拝啓_事業企画さん_014営業脳と企画脳

企画者は「具体」と「抽象」を往復し続ける人

スライド1

 30歳以下の若手を中心に「企画職になるためにはどうしたらよいのですか?」「企画職にはどのようなスキルが必要ですか?」等の相談を社内外から数ヶ月に1度くらいの割合で受けます。
営業職から企画職へ異動したいというパターンも多いです。
そんな時には営業職と企画職の役割や特性の違いを説明し、フラットに判断してもらうことにしています。

言葉の「定義」の確認

言葉は人によって「捉え方」や「解釈」が異なるものです。
たとえば、「企画職」と一口に言っても、私の仕事であるプロダクト(商品)企画だけではなく、営業企画、人事企画など様々な業種や役割が存在します。

今回はB2B系ITサービス分野での企画職・営業職のお話です。
もしかしたら多少ニュアンスの違いがあるかもしれませんが、この前提である旨をご理解いただき、読み進めてください。

企画職
・対象企業群の課題を解決するプロダクト(商品)を作る人
営業職
・作られた自社商品を対象顧客に販売する人

「営業職」と「企画職」の役割と権限とは

スライド2

相談内容にある「企画職」は、営業(商品を売る人)とエンジニア(商品を作る人)の間に立って、商品(プロダクト/サービス)を産み出し、育てることまで責任を持つ人です。

商品企画、事業企画、事業開発、PM、Biz PM、PdMなど会社によって呼び名や、役割と権限が異なりますが、営業とエンジニアの間に入って商品・サービスを生み出す役割の人間であることに違いはありません。

時には旗振り役になったり、時には翻訳家になったり、時には組織の潤滑油として、時には嫌われ役の役割も担います。

6W3Hのフレームワークで「役割(Role)」と「権限(Responsibility)」を整理するとこのようになります。

企画職
Why:なぜ作るのかを明確し、責任を持つ人
Who:将来までを見据めユーザーを深く理解し、
   プロダクトに反映させ続ける責任を持つ人
What:何を作るのかのプロダクトの定義(概要)を考え、責任を持つ人
When:何時、何をどの順番で作るのかを決め、
    計画通りに進める責任を持つ人
How much:販売したプロダクト(商品)の売上責任を持つ人
※PMはプロダクトまで、PdMは売上にまで責任を持つことが多い
営業職
Who :担当顧客の課題を顧客が言葉にできないレベルまで理解し
    顧客の声をプロダクトに反映させ続ける責任を持つ人
How    :どのように顧客課題を解決するかを考える人
     解決策として自社商品との合理的な紐付けに責任を持つ人
    (他社商品の方が最適である場合、他を勧める事も厭わない)
How much:顧客軸での売上目標達成に責任を持つ人

「営業職」と「企画職」の頭の使い方の違い

両者の実務における頭の使い方です。
わかりやすくするために対比表現にしてみました。

大きな予算を持つ顧客の場合に企画側も個別対応を行うなど、例外はもちろんありますが、頭の使い方には概ねこのような違いがあると思います。

スライド3

営業職は顧客の課題解決を通じて、顧客軸での売上最大化を目指します。
全ての起点は目の前のお客様(人)から始まります。
ですので、思考傾向としては、個から全体、短期から長期、個社ごとの柔軟や対応、顧客理解とは発見ですので、思考はヒアリングや交渉を繰り返すことで核心に向かって圧縮され、最小公倍数(営業生産性)が解となります。

一方の企画職は、課題解決策としてプロダクト(商品・サービス)を作ることを目指します
課題が発生した要因を過去現在から整理し、長期間に渡って課題を解決できるプロダクトを作ろうとするため、結果的に長期から短期、再現性、拡張性、バランスを重視する傾向にあり、最大公約数(より多くの顧客が欲しいと思い、かつより多くの営業マンが売りやすい)プロダクトを善しと考えます。

営業はサイエンスとアートの住人

私は営業職は近視眼だからダメとか、企画職は現実を見ていないなど、どちらが良い悪いの話をしたいわけではありません。

それぞれの役割や特性をきちんと理解した上で、自分に合うキャリアを考えて欲しいと思っています。

営業職は「サイエンス」と「アート」だと思っています。

スライド4

経験や勘に基づく知識である「暗黙知」を、文書やマニュアル、フレームワークといった説明できる知識「形式知」に変換し、営業の成功確率を高める。これが私の言う「サイエンス」の領域です。
今流行りのSFA(営業支援システム)は、まさに「サイエンス」の領域ですね。営業の科学。

「サイエンス」で導き出された法則・手法の良いところは、多くの人が知り・身につけることができることです。一方で、同質化という弱点を持ち合わせてしまいます。

そこで「アート」の出番です。
暗黙知や型に入りきらない「例外」ことがアートの領域であり、できる営業マンは「サイエンス」の領域だけではなく「アート」の領域を持ち合わせています

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』という本がヒットしました。「個性」や「感性」がアートの領域であり、その人らしさこそが営業マンの優劣を決めると言っても言い過ぎではないと思います。

あなたの周りのデキる営業マンを思い浮かべてみてください。
人によって「サイエンス」と「アート」の割合は異なりますが、「アート」が買う理由や、あなたが凄いと思う理由につながっているのではないでしょうか?

一時期、AIなどのデジタル化によって営業職はなくなる、という説がありましたが、個人的には営業職は人間にしかできない、高度な職業だと思っています。
(もちろん、サイエンスで導き出された手法をただ実行するだけの営業マンは厳しいでしょうが…。)

企画職に向いている人は「具体」と「抽象」を愚直に往復し続ける人

拝啓、事業企画さん_014営業脳と企画脳

企画職に向いているのは、具体と抽象の間を辛抱強く往復できる人です。

最も多くの顧客が買いたい!と思い、最も多くの営業マン(あるいは取引先・パートナー)が売りたい!と思う最大公約数のプロダクトを作るためには、時には何十往復、時には何年にも渡り、同じ課題について具体と抽象の間を執念深く行ったり来たりする必要があります。

この活動を苦と思わない人、自然とできる人が企画職には向いています。
(私もまだまだ修行中の身ですが、とあるプロダクトは足掛け4年間、試行錯誤を繰り返しました)

商品(プロダクト)における<最大公約数>は、別の言葉に置き換えると「原理」「原則」です。

「原理」とは、そのプロダクトが成り立つための理(ことわり)です。
前提条件や仕組みがそれに当たります。
「原則」とは、そのプロダクト固有の規則です。最大公約数を実現する商品仕様や販売ルール等がそれに当たります。

机上の空論ではない普遍的な原理原則を伴ったプロダクト(商品)とするために、企画段階から販売後まで、三現(現場/現物/現実)との行き来を繰り返していく、それが企画職です。

まとめ

営業は人が主役です。「サイエンス」を極めて「アート」(自分の知識や経験・個性)で差を作りたい、そんな働き方に惹かれるのであれば営業職をお勧めします。

一方、プロダクト(商品)が主役で自分はあくまで脇役。プロダクトを通じて、課題を解決することに喜びを感じる人は企画職が向いているでしょう。

参考になれば嬉しいです。

スライド6


サポートもとても嬉しいですが、記事へのスキ(ハートマークをクリック)や、アカウントのフォローももっと嬉しいです。