見出し画像

【小説ワンシーン集】ほうき星の魔女と妖魔の王子③

 小説のワンシーンだけ思いついたものを執筆しました。作品として完成させるかは未定です

「夜子さん、あなたは何者なの? 妖魔人の王子はあなたを知っているようだったわ」
 青木は魔法銃を夜子に向ける。教師として本当ならば生徒に銃を向けたくなかった。
「艦長先生、さっしの通り、私は地球人ではなく妖魔人です。妖魔の国での政治闘争に敗北した私は、地球に逃げてきました。地球の暦でいうと15世紀頃のことです」
「15世紀!? あなたはまだ子供でしょう」
「妖魔人の中で高い魔力を持つものは年を取らないんですよ。ともかく、地球で生活するうちに私はそこを愛するようになりました。同時に不安も覚えました。もしも妖魔の国が地球を見つければ、確実に欲しくなって侵略するだろうと」

 実際、その通りだ。地球の場所を知った妖魔人達は今まさに侵略しようとしている。

「私は地球を守ると決意しました。でも私だけでは妖魔の国には勝てない。まずは弟子を育てようとしましたけど、文明が未発達だった当時の地球人たちにとって、激しい拒絶反応が起きてしまいました」
「15世紀と言えば、魔女狩りが激しかった時代……」
「多くの弟子たちが疑心暗鬼に駆られた者たちに殺されるだけでなく、全く無関係な人々すら犠牲になった。私は地球人が自力で魔力と魔法を発見するまで文明の発達を待つことにしたのです」
「そして魔法が普及した今の時代であなたは再び弟子を探し始めた。それが赤木さんね?」

 夜子は頷く。

「ええそうです。鳩美の側にいるために、私は身分を偽ってほうき星魔女学院に入学しました」
「その割には鳩美と同じ科ではないのね」
「装備科のほうが都合が良かったのです。鳩美の成長を促す装備を渡しても疑われませんから」
「まさか、ジャケット・システム?」

 思えばジャケット・システムを使うようになってから、鳩美は劇的に成長していたと青木は思い至る。

「そうです。私が今まで作ってきたジャケットにはそれぞれ異なる魔法的な因子が組み込まれています。ジャケット・システムを使う事が、私の後継者として成長するための魔法的な儀式だったのです。その仕上げが、コンプリート・ジャケットです。あれは今までのジャケットの機能を全て兼ね備えた完成形であると同時に、鳩美を完成させるための最後の因子なのです」

関連記事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?