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ゴミにならないソファを作りたい!

静岡県裾野市に拠点を置くソファーブランド「MANUAL graph(マニュアルグラフ)」。出会いは2019年に頂いた一本のメールから始まりました。わざわざのファンと言ってくださったスタッフさんの温かいメールには、静岡でソファーを作っていることや、工場へ見学しにきませんか?というお誘いが丁寧に書かれていました。何とも嬉しく、日程を調整してから行きますねというお話を進めていたところにパンデミックが起こったのです。

マニュアルグラフの本拠地は静岡県裾野市

そして2021年、一旦ペンディングしてしまった工場見学に行くことになりました。工場を見学してお話をしている中で印象的だったのが、マニュアルグラフがソファー作りで大切にしていること=丈夫で長持ち・代々続く・できるだけ環境に配慮したいなど、わざわざに通じる部分が多くあったことです。

マニュアルグラフは、1965年に創業した株式会社フジライトを継いだ3代目の鈴木大悟さんが、2013年に立ち上げたファクトリーブランドです。工場で作ったソファをダイレクトにお客様にお届けすることで、質の良いものを手に入りやすい価格帯で販売することを続けています。

フジライトは長年、業務用のソファをオーダーで制作して納品する事業を行っており、業務用の使用に耐えうる強度のあるソファ作りには定評があります。その技術を活かしたソファを個人に販売するのがマニュアルグラフなのです。

そして、意気投合した私達はぜひ一緒に取り組みを始めませんか?ということで、オリジナルソファを作る企画がスタートしたのです。

工場の皆さんと何度も話して作りました

不法投棄されることの多いソファ

代表の鈴木さん

代表の鈴木さん達とソファについてひたすらお話しました。まずソファは、私達には、とても大きな買い物です。日本の住宅事情からすると部屋の大きなスペースを占めることがあり、買い物に慎重になり吟味して買うのがセオリーでした。ですが、大手インテリアメーカーが技術を結集して安いソファを大量生産するようになってから、年齢による趣味の変化や引っ越しに合わせて買い換えることが手軽にできるようになったのです。

それが原因というわけではありませんが、ソファの不法投棄については各地域で問題になることも多いそうです。環境省の資料では、年々不法投棄数は減少傾向となっていますが、インターネットのニュースなどでソファの不法投棄については、多々目にすることがあります。

環境省 産業廃棄物等の不法投棄の状況について(令和2年度)
https://www.env.go.jp/press/110443.html

マニュアルグラフは自社工場であるが故に、ソファの修理や張り替えを簡単にできます。しかし、大きなソファを工場に送りまた送り返す運賃がネックとなり、近隣のお客様以外のソファ修理に課題を抱えていました。ヨーロッパのように、ソファや家具を「直しながら使う」仕組みをどうやったら定着させられるか、それをデザインや仕組みで解決できないかと鈴木さんは長年悩んでいました。

マニュアルグラフとわざわざが一緒にソファを作るならば、そういった社会問題も解決しながら、長年愛されるしくみとゴミになりにくい仕様を作りましょう、ということになったのです。そして、設計を長野県安曇野市に拠点を持つ設計事務所のマイグラントさんにお願いし、三社共同のプロジェクトがスタートしました。

企画/わざわざ
製造/マニュアルグラフ
設計/マイグラント

静岡に何度も通って工場の技術を学びながらデザインを固めていきました。

長く愛されるものとは何なのか?

私達が作りたいものは「長く愛されるソファ」です。皆さんの生活に長く寄り添う飽きのこないソファを作ることが、最もソファをゴミに近づけないことなのでは?と考えました。

マニュアルグラフのショールーム

大きな方針はこの5つ。
1.組み立て・解体が簡単で、配送も簡単に。
愛されるソファと言ってもソファが要らなくなることもあるかもしれません。そんな時に簡単に解体できて、マニュアルグラフに返送して戻すしくみを作りました。
ソファの基本構造はこのようなブロック体でできており、誰でも簡単に組み立てができ、解体ができる仕組みになっています。

