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Turnout「映画が開く、タゴール・ソングの100年」(3)タゴールの”聖地”巡礼①長野・埼玉編

[画像]長野県軽井沢町にあるタゴール記念像。(出典:軽井沢観光スポット 軽井沢の四季ホームページ「軽井沢 碓氷峠 見晴台 新緑:タゴール記念像」https://xn--kdw.jp/miharashidai/20160529a/p_10.html
(Accesed October 10, 2020))

 映画『タゴール・ソングス』の世界にまつわる記事をお届けする、Turnout「映画が開く、タゴール・ソングの100年」。2回目の記事でタゴールの人物像をご紹介する記事でも触れている通り、彼は生涯に5回も日本を訪ねています。今回は、そんなタゴールが実際に訪れた日本のゆかりのある場所をご紹介させていただきます。

 映画『タゴール・ソングス』をこれからご覧になる方も、まだ余韻に浸りたい方も、新たな発見が待っているかもしれません。芸術の秋に、100年前のノーベル賞作家の足跡にしばし想いを馳せてみましょう。
 お出かけの際は、どうぞ"ステイセーフ"で感染症対策実施の上お楽しみください!

◆聖地① 軽井沢で紡いだ平安への願い―長野県軽井沢町タゴール記念像

 保養地として名高い軽井沢には、数多くの文学者がその足跡を残しています。その中に、生誕120年を記念して建てられたタゴール記念像があります。

 生前タゴールと親交の深かった参議院議員高良(こうら)とみ等が、タゴールの生誕120周年に詩聖タゴール像設立委員会を設立し、建立されました。彫刻を手掛けた高田博厚は、思索を神へ至る道と捉え、彫刻が直接的に自我と対話し、奥に潜む神に至る方法と考えた、日本有数の彫刻家でした。

 軽井沢は講演で訪れた日本女子大学の大学寮・三泉寮があり、東京の成瀬記念講堂での講演の後、女子学生らに瞑想の教えを説いていたそうです。 
 当時の『ギータンジャリ』の朗読は、真珠のような詩を読んで聞かせたワンシーンとして伝えられています。祈りの講話や瞑想の指導は、当時の女子学生たちの心にどのように響いていたのでしょうか。

[リンク]日本女子大学「写真で見る日本女子大学の110年」。大正期の写真25,26にタゴールが登場する。
 (Accesed October 10, 2020))

 タゴール像の裏には「人類不戦」という平和への願いが刻まれています。インド哲学者として名高い中村元の揮毫によるこの四字は、タゴールが計3回行った軽井沢講演の最後の回での内容に由来しています。彼は、「自己中心の文明は隣の国を焼き尽くす武器を発明するようになる。くれぐれも『人類は戦わず』を守るべきだ。」という趣旨の言葉を残したと伝えられています。

 日本人には後の原爆投下すら連想させる意味深な言葉でもある一方、タゴールが訪日を重ねるごとに中国への軍事的干渉を強める日本を批判するようになっていたことも思い起こさせます。想いを寄せていたはずの日本の帝国主義的歩みは、彼の理想と相容れないものでした。


 当時タゴールが教えを垂れた大樅からは離れてしまっていますが、今は浅間山の絶景がタゴールと訪れる人々のつながりを優しく見守っています。

【現地へのご案内】

[リンク]軽井沢町「タゴール記念像」(Accesed October 10, 2020)


◆聖地② もう一つのタゴール像―埼玉県東松山市・高坂彫刻プロムナード

 軽井沢だけでなく、実は埼玉県にもタゴール像が存在します。しかも同じ作家による作品で、そこにはさらに31体もの個性豊かな彫像が一緒に常設展示されています。

 埼玉県東松山市は、1980年に個展を開催したことがきっかけで高田博厚との絆が芽生えました。その絆が実を結んだのが、彼の彫像32点が並ぶ高坂(たかさか)彫像プロムナードです。

 彫像は様々なポーズのトルソ、パリで親交を交わしたロマン・ロランなど人生の中で出会った実在の人物の彫像からなります。彼の彫刻の技量を認めていた高村光太郎など、今もその名が語り継がれる文化人の彫像も含まれています。

 彫像一つひとつには高田の言葉が添えられています。タゴール像にはこんな言葉が刻まれています。

 タゴールの絵-それはお伽話と詩と神秘とが一つになっている「たのしみ」である―に彼の精神風土、詩魂、思想の原形質があると、私は思うのである。タゴールの思想形体は難しいものではないのだ。彼の本質はひじょうに単純素朴なのである。彼の絵がよくそれを示しているだろう。
(出典:東松山市「⑭タゴール」高坂彫刻プロムナード~高田博厚彫刻群
(Accesed October 10, 2020)※太字は、道しるべスタッフによる)

 文芸に飽き足らず、タゴールは絵画まで描いていました。映画の登場人物たちが口々に彼の思想を完全に理解するのは難しいという彼の本質を、高田は絵画に見出したようです。

[リンク]ベンガルのうた・内山眞理子「タゴール生誕150年 タゴールの絵」(Accesed October 10, 2020)

 
 彼の彫像があまり本人に似ていないと批判されたこともあるようで、そうした声に彼は次のように反論しています。

 私の人物像は「似ていない」とよく言われる。ある一時の面しか見ていない者はそう思う。当然だろう。けれども、本当の肖像彫刻というものは、(私が考えているところでは)「人間」の容貌にそれが経てきた「時間」の層、その厚みが出なかったら意味を失うだろう。
(出典:東松山市「⑱新渡戸稲造」高坂彫刻プロムナード~高田博厚彫刻群
(Accesed October 10, 2020)※太字は、道しるべスタッフによる)

 
 親交の深かったロマン・ロランに「君は指で思索する」と言わしめた、高田博厚。彼の彫像の裏には、こうした製作対象との心の奥底の対話が隠れています。彫像たちとの対話が、思いがけない自分との出会いを気づかせてくれるかもしれません。

【現地へのご案内】

[リンク]東松山市「高坂彫刻プロムナード~高田博厚彫刻群~とは?」(Accesed October 10, 2020)

【参考文献】
・丹羽京子『タゴール■人と思想119』清水書院(2011年)
・軽井沢舎『軽井沢ニュース第148号(2015年12月18日)』
https://karuizawa-news.org/bknum/151218-148.pdf
 (Accesed October 10, 2020)

【映画公式HP】
10月11日(土)から、群馬県高崎市のシネマテークたかさき、新潟市民映画館シネ・ウィンドで上映開始です!


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https://twitter.com/tagore_songs?s=20


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