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忙しいビジネスパーソン向けに、中学生でもわかるように「リスキリング」についてまとめてみた

この記事を読んで得られるメリット

「『リスキリング』をざっくり説明できる程度の知識を得られ、経営者やビジネスパーソンはどう行動すれば良いかがおおむね理解できる」

DX(デジタルによる生活やビジネスのより良い変容・変化)時代に対応するために、新たなスキルを習得する「リスキリング」という言葉が日本でも少しずつ広まってきました。

海外ではかなり前から浸透している言葉でした。日本では「個人のリスキリング支援に5年で1兆円を投入する」と発表した岸田総理大臣の所信表明演説により、初めて聴いたという人も多いかと思います。

「聞き慣れない言葉だ」と敬遠するのはオススメできません。時代の変化に対応するのは世の常です。あれだけガラケーにこだわっていた高齢者も、今やほぼスマホを扱っています。それと一緒で、いずれはスタンダードになっていくでしょう。

ただ、現状、有識者ですら「リカレント教育」や「学び直し」などと区別出来ていない人が多いのが実情です。

例えば、営業コンサルタントの横山信弘氏は自身のコラムの中で、「リスキリング(学び直し)すべきは、基礎的なビジネススキルである」と明らか(意図的?)に「ポータブルスキル」(業種・職種問わず使える職務遂行上のスキル)と混同しています。

また、リスキリングを先導する立場である「リクルートワークス研究所」(㈱リクルートHD内の研究機関)ですら、HP内で「リスキング」と堂々と書き間違えている状態です。

(上記画像はリクルートワークス研究所HPより)

個人的には、「リスキリング」はそもそも声に出して読みづらいので、啓発のために早々に「愛称化」した方が良いと考えています。例えば「ジャイキリ」ならぬ「リスキリ」なんていかがでしょうか。

 

人類は「リスキリング」を繰り返してきた

国内では道半ばの「リスキリング」。では、我々は具体的にどのように行動すればよいのでしょうか。

難しく考える必要はありません。我々人類は昔から「リスキリング」を繰り返してきました。

使う道具が激変し、有効時間が増え、その分だけ新たなシステムやサービスが生まれ、より豊かになっていく。太古の昔なら石器→青銅器→鉄器、産業革命時なら馬車→蒸気機関車のように。ここ10年ならパソコン→スマホでしょうか。そして今、まさに使う道具の変化(DX化)が起こり、我々はそれに対応するタイミングになっている、ということです。

 

担い手は「企業」。目的は「生き残る」

「リスキリング」は、何も個人が全て自己責任で行うわけではありません。主体は国や企業です。それが「リカレント教育」や「学び直し」との明確な違いです。啓発役は国、担い手は企業となります。

リスキリング導入を支援する「ジャパン・リスキリング・イニシアチブ」の代表理事・後藤宗明氏はオンラインニュースサイト「NewsPicks」の記事の中で、リスキリングの意義についてこう語っています。

「硬直した経営者の意識を変えることにあります。変化がこれだけ激しい時代です。多くの企業がリスキリングを推進しなければ、会社も社員も次の時代を生き残れないと危惧しています」

古くは石炭から石油へのエネルギー革命に対応できなかった石炭業が軒並み衰退したように。「フィルムの巨人」と呼ばれたあの米コダックですら、いち早くデジタル化に着手しながらも、既存のフィルム事業に拘泥し、倒産の憂き目を見ました。

国や企業は、時代の流れに対応し、企業を存続・成長させ、雇用を守るために成長事業を作り、そこに労働者を移動していく必要があります。

「リスキリング」に潜む「リスク」

そのために、担い手である企業は、DX化を見据えたビジョン・ミッションの策定と、それに対応する教育制度を構築する必要があります。リスキリングは業種・職種によって必須とは言えませんが、エンゲージメント(従業員の企業への愛着心)を考慮すれば、基本は全員参加が望ましいでしょう。

リスキリングがどれだけ達成されたかの評価制度の策定も必要です。それは昇給・昇格制度と対になっていないといけません。せっかく作ったリスキリング制度が、単に使い勝手の良い安い労働力を増やすだけになっていては、人材流出を招くだけです。

採用コンサルの立場から付言すると、DX人材を外部から採用するよりも、既存社員を少しずつリスキリングする方が低コストですし、文化の醸成の面でも大きくプラスです。もう少し踏み込みますと、上記諸制度を他社に先駆けて構築した企業は、採用面で大きくリードすることができます。

 

キャリアアップ的には絶好機

ここまではいわゆる「お上」の話。現場の主人公である働き手はどんな心構えでいればいいでしょうか。

DX化の波が止まることがない以上、リスキリングは必ず武器になります。早く習熟すればするほど、成長分野で働ける可能性が広がります。社内外で引く手数多になるでしょう。しかも、それを国が補助してくれる。ノーリスクで「ファーストペンギン」になれる好機ですから、乗らない手はありません。

ただ、コミュニケーション力やマネジメント力などのポータブルスキルを蔑ろにしてはいけません。スキルアップだけではいずれ頭打ちになります。

キャリアコンサルの立場から言えば、単に市場に対応したスキルを磨くよりも、リスキリングされた優秀人材を統括する役職者になる方がキャリア形成の面では望ましいと考えます。リスキリングは次のキャリアへの可能性を大いに広げますが、キャリアアップの万能薬ではないのです。

まとめますと、働き手は今回のリスキリングの波を奇貨と捉え、大いに利用して市場価値を高める努力を継続する。企業は、そんな働き手の努力に報いるべく、新規事業や評価・報酬・昇格体制を構築していく。

その両輪がうまく機能して、日本に再び活気が戻ることを期待します。


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