野党が本気で政権を狙うなら、将棋のAbemaトーナメントに学べ。大臣副大臣政務官候補3人一組で各大臣について「立憲チーム」「共産チーム」を作って、公開ディベート。連立政権の「影の内閣」選びと「公約」づくりプロセスをまるごと公開ネット中継する。そのうえで総選挙に向かうべし。

 横浜市長選での勝利で、「立憲民主党と共産党(とまあ社民とか)」が共闘して、与党のコロナ対応の不手際を論点にすれば、総選挙は勝てるぞ、と一瞬盛り上がった野党陣営だが、菅首相の総裁選不出馬で、風向きは大きく変わるだろう。

 横浜市長選の勝利も、野党側が勝った、というより「菅首相の極端な不人気」に助けられた、菅が負けた、という側面が強い。小此木が「菅の地元の、菅の子飼いの、肝入り候補」というのが致命傷だっただけだ。

 菅が総裁選に出ないことで、ここから数週間、テレビは、自民党総裁選で新しい自民党総裁各候補の顔で占拠されつづけることは確実。そして、岸田さんになっても高市早苗になっても、「テレビでたくさん見た」だけで、なんとなく好ましく思うという「単純接触効果」というやつで、支持率は上がる。

 私は広告の戦略プランナーとして30年以上働いてきたわけだが、テレビCMの効果の源泉と言うのは、この「ある刺激に触れれば触れるほど,それを好きになっていく現象=単純接触効果」というやつによる。人間って、そんなに単純なの?いや、そんなに単純なんだよ。

 自民党が総選挙の前に総裁選をするのは、とにかく単純接触効果で、岸田だろうと高市だろうと、たくさん接触させれば、少なくとも、直後は「好きなような気がする」人が大量発生するのを狙ってのことである。今、あまりの不人気に出馬を断念した菅首相でさえ、総裁選に勝って首相になった直後は「パンケーキおじさん」とか「苦労人」とかいって、支持率70%もあったのである。総裁選で行われた候補の公開討論会の内容評価(話し方話す内容)では、誰がどう見ても石破>>>岸田>>>菅の順で優劣鮮明だったにも関わらずだ。菅さんが言語論理不明瞭なのは、支持率70%のときから変わっていない。同じ人間だから。(極端にネガティブな文脈でなく)メディアにいっぱい出て顔を見ているうちに「なんとなく好き」になるように、人間、できているのである。

 立憲民主の枝野代表は「この時期、政局にかまけ、そして政権を放り出すとは怒りを禁じえない」などと記者会見しているが、それは菅さんへの攻撃にはなっても、新しい総裁候補への攻撃には全くなっていない。「菅のままなら総選挙、勝てると思ったのに、困ったじゃないか」と言っているようにしか見えない。この事態を想定していなかったのか。「自民総裁選でメディアジャックされて単純接触効果で新しい総裁の好意度アップ、自民党支持率、好意度アップ状態で総選挙という事態に、立憲民主 枝野は、共産党、志位は、どう対策を立てていたのか。立てていたならすぐ作戦を発動すべきだが、動きが全然伝わってこないぞ。今からあわてて対策立てているのだとしたら、それは野党が政府のコロナ対策を批判するときの常套句「後手後手」だよね。

 というわけで、ここからが本題。かつ、突拍子もない話。テレビが自民党総裁選に占拠されてしまうこの期間、野党、立憲民主と共産党は、どうやって話題作りをして、総選挙に向かうべきかについての、広告屋的な、お気楽ブレーンストーミング的アイデア出しを、文章を書きながら考えて行こう、というのが、この文章の狙いです。

