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アメリカのEV所有率 持ち家世帯の方が賃貸世帯の3倍高い

Lucas W. Davis氏の論文によれば、アメリカの持ち家世帯は賃貸世帯に比べて3倍の割合でEVを所有しています。この格差の背景は、持ち家世帯と賃貸世帯との間での自宅充電の利便性の差が考えられます。また興味深いことに、この格差は所得、家庭特性、その他の要因を調整しても縮まらず、例えば、年収が75,000ドルから100,000ドルの世帯では、持ち家世帯の130人に1人が電気自動車を所有しているのに対し、賃貸世帯では370人に1人しか所有していませんでした。これは経済学者が「大家と借家人の問題」と呼んできたもので、大家にとって充電設備の投資にインセンティブが少ないことが要因です。

自宅充電は非常に便利でコスト効果が高いとされており、特に夜間や晴れた昼間に充電を行うことは電力グリッドに負担をかけず、EV所有者にとっても経済的に有益です。実際、IEAのデータによれば、アメリカのEV所有者の約80%が一戸建て住宅に住んでいて、自宅充電環境とEV所有には相関関係があります。

日本においても、集合住宅や賃貸住宅での自宅充電が重要な要因となります。特に都市部に住む多くの人々が集合住宅に居住しており、こうした環境での自宅充電の普及がEVの普及を後押しする鍵となります。しかし、現実には多くの課題が存在します。例えば、分譲マンションの場合、管理組合の合意が必要で共用部の駐車場に充電設備を設置する必要があります。また、賃貸住宅の場合、貸主の許可が必要です。

集合住宅での充電設備の設置には様々な課題が伴います。建物のデザインや駐車場の配置、そして所有権のモデルによって、設置方法やコストが大きく異なる可能性があります。また、充電設備の費用分担も問題となります。共用部への設置の場合、マンション全体で負担するのか、EV所有者個人が負担するのかを検討する必要があります。さらに、大規模なマンションでは高圧受電設備が必要になる可能性もあり、これも大きな費用がかかります。充電に伴う電気代はどのようにして受益者に負担させるかも検討が必要です。

アメリカの住宅市場では、約28%が集合住宅であり、2つ以上のユニットを持つ建物を指します。このような建物での充電設備の設置に関する課題や疑問が多く存在します。アメリカの複数の州では、「充電権利法(Right To Charge Laws)」という新しい法律が制定されており、区分所有者や賃借人に特定の条件下で自宅充電設備を設置する権利を与えています。また、アメリカ以外の国や地域でも、「Right To Charge Laws」が制定され、EVの普及を促進しています。例えば、電気自動車が最も普及しているノルウェーでも「Right to Charge」が導入され、EV所有者の95%が自宅充電環境を整えています。

充電の頻度 - 2022年ノルウェーEVドライバー調査 N=15,076

このRight To Chargeは、充電設備の設置に関する一般的な懸念や問題を取り扱います。誰が設備や電気のコストを負担するのか、設備はどこに設置されるのか、そして何らかのダメージが発生した場合の責任は誰が負うのかなど、多くの疑問に答えを提供するものです。

日本でも、Right to Chargeの考え方を取り入れることで、上記のような課題に対する解決の糸口を見つけることができるでしょう。費用負担の問題については、政府や自治体の補助金制度を利用して、充電設備の初期費用を軽減する方法や、充電に伴う電気代を受益者が直接支払うシステムの導入など、さまざまな手法がすでに存在しています。

持続可能なエネルギー社会を目指す上で、このような取り組みは不可欠です。政府、自治体、民間事業者が連携して、集合住宅での自宅充電の普及を推進していく必要があります。

参考文献:
・SCALE Report on consumer behaviour (1st edition)
・Evidence of a homeowner-renter gap for electric vehicles, Lucas W. Davis
・IEA Global EV Outlook 2023


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