日比谷躁躁曲_4日め
思うは招く、ソワソワは思う
海岸線に沿うように敷設された高架と並走するように、緩やかな左カーブを自転車で走っているとき、生きてるっ!て感じになる。
(そんなに強くはないが)自分が処方されているアリピプラゾール他の注意事項に自動車運転の注意が含まれていたので、運転は控えて自転車だ。
休日にはアウトレットまで散歩することが日課になっている。もう買い物衝動は起きていない。
午前中に自転車で海岸線を走り、幕張のアウトレットに到着する。昼はホテルの一階にあるローソンで済ませて探索の時間を確保させる。
主にバッグとスニーカーを探しては造りやトレンドを確かめ、まだ返済のことを思い描いて陳列棚にそっと戻す。
おかしな代理店に就職したおかげなのか、収入の担保ができたことによる安定か、いつもの風景がいくばくか明るくすら見える。トンネルを抜け、薬からの離脱を願っている。
躁うつの中で、躁状態は危険である。
以下に、自分がやったやらかしを供養の念を込めて挙げておきたい。
自転車でコンクリ壁に左腕を擦りながら走行する
前方から軽自動車が走ってきて、避けようと思った時に衝動的に左腕をコンクリに擦り付けるまで壁に寄った。
コートは裂け、左の小指には今も裂傷の痕が残って消えない。
皿を割る
実家の大皿を洗っている際にガーッと何かに突き動かされ、皿をスプーンの柄を持って何度も割った。
後片付けをしながら反動で落ち込み、泣いた。
ホームから飛び出しそうになる
電車がホームに到着する際に、衝動を感じ後ろ足がいつ踏み出すかもしれないと恐怖を抱いた。必死に前足に力を込めて踏ん張っていた。自分の身体が自分の身体と闘っていた。
電話が止まらない
友人に仕切りに電話をかけ、救いを求めた。
何人かの友人は離れて行った。一方で今も変わらず接してくれる友人からの「俺の奥さんが言うには、ホットミルクを飲むといいらしいぞ」と言う言葉を一生忘れることはない。
買い物衝動
お金は底をついても買い物衝動が止まらなかった。残金や支払いの計算は一応しっかりとしている。その中で、あてのない捻出計画を勝手に生み出し、何かをポチる。今は全てリサイクルショップに収めて供養した。
突然仕事を決める
おそらく今のがこれ。
本来であれば、障害者手帳を申請し、派遣のエージェントを頼り時短案件などから社会復帰を目指すべき。自分はおかしなブラック企業に入ったことで躁状態を見直すきっかけを得たが、これは稀なこと。
物をいきなり処分する
急に部屋の模様替えや大掛かりな片付けを開始する。
大事にとっておいたコレクションが、その時は無性に捨てたくなり一気に処分する。同じものはもう買えない。とても後悔している。
高級なカメラを買い、Vログを始める
Vログをやりたい!登録者一万人を目指すんだ!と、夜中に思い立ち、朝まで機材を調べる。当然のようにヨドバシカメラがオープンするなり購入し、海へと出かける。
病院へ行き、躁を抑える処方バランスにすることが最も正しい答えだ。
けれどあの落ち込みが怖い。快方に向かった気分に浸って上がっていたい。
どこに行けば良いのか分からずに、結局東京駅まで電車に乗ってやってくる。
その日は雨が降り出し、KITTEの屋上テラスから東京駅舎を撮影した。
オンライン予約システムで、病院の予約を入れた。
でもあと一週間だけ、あのブラック会社を乗り切る力を残しておきたかった。
>続く
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