 野党への批判、自民党支持者や漠然とした政治関心中くらいの浮動層の人が野党に対していだいているイメージと言うのを、思いつくまま、羅列してみる。

「批判ばかりしている」「自分たちが頭がいいと思って理屈ばっかりいって嫌な感じ」「国会でも上から目線で批判ばかりしている」「国会でも政府や自民党のスキャンダル批判ぱかりに時間を使って大事な問題を審議する時間がなくなっている。」「本当は政権を担う能力がない」「能力がないばかりか、政権を担うつもりも本当はない。批判している立場で満足している」「そんな人たちにはこの国は任せられない」「アメリカと仲良くできないから、中国や北朝鮮の脅威がある中で、国を守ることができない」「国を本気で守るつもりがないから、憲法9条を守っていれば平和でいられるというお花畑な考えしか持っていない」「財源のことも考えず耳に優しい、聞こえのいい大盤振る舞いのバラマキ的政策を言うが、実現できるわけがない」「野党同士も、ささいな違いで対立しては足を引っ張り合ってばかりいる」「連立政権なんてなっても本当は考え方や支持基盤が違うから、足の引っ張り合いで何もできなくなる。すぐ分裂してダメになる。」

 まあ、こんなところだろうか。

 選挙までに、少しでも、こういうイメージを、ひっくり返していくことが必要だ、ということが、野党の人たちは、分かっているのだろうか。「すこしずつ地道に説明してわかってもらう」ではダメなのだ。「説明・説得」ではなく、ふるまい方、やっていることをチラッと見ただけで、聞いただけで、「お、何か、本気で政権を取りに来ている」「お、政権取ったら、すぐに何か具体的なことをやる気だ、できそうだ」「お、野党共闘って、選挙のための野合ではなく、本当に政権を取った後のことまで考えているんだ、本当に連立政権が機能しそうだ」ということが、感覚的に理解できないといけない。「中身」ではなく「ふるまい方」自体が、そういう方向にイメージさせる力がないといけない。

そこで、ひとつ参考にすべきだと思うのが、将棋界で行われている「Abemaトーナメント」という大会。AbemeTVで毎週土曜日に開催されている。

将棋と言うと「棋士と棋士の個人の戦い」で、「一局にすごく長い時間がかかる、一日がかり」というイメージがある。そして羽生七冠とか最年少の天才、藤井聡太とか、一般のニュースやテレビで扱われるのはそれくらいで、他の棋士のことなんか、普通の人は全然知らない。「有名棋士は一人か二人」という問題がある。

こうした将棋界の限界を破ろうと構想されたのが、この大会。将棋界の初の「団体戦」「チーム戦」なのだ。

有力棋士12人が「チームリーダー」となり、ドラフト会議が開催され、リーダーは二人の棋士を指名して、三人一組のチームになる。

チームは、キャッチーなチーム名をつけて、チーム紹介プロモーションビデオも作る。

チーム対抗戦は、1試合持ち時間5分の、あっというまに決着のつく勝負で9試合、先に5勝した方が勝ち。

登板順番はその都度決める。チーム三人でどう戦うべきかの作戦会議をする。一人が対局中は、他の2人が控室で応援している様子も同時に中継される。

孤独な勝負師が、長時間頭をひねって戦う、という将棋のイメージを、

⑴チームで仲良く協力して戦う。孤独で利己的で変わり者で、という棋士という職業の人に対するイメージが変わる。

⑵短時間でスリリングな展開で、すぐ結果が出る

⑶有名棋士以外にも、いろいろなキャラクターの、面白い、魅力的な棋士がいることが伝わる

⑷作戦会議で、棋士が何を考えているのか、頭の中や対局中に考えていることなどが、棋士たち本人の言葉で伝わる。「密室」ではなく「透明、オープンな場所」に、将棋の深い世界がさらされる。

この試みに、藤井聡太という天才の登場が相まって、藤井聡太への興味で将棋を見始めた人が、いろいろな棋士が楽し気に真剣にたくさんいる「将棋の世界」が知られていく、ということが、今、将棋の世界では起きているわけなんですね。

ここから、野党が学んで、やってみたらいいんじゃないかと思うことを、以下、書いていきますね。

まず、立憲民主って誰がいるの。枝野、蓮舫、福山、野田。立憲民主が嫌いな人は、この人たちの、えらそうで、自分のことが頭いい絶対正しいと思っていて、批判ばっかりしているイメージが嫌いなんだと思うんだよね。だから、この人たちだけじゃない、魅力的な若手や女性や、専門分野ですごくいい活動していたり深い知識がある議員さんたちの存在というのは、普通の人は知らないと思うわけ。

