再考・技能実習制度 「建前論」はもうやめよう|【特集】日本を目指す外国人労働者 これ以上便利使いするな[Part4]
“人手不足”に喘ぐ日本で、頻繁に取り上げられるフレーズがある。
「外国人労働者がいなければ日本(社会)は成り立たない」というものだ。
しかし、外国人労働者に依存し続けることで、日本の本当の課題から目を背けていないか?
ご都合主義の外国人労働者受け入れに終止符を打たなければ、将来に大きな禍根を残すことになる。
文・編集部(鈴木賢太郎)
「さまざまな経験をさせてもらった日本には感謝している。ベトナムに戻ってから社会に貢献できていると実感する日々を送っています」
2014年~17年まで日本で技能実習を経験し、現在は「オオクボベトナム」(ベトナム・ロンアン省)の工場長を務めるクアンさんは、丁寧に言葉を紡ぎながら日本への想いを語ってくれた。
途上国への技術移転による国際協力──。建前と実態の乖離が著しい技能実習制度だが、クアンさんの言葉が示すように、本来の趣旨に沿って運用している企業から、制度のあり方を再考するヒントを見出せるかもしれない。
関門海峡に面した工業団地の一角に本社を構える「大久保設備工業」(福岡県北九州市)。鉄の臭いが充満する工場内では、溶接の火花をバチバチと散らしながら、完全オーダー制の空調ダクトが製作されている。
全従業員が60人の同社では、技能実習生(以下、実習生)を含め40人近くのベトナム人が働いている。これだけ多くのベトナム人の雇用に至るまでに、どのような経緯があったのだろうか?
「ベトナムにビジネスチャンスがあるかもしれない」
同社の大久保康男代表取締役が、客先の伝手を辿りベトナムを現地視察したのは08年。現地を行脚する中で、偶然出会った元実習生のベトナム人ズン氏は、日本で学んだ技術を生かし、ベトナムで日本企業向けの製品を製造する事業を立ち上げた経営者であった。そんなズン氏の活躍に影響され、大久保社長は、実習生の受け入れに向けた準備を開始する。
実習生の「1期生」は、前出のクアンさんを含め3人であった。初めての受け入れで苦労することも多かったが、「日本語をよく学び、自分で仕事を見つけて提案してくれる。本当によく働いてくれた」と大久保社長は振り返る。それ以来、毎年実習生を受け入れるようになった。
だが、思わぬ現実に直面する。
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