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じいちゃんの左手 その44

学校から帰ってくると 
縁側には いつも 群青色の市場帽子を斜にかぶった じいちゃんがいた 
右手にワンカップ 左手には “わかば” 
田んぼの案山子のように 僕の問いに 何でも答えてくれた じいちゃん
今思えば ほとんど 的外れだったけど 心は いつもポッカポカ
そんなじいちゃんと あの縁側が 今もあったら・・・ 
きっとこんな 会話になっただろう・・・

『お札』

「じいちゃん! 今年お札が変わるって知ってた?」
お年玉を期待して お札の話題で切り込む僕!

「もちろんさ! 一万円札が 渋沢栄一で 
 五千円札が津田梅子 千円札が 北里柴三郎だろう」

「さ~す~が~ じいちゃん! やっぱり物知りだね!」
いつもより ちょっとだけ オーバーアクション!

「今年3月末までに 45億3000枚印刷される
 2004年以来の変更だから20年ぶりじゃな
 それに 今度のお札は 傾けてみると ポリグラフ技術で
 透かしが 立体に見えるんじゃ!」 
※ ホログラムですね・・・ ポリグラフは うそ発見器です(神の声)

今年のじいちゃん ホントに すごい!
お年玉のことも忘れて 目を丸くする僕 
と思ったら・・・
じいちゃん やけに 座布団を気にしてる

!! 
あれっ・・・
座布団の隙間から見えるのは 新聞紙!!

あぁ~ 
だから 今日は老眼鏡かけてたのか! 
納得した僕は 改めて じいちゃんの前に両手を出した

「しかし お札と言えば やっぱり 聖徳太子じゃな」

そっ・・・そうなの・・・

「そうとも! 昔は 1万円札と五千円札 両方とも聖徳太子じゃった!
 なんか 重みがあって今より ずっと高級な感じがしたなぁ」

そんなに すごかったのか 聖徳太子のお札って・・・
想像しようとする僕・・・  と そのとき閃いた

「そう言えば じいちゃん!
 誕生日に 聖徳太子のことで 何か言いかけたよね」

Pufaaaaaaaaaaaaa と 
大きく 煙を吐きながら 
差し出した僕の両手と顔を交互に見た じいちゃん

”そうだ!”と一言!
おもむろに 冷蔵庫に向かって走り出した

「まだ ケーキが残ってるんだ! 小僧のお主にやろうと思ってな!
 これぞ ショート 喰う 太子 じゃ!」

Gahahaと 笑うじいちゃん・・・ もしかして・・・
年越しまで引っ張ったの ダジャレだったの・・・

まぁいいか! 
うれしくて 僕もじいちゃんの後を追った
でも待って! じいちゃん 冷蔵庫に入っているとはいえ
二週間前のショートケーキって 大丈夫だよね・・・


あけまして おめでとうございます
今年も のんびりライフの じいちゃんと僕 よろしくお願いします<(_ _)>

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