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どんな分野でも情熱を持ってる人は魅力的。サイエントーク レン さん

いつかさんのnoteをtwitterで投稿した際に反応してくださったサイエントークのレンさんにインタビューさせていただきました。

企業の研究者として働きながらPodcastで科学の魅力を伝える番組「サイエントーク」を発信しているれんさん。
もともとPodcastのリスナーで、自分も番組を持ちたいなと思ったことがきっかけだそう。
情熱を持てないのではなく情熱をもてるものにまだ出会っていないだけ。色んなコンテンツに触れ、出会いのチャンスを広げてほしいとのことでした。
思考が変われば運命が変わる。常にまわりにアンテナをはっていきたいと感じました。


企業の研究職として働きながら、Podcastで科学の魅力を伝える番組「サイエントーク」を発信

ー今、どんな活動をされていますか?

レンさん:私はもともと有機化学、生命科学の分野で博士課程まで修了しました。今は企業の研究職として働いています。

研究職とは別で、科学の魅力を会話で伝えたいと思い、Podcastで科学を面白くエンタメっぽく話すサイエントークという番組を発信しています。PodcastはSpotifyや、YouTubeiPhoneのApple podcast等、色んなアプリで聞ける音声メディア、ラジオ番組のようなものです。

科学の情報を発信するメディアはたくさんありますよね。サイエントークは、研究者の僕と、僕の婚約者でありOLのエマさんの視点から、科学について生活に繋がってることも含めて話すのが特色です。

サイエントークでの過去の配信の一部

ー婚約者さんなんですね。番組を聞かせていただいて、おふたりはとても近しい関係なのかな、めっちゃいいよなと思っていました。

レンさん:例えば、アポトーシスという現象があります。科学的に話すと、プログラム化された細胞死です、こういう経路があります、という科学的な事も詳細に話しつつ、僕たちの番組ではそれで終わりにしません。

アポトーシスって言葉は、ギリシャ語由来で細胞が離れて落ちるっていう意味なんですが、例えばofficial髭男dismのアポトーシスって曲は、アポトーシスの科学的な意味とかけてるんじゃないかとか、この現象を人間社会で例えたら、離れてからこの世を去るのって悲しいよねとか、そんな視点で楽しく喋っています。

レンさんのpodcastの収録環境

婚約者のOLエマさんが相方。科学の話+プライベートな関係性の話、二重で楽しめる番組

ーおもしろいですね〜。番組をスタートさせたきっかけは何だったのでしょうか?

レンさん:僕はもともとPodcastのリスナーでした。通勤通学の時等にラジオっぽく流し聞きで時間を有効活用できるなと思っていました。Podcastで既に研究者同士で話してる人は別にいたんです。単純にそこに混じって一緒に話したいな、自分だったらどうするだろうなと思ったのが番組をスタートさせたきっかけのひとつです。

今は企業の研究者ですが、大学でやるような科学教育に興味がなかったわけではなく、自分でいろんな形でできないかな、と考えていました。そこにPodcastがマッチしそうだな、と感じました。

ーやろうと決めてからすぐ発信したんですか?

レンさん:そうですね。始める時に、僕がひとり語りで話すだけだとあんまり広くは伝わっていかないだろうなと思いました。科学について詳しい人と、そこまで詳しくない人の会話形式がベストだなと思っていました。リスナーにとっても、自分が聞きたいことを代わりに聞いてくれる聞き手の存在は重要だなと思っています。それもあってエマさんに相方として参加してもらいました。

ーちなみに、エマさんとは番組を始められた当初から婚約者だったんですか?

レンさん:最初は違いました。リスナーさんの中には、科学の話プラス僕らの関係性や、雑談が面白いと感じて聞いてくださってる方も多いみたいです。番組を始めた当初はそんな声をいただけると思っていませんでしたね。

最近は科学の歴史を最初からなるべく全部話していくコンテンツを作っているんですが、聴くだけで一貫して学べる科学史コンテンツってあまりないんです。それまでは科学の事を一話完結で話をしてきたんですが、婚約するのをきっかけに、僕と相方の人生の記録と科学史を重ね合わせてみたら面白いんじゃないかと思い、シーズン2として科学史編を今、やっています。

ーいいですね〜!プライベートが織り交ざるのが僕は好きです!

レンさん:科学の話とプライベートな話は切り分けているので、科学の話を聞きたい人はそちらだけ聞いてもらえるという形にしています。二重で楽しめたらいいかなと思いますね。

ものづくりが好きな子どもだった。科学を勉強したらこの世のもの全部作れるんじゃないかとの発想で科学に興味を持つ

ーちなみに子どもの頃の話をお聞かせください。科学好きになるきっかけはありましたか?

