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【レビュー】劇場版コナンを3回観た結果見えた「熱狂」の正体

GWといえば、コナン映画。

最新作、
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』
を鑑賞してきました。

それから暇なニートみたいなものなので、
3回ほど映画館に足を運びました。

平日昼、華金の夜、日曜日の昼というパターンで
劇場版コナンを見つめるとそこには僕が見えていなかった
「女性ファンの熱狂」の形がありました。

近年の劇場版コナンを根本的に勘違いしていた

コナンに熱狂する女性ファンの方々を3回にわたり間近に感じた結果、
コナンが劇場で売っているものを根源的に勘違いしていた
ことを強く自覚したので備忘録で書き記しておこうと思います。

コナンといえば、
アラサーの僕が小学生のときから
殺人事件を解決し続けているミステリーマンガです。

まず前提として、
僕とコナン映画との距離というのは、
たぶん同世代の平均的なものだと思われます。

それはすなわち

最初の方の数作を劇場やテレビ放送で見ていたが、
部活や受験で忙しくなったりアニメを観る頻度が減る過程で
コナンのコンテンツに触れる時間が徐々に減っていった

という距離感になります。

これがまぁ、
男子学生のライフスタイルから逆算して、
もっとも平均に近い距離感でしょう。

※僕の場合は
「天国へのカウントダウン」や「ベイカー街の亡霊」
あたりは当時夢中になって見ていましたね。

コナンには元来殺人事件を主とするミステリーの要素と、
本来の姿で蘭に思いを伝えられないコナン(新一)のもどかしさを
原型としたさまざまなラブロマンスの要素が入り混じっています。

かくいう僕も恥ずかしながら
ミステリー要素(黒づくめの組織が出る回は興奮した)
を消費することはもちろんでしたが、よく考えたら、

そういえば蘭に恋をしていたし、
当時のリアルな世界での恋愛とコナンの何かを重ねていた
「クラスの好きな人を守るために爆弾を止めるオレ」を妄想していた

ということを映画を見て図らずも思い出しました。

劇場版コナンは結局、
爆弾や殺人という極限の状況という舞台を丁寧に用意し・・・

「ロマンスを売っていたのだった!!!」

(え、いまさら?)

コナンのラブコメ市場は、浦島太郎にはもはや”追跡不可能”な深さに達していた

平日の昼に行くと、
僕以外の観客はほとんどが女性1人。

金曜日の夜に行くと、
やっぱり僕以外はほとんどが女性1人。
連れてこられている彼氏すらほぼいません。

日曜日の昼になって初めて
「コナンを好きな子供を連れてきているパパ」
などの属性も現れ始める。

僕はここで1つの疑問に出会いました。

・・・

「あれ、コナンって、昔の俺みたいなクソガキが見るアニメじゃなかったっけ?ここ、ジャニーズのコンサート会場じゃないよね?いつ客層がこんなに変わったんだ?」

その認知的不協和を解消するべく、
いろいろと調査をしていくと、
コナンがミステリー映画だった時代はとっくに終わっていました。

本能を消費したい。

これが僕が見出した本質です。

もうちょっというと、

推しがイチャイチャしているのを見たい、
推しを応援したい、
推しが報われて喜びたい、
推しが報われず悔しがりたい、
その推しごとすべてを消費したい、

というところ。

繰り返しになりますが
”名探偵”コナンと謳いながら、
ミステリーで小五郎が眠りながら謎を解く部分はどうでもいい。

(というか今回そんな描写すらなかった笑。毛利小五郎は、もはや「寝ているだけ」でした。その間にコナンが犯人多い詰めるのがこの作品のアイデンティティじゃなかったのかと思った笑。そんなことよりも、平次とキッドのあわやBLだった事件への復讐と、新一よりもいい条件で告りたい平次と、平次が報われること。したがって、小五郎は眠っているだけ!笑)

コナンにハマる女性たちは
誰が死のうが、誰が狙われようが、
何が爆破されようがほとんど関係ありません。

爆破や殺人事件は、
今やすべて推しと恋人候補の関係性にスポットを当てる
舞台装置でしかない。

もう制作者側も完全に割り切っておられる姿勢が見て取れます。

もっと言うとやっぱり、
推しが報われ、イチャイチャして欲しい
というところに多くのエネルギーが集中していました。

文化の象徴

この消費活動の行先を探していくと、
二次創作」に必ずぶつかります。
ここに女性コナンファンの根源的なカタルシスがあるように思われます。

※「コナン 二次創作」と検索するとそういうクリエイティブが無限に出てきます。そこで描かれているのは、「特定のキャラがもっと報われたり、イチャイチャしたりする様子を応援したいのに原作でその燃料が足りない人たちが集まる場」として機能していて、原作者もそれを認めているというとても面白い世界があります。今年であれば平次と和葉、去年であればコナンと灰原のように、順番に映画という特別なシチュエーションでこの市場の要求に応えていく絶妙なゲームを青山先生と女性ファンで永遠に繰り広げている独特な文化が形成されています。(ここの市場にいらっしゃる方のインサイトというのを、僕は超詳しく知りたいし、この辺に偏愛がある人は僕の無限にその視点をぶつけてほしいと心から思います。僕になかった視点なのでめちゃくちゃ勉強になるし、面白いのです。)その対象は探偵だけでなく警察にまで及びます。警察に推しのキャラがいるファンが多すぎて、警察のメンバーが主役となっている映画も多々見受けられます。

公式であれ非公式であれ、
これがコナン映画というコンテンツの本質であると言えます。

そういえば去年灰原とコナンが映画でいちゃついていた時に、
ユニクロで売っていたこういうシャツは完売して、
メルカリとかでプレ値で取引されているのとかも象徴的ですね。

コナンの映画のエンディング後に、
「来年の映画の予告」があるのですが、
女性ファンの関心は

映画のテーマ

ではなく、明らかに

次は誰がイチャイチャする話なのか?

