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その樹は深い森の中にあって
森にはいつも霧が満ちていたので
葉は
一人だと思っていた
ある日 ふと気づいたときから


森を覆う白い光の中から
一羽の鳥が枝にとまった
鳥は
偶然見えた葉のことが気に入り
隣にいることに決めた


暖かかった霧も次第に冷たく
光は弱く
わずかに見えていた色も喪われかけたころ
葉は
鳥に頼んで連れていってもらうことにした


枝から離れることは
とてもつらく
深い痛みを伴った

光を求めることは
二人を苦しめた


霧の粒が止まるほどの時間が過ぎた後


鳥は
葉にやさしく穴をあけ
首をそっと通して空に向かった


はばたきは葉を震わせて
その尖ったところからたくさんの色が零れ落ちた

零れた粒は
霧を巻き込みながら樹に落ちて
そこに残された葉たちを
やさしく照らした


残された歌を
葉たちは
きっと覚えていたはず


ある日 ふと気付いたときには
陽が満ちていたのだから