レンさん:子どもの頃は、サッカーばかりしてました。そして、ものづくりがすごく好きでした。科学の雑誌についてくる付録を作ったり、授業では図工が好きでしたね。

高校生くらいで進路のことを考える時、ものづくりができたら面白いよね、と思いました。ある日化学を勉強していたら、「原子や分子について勉強したら、この世のもの全部作れるんじゃないか」と思いました(笑)。そういうシンプルな発想で科学に興味を持ちました。

生配信でリスナーと交流しているときの様子

配信活動から一年。モチベーションの源泉は、5000人のリスナーの声。

ー企業の研究職以外に、番組を持たれていて、お忙しくないですか?

レンさん:平日は本業の勉強を終わらせてからPodcastの情報収集をして、週末に録音収録しています。番組を30分くらい収録するのに何冊か本や論文を読んだりしますし、準備に一番時間がかかっています。めちゃくちゃ時間かかるんですが、時間は気合で作っています(笑)。

ーモチベーションの源泉はなんでしょうか。

レンさん:楽しいですよね。感想のツイートや、お便りフォームにメッセージをいつも頂いていて、リスナーからの声はすごくモチベーションが上がります。
これはPodcastの特徴だと思いますが、サイエントークは9割くらい最後まで聞かれています。YouTubeやブログは最後まで見てくれる人が多くて半分くらいかなと思っています。最初の1ヶ月はフォローしてくれる人は10人くらいでしたが、今1年経って、5000人近くまで増えてきています。

大変だった留学経験が今、活きている。研究は、人と人とのコミュニケーション。会話が大事。

ー前に出る事が苦手な方もいらっしゃる中で、発信者になったのはなぜでしょうか。

レンさん:僕自身大学の研究室にいる時から議論することが好きで、自分がしてる議論を第三者が聞いたら、もしかしたら価値があるかもしれないなと思ったことがありました。研究室では、先輩後輩関係なく研究の話をします。自分がやってる以外の研究の話とかもしていて、それが今、podcastで話していることに繋がっていると思います。
古代ギリシャの時代から、科学が花開く時って、議論が出来ることと、時間があることかなと僕は思っています。研究は人と人のコミュニケーションがあって進むものじゃないですか。会話をとても大事にしています。

ー配信活動で大変なことはありますか?

レンさん:配信活動で大変だったこと...強いて言うなら準備に時間がかかることですかね。ただいつも楽しくやっています。

今までで大変だった事と言えば、博士課程在籍中アメリカに留学したことです。
日本人が全然いない環境で、自分の実験技術だけで修行するのは大変でしたね。

ー大変だった留学経験が今に活きてることってありますか?

レンさん:やはり会話ですね。留学中は、教授や一緒に研究してる人と毎日ディスカッションしてました。何でも聞いて、自分で考えて研究テーマの中身を詰めていきました。他には友達とハイキングに行って、水がなくなって死にかけたり...いろいろ刺激的なことがありました(笑)。大学にいるうちに外部に身を置いて修行みたいなことはしたいなと思っていました。僕にとって留学経験はすごくよかったです。

あらゆる分野の研究者を招いて対談する「サイエンマニア」という姉妹番組においても、企業研究者としても、今まで色んな人と会話して習得してきた生きたコミュニケーションがすごく活きているなと感じています。

留学中の研究室での写真

普通に研究してるだけだとなかなか聞けない話。バックグラウンドの違う人との出会いが面白い

ー印象に残ってる人やその共通点はありますか?

レンさん:バックグラウンドが全く被ってない人との話は印象的ですね。

配信の活動の中で、朝日新聞ポッドキャストの企画でお話させていただいたことがありました。新聞記者の方って例えば内戦が起きてる地域に駐在した経験があったり、研究者とは全くバックグラウンドが違いますよね。
普通に研究職してるだけだったら聞けない話や人との出会いが面白いです。
逆からしても、僕らみたいな一般人の会話がすごく興味深いと言ってくださるんですよね。日常に無い出会いはありがたいなと思いました。

科学に関係ない趣味の話をしてる人とかも、Podcastやってるというだけで仲間意識があります。番組同士のコラボになったり、バックグラウンドは違うけど、やってみるとおもしろい出会いもあります。

ーエマさんとレンさんのバックグラウンドは全く違うんですか?

