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水処理と次世代ビジネス

水処理会社も持続的に発展していかなくてはなりません。水処理の要素技術を使って富士フイルムのように新たなビジネスフィールドに挑んでいくこともできますが、ここでは水処理業界に焦点をあてて、そこを基軸とした持続的な発展を目指した次世代ビジネスについて記述します。

プロジェクトという有期事業である性質上、水処理設備を供給するだけでは、持続的な収益を維持することは難しいです。そこでクローズアップされるのが、顧客の水処理の問題に焦点をあてたソリューションビジネスです。メンテナンスや薬品の供給、運転管理といったサービス、それを通して行う設備改善提案などが挙げられます。これらは設備を運用している限り必要なものであり、有期事業であるプロジェクトと共に会社の経営を支えてくれるものになります。

水処理と新技術」でご説明した通り、水処理という技術自体の発展はあまり見込まれない中、デジタルが発展している現代では、次世代デジタル技術を用いたソリューションビジネスこそが水処理会社達の存続をかけた戦いの場になると思います。例えば「水処理 AI」で検索すると、名だたる企業の活動を垣間見ることができます。

1.ツールとしての次世代デジタル技術

ただ、注意しなくてはいけないのが、次世代のデジタル技術がソリューションビジネスになるのではなく、いままで実現できなかったビジネスモデルを実行するツールとして次世代のデジタル技術が位置付けられていなければならない点です。

例えば、水処理設備の運転最適化は、運転員を派遣及び教育すれば達成できます。「水処理と試運転」でもご紹介した通り、トラブルを解決するに必要なデータがあれば可能なのです。Aiを利用するにしても、結局データが必要です。つまり、データがないとAiでも何もできず、データがあればAiがなくても最適化はできます。ただ、Aiには下記の利点があります。

・運転員の派遣及び教育の時間を(完全にAiに置き換わるわけでなく、負担を減らしてくれるので)削減することができ、ビジネスフィールドを広げることができる

・人では容易に判断できない兆候を捉え、最適運転をすることができる

・人では容易に操作できない同時操作性などで、最適運転をすることができる

描いていたビジネスモデルの課題が上記で解決できるとき、はじめてAiがツールとして威力を発揮し、意味のあるものになります。例えばこういったワードで浮かぶのは、発展途上国の公共下水道の運転管理、などでしょうか。また、もし難解な運転管理のために断念していた新技術があれば、実現できるかもしれませんね。当たり前のレベルを底上げする。当たり前自体を変える。評価規準を変える。そういった意識が必要だと思います。

2.意味のあるデータを蓄積するという重要性

水処理設備の最適化の例で示した通り、データを蓄積する、ということは、次世代デジタル技術を利用する上でも非常に重要なことになります。しかしながら、ただ単にデータを蓄積していても何の意味もありません。そのデータは何のために取得しているのか?という視点が重要です。これは、試運転データ収集や日々の運転データ収集による運転管理の基本のキですね。現状をデータでしっかりと把握するということ。これはデジタル技術にとらわれず、何事においても非常に大事なことだと思います。

ソリューションビジネスの検討においても同様です。例え狙うビジネスフィールドが今までの領域と関係のないものである、ということが念頭にあったとしても、自社の既存のビジネスをデータ化してしっかりとタイムリーに把握ておくべきです。全く関係のない領域であれば、「自社データ上からも全く関係ない」ことを示し、その理解の上で進めるべきです。でも案外、そういった視点で見つめなおすと関連している事項があったりするものです。

3.データでつなげる

次世代のデジタル技術を利用するには、データを蓄積し、そのデータがつながっている状況が必要です。例えばEPCをベースとしますと、

営業ー計画―設計―調達―工事―試運転ー運転管理→→→AI最適化運転

という繋がりです。ただ、上記は仕事の繋がりなので、次世代デジタル技術を利用できるデータの繋がりのイメージではない点に注意が必要です。上記のイメージで繋がっていると見えるデータは、各フェーズ毎にすでに加工されたデータで、それにより横につながっている状態に見えるのです。次世代技術を利用するためのデータの繋がりイメージは下記のようになります。

データベースのデータとは、どんなフェイズでも使える最小単位で構成されている必要があります。赤で囲ったの部分が運転最適化に必要な部分です。あなたが考えるビジネスは、何と何をデータでくくると実現できそうですか?

また今後、このように繋げたデータたちから何をビジネスとするのか?を考えることが常識になっていくかもしれません。例えば、このデータや、基礎技術そのものの資料・標準図面について、NFTを付加しつつオープンソース化していくことで、今よりも業界全体の技術レベルが向上しつつ、新たなビジネスが産まれてくるかもしれませんね。

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