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#55 初めての印象を思い返してみる

自分がサービスを作り、提供する側になってから、自分がこれまで経験してきたことの”初体験”の印象をときどき思い出しています。

なんだかんだと長く継続できていること、継続して通っている場所、長くお付き合いのある方、などを思い返すと、自分でも不思議なのですが、一番最初の印象が必ずしも良いわけではなかったことに気づきました。

全部が全部というわけではないけど、すごく良い印象だったということよりも、大して印象にないか、もしくはちょっと「えっと・・どうなんだろうコレ」みたいなケースがそれなりにあります。


たとえば、わたしは20年近く同じ美容室で同じ美容師さんに髪を切ってもらっていますが、初めてその美容室を訪れたときは、自分でもリピーターになるとは全く思っていませんでした。むしろ最初の衝撃が強すぎて、そのときは二度と行かないだろうと思っていました。

最初のきっかけは、大学生のときにたまたま表参道に用事があった帰り道で突然

「あー、すみません、最近、髪切ってます?久しぶりなら今からどうですか?初回は割引あるので・・」

と、ちょっと奇抜な格好とヘアスタイルの女性から声をかけられました。いわゆる営業キャッチ的な。

こういう風に声かけられたときは断ることが多かったのですが、なぜかそのときは応じてしまい美容室まで一緒に行くことになりました。どうせ帰るだけだったし、確かに髪伸びすぎてきてそろそろ切りたかったし、くらいの感覚です。

そして、連れて行かれた美容室に衝撃を受けました。ある建物の2階が店舗だったのですが、建物の近くにきたあたりから、何やら威勢のいい声や笑い声がわりと響いている。。しかも店舗の窓から変な馬?の置物が顔を出してる。。

「え?美容室だよね?」

という戸惑いを覚えつつ、入店。

威勢のいい「いらっしゃいませー!」の声とともに、店内はやはり、かなり賑やかでした。しかも、なぜか美容師さんたちは変な格好。みんな仮装していました。かなりハデ目というか相当奇抜な仮装です。パッと見、10人くらいのスタッフがいましたが、どのスタッフもテンションが高い。

当時はハロウィン文化など全く根付いていないし、そもそも夏の終わりだったので、そういう時期でもない。

内心、え・・変な美容室に連れてこられちゃったか・・と引き返したい気分になりましたが、とりあえず様子を見ることにしました。

入店後、ほどなくしてこちらが担当する美容師さんです、紹介されました。

わたしと同年代くらいの女性が元気よく「よろしくお願いします!」といいながら名刺を渡してくれました。名刺には「レスラー ぶる」と書いてありました。ちなみに最初に声をかけてきた営業キャッチの女性スタッフは「コロッケさん」だそうです。

もう、その時点で頭の中が「???」状態。

なんだよ、レスラーって。。ま、確かにちょっとガタイがいい女性だけどさ・・。コロッケって、ここ何屋?状態。

と、戸惑いは確実に不安に近づいています。

しかし、こっちの戸惑いなどそっちのけで「まずシャンプー入りますね!」と、コロッケさんから洗面台に案内されたので、もう今回は諦めてここで切ってもらおうと覚悟を決めました。せめて変な髪型にならないように願うしかないな、と。

そして、シャンプーされているときからその美容室がいかに変かを知ることになります。

まず、突然歌を歌いだしたり、小芝居を始めるスタッフや美容師さんがいる。かなり声も大きい。髪の毛染めながら、あっちでもこっちでも歌ってる。

それが1分や2分じゃない。5分とか10分。終わってちょっと静かになっても、また誰かが歌い始めたり即興でミュージカルを始めたりする。ギターを弾き出す。店舗の端と端で大きな声で漫才のような掛け合いが始まる。

ひとことで言うなら ”動物園” のような印象です。置物の馬もいるし。

シャンプーが終わり、カットが始まり、カラーされている間の約3時間、ほぼ、うるさい。担当のぶるさんもわりと陽気な方で「すみません、変な美容室で」と言いつつ、他の美容師さんと絡んで楽しそうにしている。


こういう美容室が世の中にあるのか・・東京すごい・・と、田舎から出てきて数年のわたしにはあまりにも衝撃的でした。

一方、肝心のカット、カラーは事前に伝えたイメージどおり、というか、今まで行ってた美容室よりかなりいい感じに仕上がっていました。仕上がりには大満足でした。

お会計をしているときに、「良かったらまた来てください」と言われたものの、内心は「どうなんだろう。わたし。カットもカラーもかなりいい感じだけどこの雰囲気・・」という気持ちでいっぱいで、まともな返事ができませんでした。


最初の印象は戸惑いや不安が大きく、むしろ、うるさかったのがちょっとイヤで、決していい印象のお店とは言えませんでした。

でも、結局2,3ヶ月して髪の毛が伸びてきたときに、違う美容室は探さずに、動物園のようなあの美容室に再度予約を入れている自分がいました。

なぜ2回目も行こうと思ったのかは、実はいまだに自分でもわかっていません。ただ、今まで関わったことのない人たちが集まっている場所だという認識があったので、きっと興味があったのだと思います。自分の価値観を広げる、と言ったら少し大げさですが、たぶん、自分には無い何かを感じていたからだと思います。それに、何よりカットやカラーが気に入っていました。

そして、その後、結局20年近く通っています。通っていて良かったなと思います。

長年通っていて感じるのは、歌を歌ったり、小芝居始めたりして傍目にはふざけているような印象でも、やるべき仕事はキッチリしている人ばかり。決して手を抜かない。お客さんの空気も、実はさり気なく読んでいて、うるさいのが苦手そうな人のときには声のかけ方も変わっていたり。

わたしを担当しているぶるさんや他の美容師・スタッフさんも含めて、みんなの仕事に対する真摯な姿勢に、学ぶことも多くありました。

もちろん、カットやカラーも毎回満足です。周りのひとからも「どこで切ってるの?いい感じー」と言われることが結構あります。


なお、その美容室の現在は、時代の移り変わりとともに、お客さんの層も少し変わったのか(というかリピーターも年をとるので)、20年前のような変な仮装やメイク、奇抜なヘアスタイルで歌ったり芝居する雰囲気は今ではほぼなくなっています。ときどき、「今日は仮装デーです!」という日がありますが、それでも昔に比べればだいぶ大人しい感じになっています。

ちなみに、わたしに声をかけてくれたスタッフのコロッケさんは、いまは芸人さんになっているようです。

ちょっと前に、ぶるさんに聞いたら

「彼女、いま芸人やっているんですよ!ミラクルひかるって知ってます?宇多田ヒカルのものまねをよくしてるんですが。あの当時、毎日ウチで何かしらのネタを強制的に披露させられてたんですよ」と。

やっぱりタダ者の集まりではなかったわけだ!芸人養成には持ってこいな環境だったのは間違いない。



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