レンさん:エマさんと僕は仕事は違いますが、バックグラウンドは理系で、研究室に入っていたこともあるので、ある種似ていると思います。配信するにあたっては、ある程度は理解してくれていないと深いところまで話に入っていけないので、最低限のバッググラウンドがあるからこそ「いいツッコミ」をしてくれてるなというのがあります。功を奏してますね(笑)。

科学の枠に収まらず、色んな人と関わり異分野の目線を取り入れる。
面白い研究者を発掘できる場づくりと、研究者を目指す若者を増やしたい。

ー僕も、こうして研究者の方々とお会いしてお話を聞くのが面白いです。逆に、研究者の方からは、違った道を聞けることが面白いと言ってくださる。異分野で交わるのはめちゃめちゃいいんだろうなと思います。
イノベーションが起きる時って、全然違う視点の人が入ってきてやっていく時だと思います。

レンさん:単なる科学コンテンツの枠に収まっていたくないんです。サイエンスコミュニケーションみたいな形で科学の面白さを伝えたい方はたくさんいると思いますが、その中で研究者の目線も研究者以外の目線もどんどん取り入れていきたい気持ちがすごくあります。

意外な反応をもらえたりすると気づきがありますね。今はいろんな人と関わって行きたいなと思います。
人と直接話すのが一番自分の中では印象に残ります。本で読むのとはまた密度が違いますよね。

ー科学の枠に収まりたくない。というお話も出ました。これからどこを目指しておられますか?

レンさん:今、僕がやっている配信活動は一歩目で、土台作りだと思っています。
まずは聞いてるだけで偶然面白い人に出会った、面白い話に出会ったという機会をつくりたい。雑談聞いてたはずが論文の話も出てきて、「ああ、そういうのもあるんだ」って興味を持つことって大事だと思っています。

Podcastの番組自体を、面白い人や話題が集まってくる場所にしたいです。
いずれは科学系の編集者的なことをしたいと思っています。研究をやっている面白い人を発掘できるような場所を作る、というイメージです。

大学のプレスリリース・論文やその背景には、おもしろいトピックがいくらでもあります。それを材料にして上手く料理するような科学系の通訳、上手く編集して伝える人がもっともっと必要だと思っています。

例えば、新しい素材を作る化学合成の背景って、何かをフラスコの中で混ぜて作る時、スターラーチップという磁石でかき混ぜるんですが、そういう道具があることを普通の人はあまり知らないです。こういう道具で攪拌すること自体がおもしろいし、攪拌にもいろいろ歴史があったり、なぜテフロンのラグビーボールみたいな形になってるんだ?とか、深堀したら面白い話っていくらでもあるんですよ。

みんなが見てるのが月の表面だとしたら、その月の裏側のような話をしたいですね。
面白いし、価値になっていけばいいなと思ってやっています。

そのために、今は楽しく伝えるスキルを鍛えることが必要で、それもPodcastをやってるモチベーションかもしれません。長期的な話ですが、僕のやってる番組を聞いて研究者を目指しました、という若い人が増えていったら嬉しいですね。

ーレンさんの中で今、何%で達成できてるんですか?

レンさん:5パーセントくらいじゃないですかね(笑)。いろいろやりたいことがあるんですけど、活動を知ってもらうことがすごく大変です。まずはそこからですね。

情熱を持てるものにまだ出会っていないだけ。色んなコンテンツに触れ、出会いのチャンスを広げる

ー最後に、若手研究者に一言お願いします。

レンさん:大学の研究室も見て、企業での研究も見て思うのは、情熱持ってやってる人ってどこにいっても魅力があります。
自分がやってる研究を極めるのも一つだし、そこから一歩踏み出してみるっていうのもすごくいいなと思っています。
全然違う分野の人と話すと、自分のやってたことってこんな価値があったんだなって気づくことがあります。

僕自身、学生団体の人とコラボしたり、大学院生にゲストとして出てもらったり、発信したい人に場所を提供したいなと思っています。情熱を持って話してるのは面白いし、今後役に立ちます。一緒に頑張りましょう!って感じですね。

ー一歩踏み出せない方、情熱を持てない方はどうしたらいいですか?

レンさん:この世のいろんな物事を全部見て、何かに情熱を持てない人はいないんじゃないか、まだ出会ってないことがほとんどじゃないかなと思います。そういう意味でPodcastじゃなくても本でも何でも、いろんなコンテンツに触れることがいいんじゃないかなと思います。インタビュー記事もひとつの出会いかもしれません。

大学でたまたま入った研究室で、たまたまマッチして、そのまま第一線で研究者になっていくって人いますよね。マッチングなんだろうなと思います。

ー以前インタビューさせていただいた小野田先生も、たまたま聞いたオムニバスの30分授業がきっかけで助教になっておられます。偶然の出会いと情熱をいかにたくさん見つけるか。その時期がたまたま早かったのかなと思います。

れんさん:僕も番組でよく出会います。
釣り針につける餌のミミズがきっかけでものすごくハマってミミズの研究してる人もいるんですよね。そんな出会いがあるんだと思って(笑)。面白いなと思います。


先輩研究者の皆様の悩んだこと、どうやって乗り越えたか、成功の裏側などをどんどん発信していきます。
次回もお楽しみにしていてください。


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