じいちゃんの左手　その45

学校から帰ってくると　
縁側には　いつも　群青色の市場帽子を斜にかぶった　じいちゃんがいた　
右手にワンカップ　左手には　“わかば”　
田んぼの案山子のように　僕の問いに　何でも答えてくれた　じいちゃん
今思えば　ほとんど　的外れだったけど　心は　いつもポッカポカ
そんなじいちゃんと　あの縁側が　今もあったら・・・　
きっとこんな　会話になっただろう・・・

『WC』

家のトイレが洋式になった！
新しいトイレの扉には・・・？　WCってプレートが付いてる
”トイレ”って　英語のはずなのに　なんでWC何だろう

うれしいのと　
自慢ついでに　学校の先生に質問したら
ウォータークローゼットって言うんだって
早速帰って　じいちゃんに質問した

「ねぇ　じいちゃん！　なんでトイレをWCって言うか知ってる？」

「しっ・・・知っとるよ～
　確かぁ・・・　ウォ・・・ウォ・・・　うーん　ちょっと度忘れした！」

「さすが　じいちゃん！
　そうなんだ！　ウォータークローゼットて言うんだって」

Pufaaaaaaaaaaaaa
と煙を吐く　じいちゃん　
となりに腰掛けながら  ごほっ・・・　と咳き込む僕
・・・
ウォシュレットだと思った・・・（じいちゃん　心の聲）

「そうだ！　Hiro坊　
　まだトイレで　大工が仕事してるから呼んできてくれ！」

じいちゃんに言われて　大工の棟梁を呼んでくると
早速　ワンカップで宴会が始まった
するとじいちゃん
おもむろに棟梁に質問した

「おい！　大工！　トイレがWCなのか知っとるか！」

「そりゃ　お前・・・
　Wは　ウーマンだろう　Cは・・・　チェアマンじゃないか」

Gahaha！
「大工が知らんで　なんでうちのトイレに　付けたんだ！
　WCって言うのはなぁ・・・」
胸を張るじいちゃん

「んー・・・　なんだっけ」
話し込んでて　また忘れちゃった　じいちゃん
暫く　腕組みした後　言った

「そうだ！　ウォークインクローゼットだ！」
全然違うよ！

「そうだったのか！」
勉強になったよと棟梁

だめですよ！
大工さんが間違えたら　洋服しまう場所がトイレになっちゃう！

でも・・・
みんな酔っ払ってるから　まぁいいか！