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物語が世の中を動かす(佐々木康裕『D2C「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』)

 「はじめに」を読んで、これはいま読むべき本だとすぐに悟った。
「モノ売りからコト売り」と何年も前から言われているが、最先端は「世界観」を売っている。テクノロジーの力を掛け合わせて。
アメリカの最先端事例を紹介しつつ、D2Cという新しいビジネスモデルを紹介している本書。
企業としてだけでなく個人のブランディングの観点でも示唆に富んだ内容だと感じた。


ストーリーはブランド構築に必要不可欠な要素になる

 ストーリーテリング×データドリブン

D2Cはこれを掛け合わせたビジネスモデルらしい。

私が本書で引き込まれたのは主にストーリーテリングの部分だ。
最先端のD2C企業は本格的なメディアを多数用意している。
SNSはもちろん、雑誌やポッドキャストなども。
それによって自らの手でブランドの「世界観」を構築しているのだ。

濃密に「世界観=ストーリー」を発信し、「共感」を得て購買行動へつなげる。
これはアメリカの事例だが、日本でも違う形で実際に起きている。

 海外で何百円で買った大仏がウン万円で売れる
 インフルエンサーが企画したコスメが開始数分で完売する
 SNSでバズってオススメされた商品が棚から消える

発信者に共感した人たちが熱狂し行動する。
そうして個人がブランドとして構築されている。
D2Cはこれを企業として戦略化し実行していると解釈できるのではないかと思う。

日本は得てして機能を語りがちだが、それはどうしてもコモディティ化しやすい。
それよりも、共感のストーリーを構築する方が強いブランドを作るのは、本書を読めば自明のここと思えるはずだ。


顧客→エバンジェリスト
 私は人から薦められたら買うことが多いし、モノを買う時はレビューを見てから決めることが多くなった。

人づて、口コミに勝る営業はない。

D2C企業の成長の原動力はここにある。
顧客をエバンジェリスト(伝道者)へ変え、最高の営業マンになってもらう。
そのために濃密なストーリーを届け、エバンジェリストをサポートし、彼ら彼女らが新たな顧客を生む正のサイクルを回そうとしている。
これはSNSが発達したことで可能となった流れだ。

今でも営業マンが伝道者となり、顧客をファン化していくことは行われている。
しかしそれは商品ではなく、営業マンの属人性によるファン化だったりする。
それではもう効率が悪い。
ブランドに共感してもらうための戦略のヒントがここにあると感じた。


BtoC以外でもストリーテリングは必要か
 私は建材メーカーで働いているので、分類すればBtoBtoCだと言える。
D2CはBtoC企業のビジネスモデルだ。
しかしブランド構築の観点で言えば、そこに限らないと思う。

機能はコモディティ化する。

だがストーリーは簡単には真似できない。

そしてメディアをすぐに持てなくても、SNSは使えるのだ。
誰に届けるかを明確にすれば、ストーリーテリングによるブランド構築はBtoBであっても良い打ち手になる。
むしろ斬新な新商品を待つよりも確度は高いのではないかとも思えた。


最近、営業として新しい手法を模索していた中読んだので、本書は刺激でしかなかった。
世界は広くどんどん変わっていっている。こういう本でその一部でも知ることができるのはとてもありがたいなと思う。




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