にフォーカスされており、
僕が知る限りこんなに盛り上がる「予告コンテンツ」は、
Switch版のスマブラの発表以来なのではないでしょうか。笑

僕が子供の頃に見にいっていた時代と、ここまで客層が変わったプロセスには、きっとたくさんの方の「推しのキャラへの偏愛」のエネルギーが複雑に絡み合い、ここまでの一大イベントへと成長したのでしょう。

年に一度の大イチャイチャ応援大会ですね。(超褒め言葉。こんな文化が形成されている映画コナンだけでしょ。面白すぎ。)

多くの方の偏愛が高じて、
最初はアングラであったであろう二次創作が、
一緒にコンテンツを作るフィードバックになっている。

製作者も、振り切る。
ちゃんとファンを喜ばせ切る。
ファンは潤沢なお金を落として応援する。

とても尊いコンテンツの形だと僕は思います。
映画であれば、いろんな主義を持つ原作のファンを怒らせない、
という特別なイベントでやっているのもまた良いです。

思えばコナンは高校生探偵チーム、
少年探偵チーム、大人探偵チーム、
さらには警視庁までもれなくバカンス関係があるし、
無限に膨らませていくことができるなぁ。

ぼくたち男は、
ウルトラマンが怪獣を爆発させるのを喜んで育つから、
自然に爆弾班との戦いにフォーカスするけど、

よく考えたら、
「天国へのカウントダウン」も、
あゆみちゃん×コナンでバカンスしてたわ。

ファンと共に全力で燃焼できるコンテンツは
どこまでもストーリーと
「推しごと」であるべきだなと気づきを得ました。

これはなかなか男だけで考えていても
見えてこない視点で、あたらしい世界に気づかせてくれた
コナンのファンの皆様に心から感謝でございます。

余談:舞台「五稜郭」のエピソードがエモすぎる

「ここまでの事態になっているなら、当然平次ファンは五稜郭に聖地巡礼するのだろう」

と思い、五稜郭のことも色々調べてみました。

そしたら五稜郭(@函館市)にまつわるエピソードがもう凄すぎて。

戊辰戦争で、
明治政府軍VS旧幕府軍がばちばちやっていたわけですが、
追い込まれた旧幕府軍の榎本武揚(えのもとたけあき)が立てこもったのがこの五稜郭です。

立てこもる榎本に新政府軍は
降伏を要求する使者を送ります。

榎本は降伏を断る代わりに、
「海津全書」という本を送りました。

※日本の近代化に必要不可欠な、オランダ語の書籍。機械工学や化学を学び、7ヶ国語を習得した超知識人の榎本から見て、この本は日本が失ってはならない「情報資産」だと見通し、その本を新政府軍に送り返したのです。

榎本は降伏せずに戦いの忠義をまっとうすると共に、
戦火でこの情報資産を失ってしまわないように政府に
贈り物として渡すことにしたのです。

これから自分の命が危ないという時に、
こんなことができる器量に僕は心から驚きました。

やはり時代を変える幕末や
明治期の偉人のエピソードは、
どれも言葉にできぬ迫力があります。

さらにエモいのが、
明治政府軍を率いていた黒田清隆のリアクションです。
戦果を上げれば自分の評価になるところですが、彼は書籍を贈られた後は五稜郭を攻め落とす、ということはしませんでした。

「これほどの知識と度胸、広い視野を持った男を殺すなんて間違っている」

・・・なんと黒田は戦争中に榎本を招き、
酒を準備して会談を開きました。

榎本は自分を殺して他の立てこもっている人を助けて欲しいと黒田に懇願します。黒田は榎本を「これからの日本に必要な人だ」と評し、何と戊辰戦争を終結させました。

そして榎本の死刑を要求する声が多い中、
黒田自身が丸坊主になり榎本の命を救うことを懇願します。

榎本は新政府軍に加わり、
外交官として活躍することとなり、
さらにその後、黒田清隆が第2代総理大臣となった時、
榎本は大臣として共に政権を運営する仲間として活躍したのです。

これは、
フィクション映画ではなく「五稜郭で本当にあったこと」。

旧政府軍、新政府軍、
お互いが自分の立場を誠実に守りながら、
「日本という国を良い方向にする」という大志を共同で達成する。

ど迫力のエピソードに、
僕は今日の政治に思いを馳せざるをえません。
幕末のような革命が起きる水準に余裕で達していると思うので。

だからこそ、まずは自分のできることをやろうと思います。

P.S.僕もマンガ描いてます

僕も自分の人生をマンガにしています。
僕の本心からのメッセージを伝えているので、
ぜひ読んで、応援してもらえたら嬉しいです。

下記のページにマンガあります。

P.P.S.

「コナンの映画で何らかのキャラを強烈に推している」という視点を誰かにぶつけたい!という方がもしいたら、よければ上記のメルマガに返信して、好きなだけ書き殴ってくれたら嬉しいです。嬉々として読み漁ると思います。待ってまーす。

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