これは共産党でも一緒。志位さん、小池さんくらいしか、普通の人は知らないと思う。田村智子さんとか山添拓さんとか大門みきしさんなんかの、素晴らしい国会質問なんか、たいてい普通の人は知らないわけ。

だからね、「影の内閣ドラフト会議」みたいなのを、まず、立憲民主党、共産党合同ですればいいと思うんだよね。

もし政権を取った後でも、組閣って必ず密室で行われるでしょう。あれを「ぼくらはオープンにします」っていうところから始めればいいと思うわけ。

「立憲民主で財務大臣なら候補は誰」「共産党で財務大臣やるなら大門みきし」とか、候補を何人か出して、そういう大臣候補がさらに「副大臣」「政務官」をドラフトしていくのを、ネット中継で公開でやればいいと思うわけ。

全部の大臣の、立憲民主側の大臣副大臣政務官、共産党側の大臣副大臣政務官、人が足りないな、というときには社民からも指名していいことにする。もし参加希望なら国民民主も参加すればいいと思うわけ。

で、各大臣について、「立憲中心チーム」と「共産中心チーム」の2チームができて、ここで「政策すり合わせディベート」大会を、一試合、各チーム持ち時間5分で三回戦、とかでやればいいと思うんだよね。これは相手を言い負かすのが目的ではなくて、どのあたりですり合わせて合意できるかを探っていくのが目的なんだけれど。これをネット中継で、誰でも見られる状態でやるわけ。各戦いの間の作戦会議も、Abemaトーナメント同様、全部中継する。とにかく「密室談合」で行われる政治に対して、すべては公開されて、透明な議論を通じて、政策と言うのが決まっていくプロセスを見せるわけ。

で、三回戦と作戦会議を経て、「立憲・共産、連立政権を取った時の、財務大臣チームとしての公約」が出来上がるわけ。

これが毎日、一大臣一省庁の政策について、毎晩、夜七時から九時まで、ネット中継されるの。二週間もやると、すべての大臣チームの政権公約が、すべてそのプロセスが透明に国民から見える形で出来上がる。

で、このプロセスで、大臣候補、副大臣候補、政務官候補の、知識、説得力、人間性と言うのも、国民みんなが見ることができるわけ。両チームの合議と、視聴者の投票で、「いちばん若いから政務官候補だった山添拓さんが、共産党ていちばん若いけれど、法務大臣にふさわしい」として、6人の両チームの中から、影の大臣、副大臣、政務官を両党からシャッフルして選抜する、みたいなことが透明な状態で起きるわけ。

これが実現したらさ、「自民党政治は密室談合」「大臣は専門性もない、ただ当選回数序列で割りふられる」みたいなことへの、強烈な批判になると思うわけ。透明で、政策への理解と論理的説得力ある人が大臣候補になるでしょう。

各省庁・各大臣候補が、全員、こうやって、その知識・能力・人間としての資質を国民に見える形で示しながら、「影の内閣」が出来て、そのうえで、総選挙に向かうのが、正しいと思いませんか。

 自民党が党利党略の、密室談合の総裁選を行うこれからの数週間を、野党、立憲民主党と共産党(望むなら社民党も国民民主党も、れいわ新選組は希望しないかもしれないが)は、連立政権に本気であること、政権担当能力があること、政治に対する姿勢が「論理的で透明な議論で決めていく」という、自民党政治とは根本的に違うということを国民に「ふるまい方」で見せる。

 将棋のAbemaトーナメントに学んだ形で、「影の内閣」と「共通公約」づくりプロセス自体を、毎晩、公開ネット中継・放送していくということを、一人ブレスト・アイデア出し会議をした結論として、とりあえず、提案。あくまでブレストした荒唐無稽アイデアなので、批判つっこみどころ満載なのは承知の上。むしろ、みんなどんどん突っ込んで議論してくれたら嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?