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メンテナンスのこと No.2 銅(黒染・緑青)編

No.1に続き、No.2に銅(黒染・緑青)のご紹介をします。
実はちょっと厄介です。

銅とは

前回、少しご紹介しましたが、10円玉の素材です。
熱伝導がよく、ミルクパングリルパン両手鍋を銅で作っていたり、ぐい呑・片口等の酒器やお盆等を作っています。あと、この仕上げのランプシェードもあります。鍛金では一番メジャーな素材。加工がしやすい素材です。
でも、真鍮よりも、本当にあっという間に色が変わります。ピカピカの状態はサーモンピンク色ですが、この状態を維持するのは困難です。触ったらそこに指紋が浮いて出ます。ウレタン塗装等をしないとまず無理です。なので、WATOでは基本、銅のまま(サーモンピンク)の状態では仕上げておりません。(お鍋等のキッチンウェアを除く)

形が完成したら、着色作業をします。薬品を使って酸化膜をつける作業です。それが黒染です。わかりやすいように「黒染」と言っていますが、正確には硫化着色です。これも酸化膜なので、真鍮編でご紹介した通り、酸のもの(レモンやお酢等)でこの黒い膜は剥がれます。なんらかの衝撃だったり、油や塩だったりでも取れることがあります。取れるとその部分だけサーモンピンクの素地が見えます。
なので、黒染仕上げのお皿は、基本、乾きもの。
お盆やトレー等にお使い頂くことを想定して作っております。
黒い膜が剥がれてしまったものをご自宅で元に戻すのは難しいです。WATOでは修理を承っています。修理メンテナンスは基本無償で行っています。往復送料だけお客様ご負担でお願いしています。
でも、膜が剥がれてしまったものを、そのまま使い続けると段々なじんで、そのモノだけの経年変化となり、いい味になった。さらに愛着が湧いたというお客様のお声も頂戴しています。そんなことから、ちょっと厄介というご紹介をしました。

黒染め仕上げのお手入れ方法

真鍮のものとは異なり、中性洗剤で優しく洗って、しっかり水気をとってください。磨いたとしても重曹をペースト状にして優しくです。
クレンザーや硬いもので擦ると膜が剥がれます。

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緑青とは

銅合金のサビです。お寺の屋根は、緑青が綺麗に自然発生したものです。
前回ご紹介した通り、緑青は毒ではありません。でも、WATOで緑青仕上げで作っているものは薬品を使って早く緑青を発生させています。なので、食器には使っておりません。ランプシェードトレー、花器、表札に使っています。
なので、お手入れといっても柔らかい布で埃をはらう程度でしょうか。埃が取れにくく、中性洗剤で洗った場合は、しっかりと水洗いをして、水分をとって、天日に当ててください。お日様の力で緑青が鮮やかな色になります。

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銅のお鍋

これらには着色作業はしていません。なぜならば、火にかけると色が変わるからです。もちろん磨けばサーモンピンクに戻ります。時々、あるけど使っていないから真っ黒になっちゃって。緑青出ちゃってて。というお話を伺います。
外側はクレンザーと重曹でゴシゴシ洗ってあげてください。荒めのスポンジでもOKです。汚れ具合によっては少しお酢やクエン酸を加えてもいいかもしれません。内側は傷がつかないように洗って、乾燥させてください。
WATOで作っているお鍋には内側にスズ引きをしています。
スズという金属を溶かして塗っています。スズは銅に比べて安定しているので、色が変わりにくいことから、補強と安心のため、塗っています。イオン化傾向が大きいので、スズが先にとれます。とれたらまた塗り直しもできます。

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あとはスズ、アルミ、洋白、銀がWATOで使っている金属です。これらは基本そんなに大変じゃないですよね。普通に洗ってもらって、水気をとってください。銀が黒くなったら重曹をペースト状にして擦り洗いして頂いたら、すっきり綺麗になります。

お手入れ方法をご紹介してきましたが、いかがでしょうか?
真鍮、銅とご紹介してきましたが、確かに手間はかかるし、一筋縄では行かなそうですが、そこまで面倒な子達でもないと思いませんか?

でも、色のコントロールは本当に難しく、ちょっとした環境の変化で起こります。いまだに緑青の色は探求中ですし、同じような色味を出すのは難しいです。
また、膜がとれる原因も色々です。斉藤は醤油をたらして、一晩放置したり、石鹸を置いてみたり、塩や酢を入れてみたり、色々してどうなるか、自由研究のようにいつも何かしらやってます。そんなわけでJIS規格の工業製品の材料ではありますが、人の手が加わると自然素材の一面をみせてくれる金属に、私はいまだに惹かれ、わかりきれてないから、ずっと付き合っているのかもしれません。
(WATO 小笠原)



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