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宮崎県の掛けの魚

宮崎県では、戦前まで多くの漁村で行われていた掛けの魚(いお)という正月行事があった。

かけ【懸】 の 魚(うお・いお)
① 漁から帰って氏神やえびす神に供える魚。かけざかな。
② 正月につるしておいて、少しずつ切り取って食う塩引の魚。また、九州地方ではそれをつるしておく幸木(さいわいぎ)をいう。
かけ‐の‐うお〔‐うを〕【懸(け)の魚】1 漁がうまくいったお礼として漁師が神に供える魚。かけざかな。かけのいお。2 正月の飾り物として幸い木につるす魚。かけのいお。《季 新年》

この「掛けのイヨ」、漁師町久礼の独特の文化らしく、新年を迎えるに当たり年内の大安などお日柄の良い日に来年の縁起担ぎで、神棚などの近くに飾るんです。特に漁師さんにとっては、しめ縄以上に大事で欠かせないお正月アイテムなのだとか。


「掛魚 民俗 正月」を国会図書館デジタルコレクションで検索すると391件がヒットする。その中から『歳時習俗語彙』を紹介する。


宮崎県延岡市島野浦の正月行事を調査した際に、ある漁師さんのご自宅で掛けの魚を見つけたが、撮影が中心だったので、細かい話を聞いていなかった。

その後、同じ飾りを船に移動させていたようである。

島野浦の掛けの魚については、泉房子が紹介している。

大晦日 網元の家では、懸ケノ魚をした。ここには大玉サマ(エビス)という漁の神が祀ってあり、その前に背丈より高い松を立て、ユズリハ、ウラジロなどを飾る。この松の枝に懸ケノ魚を懸ける。この懸ケノ魚は、正月二日の乗り初メの時、枝からおろし、海中に投げこんで初釣りをする。

『離島調査補酷暑(二) 研究資料第七集』宮崎県総合博物館

南九州では、おばん竿、おおばん竿、おうばん竿などと呼ばれる正月の飾りがあり、その一つに魚を掛けることが行われていた。

以下は、宮崎市の青島で、行われていたおばん竿を再現していただき、宮崎県総合博物館に展示した。その調査の際の写真を下記に掲載しておく。

中央に下げられているのはサワラ。


宮崎県総合博物館の展示


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