引きこもりお父さんと出たがりお母さんを見て色々と考えることがある。
私のお父さんはうつ病で引きこもりだ。
若い頃から、それこそ馬車馬のごとく働いていた。
記憶にあるお父さんは、朝から朝まで働いてクタクタになってるお父さんばかり。
今考えると私が学生の頃が一番大変だったように思う。
残業続きで家に帰れず、会社の駐車場に停めた車の中で寝袋を使って仮眠していた。
たまに顔を合わせると人が変わっていた。
明らかに別人のような顔つきで、まともに会話ができる状態ではなかった。
優しかったお父さんはいなくなっていた。
社会人になって、私は家を出た。
それからもお父さんは変わらず働き続けた。
働いて働いて働いて働いて。
働きまくった結果、心が壊れた。
いろんな要因が重なって、過労が直接の原因じゃないかも知れない。
それでも、家族と会社のために働き続けたお父さんは元に戻れなくなっていた。
定年間近に休職をして、少し復帰できたけど再雇用は希望せずに社会人としての生活を卒業した。
そしてそのまま。
社会に関わることがないまま、まだ若いのに枯れ枝のようになって日々を過ごしている。
一方のお母さんは、元気に外に出るタイプだ。
ずっと障害を持った妹の世話をしていた。
若いうちに自分がやりたいこともたくさんあったと思う。
家族に障害者がいると、普通の主婦の楽しみができない。
自分が大人になった今だからわかることだ。今さら私は何もできない。
お父さんもお母さんも、物事に対して否定的で何でも否定から入る人たちだった。
でもお母さんは、ある時期にジムに行き始めてから変わっていった。
筋肉がそうさせたのか、外の世界との関わりがそうさせたのかわからない。
何でもやってみようとする姿に、すごいなという尊敬の気持ちが生まれ始めた。
自宅で過ごしていた妹が施設に入所してから、母はさらに変わった。
ポジティブで行動的になった。否定的なお母さんはいなくなった。
パートで働き始め、ボランティアで遠出をして知らない人とも関わるようになった。知識欲が高まって、市民講座なんかも行っている。
お父さんとお母さん。
まるで陰と陽だ。
引きこもるお父さんに、お母さんはイライラしている。
外に出てばかりのお母さんに、お父さんはイライラしている。
社交性で見るとお父さんの方が人当たりが良い。おしゃべり好きで何でも知っていて話題豊富な陽気な人だった。
お母さんは人見知りで交友関係も狭い。仲がいい人がいるタイプではなく、こもりがちだと思っていた。
今は真逆だ。
私は最近、プロボノを始めた。
プロボノに参加しているひとの年齢層は高めだ。
シニア世代が自分の経験を活かして第二、第三の人生を歩んでいる。
プロボノを始めてから市民活動や社会活動をする人たちと知り合う機会が増えた。両親と同世代の方たちが活躍している。
みんな、楽しそうだ。
こういう人たちを見ていると、お父さんがかわいそうになってしまう。
そしてそれ以上に、お父さんが壊れるまで働かせた会社への怒りがこみ上げる。
さっき部屋を片付けていたら、新卒時代の給与明細が出てきた。
捨てていいかわからず、無駄に残っている。
手取りが15万円だった。
この頃、私は朝7時から朝2時まで働いていた。
それなのに手取りが15万円。
全く残業代が付いてなかった。改めて見て、びっくりした。
だから辞めたのを思い出した。
お父さんは、残業代は全部出ていたから馬鹿ほど稼いでいた。
どっちがいいんだろう。
どっちがよかったんだろう。
20年近く前の給与明細で、こんなに色んな事を考えてしまった。
今日は天気が良いから、お散歩に行ってこよう。
お父さんに青空を送ってあげよう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?