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ミツル、恋をする


 皆さん、こんにちは。もう店なんてしないなんて言わないよ絶対。木賃ふくよし(芸名)です。
 ワタクシ、このnote記事の中でいくつか恋愛指南を行いました。


 この手の恋愛指南に限らず、信用に値しないのは「成功例」ばかりを挙げているパターンです。ええ。
 何に関しても、何に失敗したか、なぜ失敗したか、どう改善するべきか、どうすれば成功だったのかを考える必要があります。

 では、皆さんも一緒に、この話の何が成功で、何が失敗だったかを考えつつ、お読み進みいただきたいと思います。

 知り合いのバーテンに、ミツルくんと言う子がいました。ワタクシより幾つも年下です。
 彼は当時はまだ大学生で、バイトのバーテンでした。もう20年以上前の話ですが、ワタクシの行きつけのバーがありまして、そこのバイトです。

 その日はマスターが不在で、バイトのユージくんとミツルくんが回していました。


 ユージ 「木賃さん、聞いてやってくださいよ」

 ワタクシ 「ん? なに? どうしたん?」

 ユージ 「ミツルが恋をしてるんですよ、恋」

 ワタクシ 「他人の恋愛話に興味ないけど、一応聞こう」

 ユージ 「実はね、ミツルが恋してるんですよ。マクドナルドの店員に」

 ワタクシ 「イヤな予感しかしない」

 ユージ 「一目惚れらしくて、通い続けてるらしいんですよ」

 ワタクシ 「失敗の予感しかしない」

 ユージ 「でしょ? 聞いてやってください」

 ワタクシ 「よろしい。話したまえ」

 ミツル 「いや、違うんですよ」

 ワタクシ 「違わない。話したまえ」

 ミツル 「ええ、、、。大学近くのマクドナルドで働いてる子が、すごく可愛くて、顔を覚えてもらうために、毎日通ってるってだけの話ですよ」

 ワタクシ 「通ってるだけじゃないだろー。詳しく話せ」

 ミツル 「特に何も話してませんし」

 ワタクシ 「他には?」

 ミツル 「顔を覚えてもらおうと思って、毎日、その子の立つレジに並んで、、、」

 ワタクシ 「何時に?」

 ミツル 「昼の12:00です」

 ワタクシ 「ピークタイムにか、、、あかんわ」

 ユージ 「でしょ? しかも」

 ワタクシ 「しかも?」

 ユージ 「印象付けようと、


 フィレオフィッシュ1個だけ



 注文してるんですよ」



 ワタクシ 「最悪やで、それ。

 絶対にバックヤードで、


 フィレ夫って



 呼ばれてるぞ」



 一同 「フィレ夫」(大爆笑)



 はい。何が駄目だったか「わからない」人は気を付けましょう。
 基本的に考えて、印象付けるのに回数は必要ありません。一目惚れなら、とっととアプローチすべきです。
 しかも、ミツルくんは「いつもありがとうございます」って言われる頃になったら、電話番号(当時は携帯電話)を書いたメモを渡すつもりだとか言い出したから、更に大ブーイング。

 マクドナルドの店員は基本的に「いつもありがとうございます」とか言わない。言わないから。

 で。そこから1ヶ月ぐらいミツルくんのニックネームは「フィレ夫」になりました。フィレ夫。

 そして1ヶ月後。


 ワタクシ 「そーいや、フィレ夫の恋はどうなったの?」

 ユージ 「顛末を話してませんでしたっけ?

 終わりました」


 ワタクシ 「やっぱり」

 ユージ 「実は、俺の友達が同じマクドナルドでバイトしてて、その子の評判を聞いたんですよ」

 ワタクシ 「ほう」

 ユージ 「そしたら、バイト内で男からも女からも嫌われてるぐらいに性格が悪いことが判明して」


 ワタクシ 「ありゃー、、、。

 え? まさかホントに、


 フィレ夫


 って呼ばれてたとか?」




 ミツル 「フィレ夫の方がまだマシでした」




 ワタクシ 「え?」



 ミツル 「また今日も、



 サカナが来た




 って言われてたらしいです」





 ワタクシが知る渾名の中で、一、二を争う酷さである。百年の恋も冷めるわ。

 そこからフィレ夫はミツルくんに戻った。さすがに気の毒過ぎて、サカナとは呼ばれなかった。


 なお、さかなクンさんが世に出てくる前の話である。

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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。