四角のブロックが基本構造。

2.ファブリックが飽きたら張り替えられるサービスを作る。
配送が簡単にできる構造を活かして、好みが変わった時に貼り生地を交換できるサービスを作ります。マニュアルグラフにある生地の中から好みの生地を選定して、張り替えるサービスです。

ソファの躯体

躯体の強度が抜群なので、生地を張り替えることで何度もソファを蘇らせることができるのです。業務用ソファに使われるSバネ構造は、かつては一般のソファに使われていましたが、近年はコスト削減のために使用されることが少なくなっています。マニュアルグラフでは座面の底を支える素材としては、耐久性、弾力性共に最適なSバネの使用にこだわってきました。業務用に特注した鉄製のSバネは長年使用しても劣化しません。

鈴木さんのnoteで詳しく書かれていますので、ぜひご覧いただけたら!

Sバネを使った構造

3.残反を利用して廃棄予定だったものを使いましょう。

最初にマニュアルグラフの工場に伺った時に見つけたのは、やはり残反の山。ソファを作るために仕入れた生地を全て使い切ることはできません。これを使い切るしくみを作るのは、わざわざの十八番です。生地管理の方法を一緒に見直して、静岡と長野で生地在庫を可視化するしくみを構築しました。

これは最初に作った提案資料の一部です。現地を視察して、工場の問題解決とユーザーニーズを同時に解決しながら、ものづくりをするのが、わざわざのオリジナル製品作りです。

一点一点を確認し使えそうな生地を選定しました

4.生産時にゴミが出にくい設計。

生産時にもゴミはできるだけ出したくない。構造体と外部に見える意匠木材を同じ木材にして、生産方法とカット方法をマイグラントとマニュアルグラフで考えていただきました。

そして、ご覧ください!このように殆ど一枚の合板で全ての木部を余さず作る設計になったのです。この様子をみた時は感動しました。

カットして組み立てるとこんな風に一つのブロックができます。このブロック体がソファの基本構造となっており、様々なブロックを組み合わせることで可変性のある、生活や家族の形に合わせたソファを選ぶことができるようになるのです。

嬉しくなって座ってしまいました...

通常のソファ作りだと沢山の廃材が出ます。木材ですから産業廃棄物になるわけではありませんが、燃やす工程を減らすことでCO2の排出を削減したソファを作ることができるのです。製造工程も環境を労る構造を構築しました。

通常のソファ作りだとこのように廃材が出ます

5.ライフプランに合わせた可変的なソファ選びができる

上記のような製造やしくみにこだわりをもちながらも、長く愛されるソファにするには、ライフプランに添ったものでなければなりません。私達は、ユーザーの成長と共にソファを成長させられるデザインを考えました。

基本となる一人がけ

基本となる一人がけソファを中心に、オットマン、L字型パーツ、テーブル、クッションなど如何様にも組み合わせができるソファです。全て余った生地で作っていますので、全てが一点ものとなっています。まだ全ての布の組み合わせのものが完成しておらず、一つのデザインだけですがご覧いただけたら。一人がけソファにしてはゆとりのあるサイズ感にしました。

深く腰掛けても、、

浅く腰掛けても様になります。様々な体型の方を包み込む優しいデザインです。

組み合わせはこんな感じに。家のサイズや利用するシーンによって組み合わせは無限大です。

そして、私達はこのソファを継ぐという願いを込めて、ソファを「TSUGU」と名付けました!次世代にも継ぐことのできるようなソファ、家業を継いだ鈴木さん、ゴミも出さず残反も余さず繋ぎ、様々な思いを込めました。

「TSUGU」ソファ展示販売会を行います!

全てのラインナップをただいま生産中です。どのような全体像になるかはもう少しだけお待ちください。実は12/1(木)から12/5(月)までの間、長野県東御市の問touでイベントを開催します!こちらのソファの初のお披露目機会となり、展示販売を行います。皆さまのご来場を心よりお待ちしております。

(わざわざ展)
期間:2022/12/1(木)ー2022/12/5(月) 10:00-17:00 
場所:問tou 長野県東御市八重原1807-1 芸術むら公園内

(マニュアルグラフ展)
期間:2023/1/28(土)、29(日)
場所:マニュアルグラフショップ 静岡県裾野市茶畑544

文責>平田はる香 写真>若菜紘之

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