を始めたのは能面がモチーフのOrihimeと呼ばれるロボットだ。操縦しているのはオンラインの向こう側にいる〝パイロット〟である。

 東京・日本橋の「分身ロボットカフェDAWNver.β」(以下、DAWN)では、難病や重度の障害などを持つ外出困難者が遠隔地からタブレットでロボットを操作し、テーブルで注文を受け、ドリンクを運び、お客さまと会話する。ロボットを〝分身〟にすることで、外出困難者も一人の店員として接客することが可能となった。

 分身ロボットの開発とDAWNの運営を行うオリィ研究所(東京都中央区)の吉藤健太朗代表取締役CEOは「モノだけではなく、その人の〝存在〟も運べるロボットを作り、外出困難者でも社会の中で居場所を見つけ、役割が与えられる場所を作りたかった」と語る。

 脊髄性筋萎縮症を患いながらパイロットとして働く奈良県在住の増田優花さんは「これまで在宅でできる事務の仕事をしてきたが、DAWNではさまざまな人と会話をすることができ、毎日が新鮮で楽しい」と話す。

 一方で、遠隔地からの就労となるためネットワーク特有の課題を抱える。「タイムラグ」の問題である。

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