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魔法使いは眠る


 皆さん、こんにちは。今日の話はちょっとヘヴィかも知れません。木賃もくちんふくよし(芸名)です。
 まあ、いつものワタクシなら、話題がちょっとヘヴィとか言いながら、


 (´・∀・)」 ヘヴィメタル
 の話をしちゃう訳ですが。


 本日は割と真面目にちょっとヘヴィな話なので、その点は覚悟の上でお読み進みください。
 はい。そんな訳で、ちょうど1年前の〜って言いたいところですが、だいたい1年半ぐらい前の話になります。
 年末の空気が漂い始めた11月の終わりだったか。

 ツイッターに見慣れないアカウントからDMが送られてきたのです。
 プロフィールを見る限り、ワタクシとは縁がなさそうな20代前半のギャルっぽい感じのアカウント。まるで見覚えがない、と言いたいところだが、


 (´・Д・)」 なんか、
 名前とプロフィールに
 少し既視感がある。


 普段なら無視するが、ワタクシの勘が「それで合ってる」と告げる。
 そう。このアカウントは、


 ワタクシが若かりし頃にヤンチャして、
 知らないうちに生まれていた我が娘ーーー!


 などではなく、


 (´・Д・)」 姪っ子である。



 そして、姪からのDMの内容は、


 おばあちゃん(つまりワタクシの母)が、

 交通事故に遭ったから、とにかく祖父(つまりワタクシの父)に連絡しろ。



 と言うものだ。
 ワタクシはすぐに父に連絡を取った訳だが、状況は芳しくなかった。


 病院に運ばれ、意識不明の重体で、生死の境を彷徨っている。


 ワタクシは狼狽したが、父は冷静だった。
 とりあえず実家に帰る、と言ったワタクシに「何も出来る事はないから、来る必要はない」と告げたのだ。
 マスク解禁宣言が出た今でも、まだ医療機関は変わらないが、この時は既に「コ 口 ナ」が世を騒がせていた為に、そもそも病院は面会謝絶。確かにワタクシが行っても何にもならない。

 この事故と医者の手術により、嘘みたいな話だが、母親は一命を取り留め、そして、現在も


 意識不明のままである。



 実際、手術は何度も何度も行なった。大きな手術だけで5回は行なっただろう。
 手術の報せがあるたびに、寿命が縮む思いがしたし、今度こそ助かるのでは? と今度こそ駄目なのでは? と期待と不安が入り混じった。
 その結果、母は生き延び、そして、意識は戻らないままである。


 これを言うと人でなしと言われそうだが、本音を言うと、手術してくれた医者には感謝してもしきれぬ一方、手術は失敗していた方が良かったのでは? と思う事もある。
 ワタクシは本人ではないのでわからないが、


 母は痛かったり、苦しかったりするのだろうか。
 もし、意識不明で物言わぬ身でも、苦痛が母を苦しめているなら、手術は失敗していた方が良かったのではないだろうか。

 あるいは、ただ心地良い夢を見ている状態なら、目覚めないままでいる方が良いのではないだろうか。


 元気に回復してくれるなら、もちろん目覚めて欲しい。


 正直、親不孝者だと謗られようと、母の目が覚める事を期待している訳ではない。
 ドラマじゃあるまいし、何年も意識不明で、ある朝、奇跡が起こった! なんて夢を抱いて生きる方が過酷だ。
 それならば、もう目覚める事はない、と腹を括っていた方がマシだ。


 お母さん、あなた、もう眠り姫って年齢じゃないでしょう?
 どっちかと言うとじゃなくて、確実に、お姫様を助ける魔法使いの役じゃないの。
 あなたが眠ってちゃ駄目でしょう。


 そう思って1年と数ヶ月が過ぎた。母は相変わらず眠ったままだ。

 そんなある日、ワタクシの携帯電話が鳴った。




 父からである。



 
 便りがないのは息災の証拠なんて言うが、手術の度の知らせを受けて、それを痛感している。
 あの時の動揺が胸によぎる。寒かったあの冬ではなく、今は春の兆しさえ感じる暖かさ。あれから1年と数ヶ月。ワタクシは不安を抑え込むようにして、電話に出た。



 「もしもし?」



 「ああ、、、お母さんの事故の事で、、、」


 父の言葉の歯切れが悪い。

 ワタクシに「出来る事などないから帰らなくていい」と言った父の、あの力強さが微塵も感じられない。
 鼻をすすり、鼻声で、いや、涙声で話し始める父。


 「グズッ、、、お母さんの、、、事故の事で、、、保険会社と相手方と協議の結果、、、間に、、、弁護士を立てることになって、、、。それで、どう言う要件か詳しくはわからんけど、、、代理人として、、、家族の、、、同意を得ていると、、、意思確認が必要らしくて、、、今から弁護士さんから、、、電話がいくから、、、よろしく頼む、、、」


 (´・Д・)」 えー、、、?


 (´;ω;`) ズズッ


 (´・Д・)」 あの、父上様?


 (´;ω;`) なんだ息子よ。



 (´・Д・)」 ひょっとして、
 今年の花粉症は、
 そんなに酷いのか?



 (´;ω;`) うん。



 (´・皿・)」 花粉症に対して殺意を覚えたのはこれが初めてだわ。



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 なお、この先には母の容態に関する話しか書かれてません。


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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。