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眠る

昨夜は久しぶりに寝付きが悪かった。
ここ数年の私は布団に入ればアッという間に寝落ちし、たとえ夜中に目が覚めてもすぐにまた眠りにつけるという睡眠優等生だったので、今は少し眠い。

小さな頃は寝付きが悪かったので羊を数えても無駄なことは良く知っている。私の場合、眠れないのは静けさのせいだ。
シンとした暗闇の中では昼間汲々と過ごしていた脳もゆったりと気ままに思考の波を起こす。何もすることが無くなってようやく自分本位に活性化するらしい。

本来はこういう脳解放タイムを作ってから眠りにつくのが良いのだけれど、地球上では24時間で1日が終わってしまうので仕方がない。

こういう時は無理に寝ようとしない。
少しくらい寝なくても死にはしないから大丈夫。


以前は違った。
かつての私にとって眠りというのは義務で、翌日をきちんと過ごすための必須項目だった。

あぁ、眠らなくてはいけないのに!
これでは明日がキツくなる…

そんな焦りがますます眠りを妨げた。
結局眠りにつくのはいつも明け方近く。そうなるとせっかく眠れても変な夢ばかり見て寝た気がしない。

こんな私であるが、ある時期から布団に入ってすぐパタンと眠れるようになった。



きっかけはある漫画家さんのお手伝いをさせて頂いた時のことである。

当時週刊の連載を抱えていたその現場では毎週当たり前のように1晩は徹夜が入り、時に2晩徹夜になることさえあった。

途中で仮眠を取るのだが締切が迫っているだけに眠れない。更に2晩徹夜になると菓子パン1個すら喉を通らなくなる。

それでも締切が近づくにつれ緊張感の走る現場では不思議と眠くもならず頭も冴えてくる。アドレナリンが出ているのかもしれない。

そして終わった後の解放感。
身体も心も脳も緩みきって、家までの電車の中で予備寝して、ようやく家に着いて布団に入った時のまるで布団に同化するような重心の落ちっぷり。自分が液体になってしまったかようにトロけた極上の眠り。


何のことはない。
眠れないのは眠る必要がないからだ。
眠い時はコテンと寝てしまう。
意志に逆らってでも寝てしまう。
それだけのことだ。
そして2晩寝なくても食べなくても人は生きていけるのだ。


そう思ったら気負いがなくなったのか、普段から自然に眠れるようになった。

コツは自己暗示。
あの眠くて眠くて起きていられない、
そんな最高に眠い状態を自分の中でイメージする。
そして眠気に逆らえない緩んだ自分を演じてみる。

そうすることで自然と身体や脳が緩んで行く。
もしも思考が眠りの邪魔をするなら、ゆったりとした音楽を小さな音で聴くと良い。


〜しなければならない。

そんな思いがいつも自分を苦しめる。
少しだけ身体を疲れさせてあげること。
出来るだけ脳を和らげてあげること。
心配しなくてもいつかは眠れると知ること。

大丈夫。
身体がちゃんと知っている。
今夜は気持ち良く眠れるだろう。



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