好きなものについて-4 自転車
自転車が好きだ。
もっといえば、自転車で夕方や夜に帰るのが好きだ。
冬の自転車は、体を動かしてあったかくなった自分のほっぺたと、冷たい空気の輪郭がはっきり分かる感覚も、すごく好き。最近は春が近づいてあったかくなってきたから、夜だけはもっときりっと冷たいといいのに、と思ってしまう。
まあ、いいクロスバイクを持ってるとかではない。
1万5千円くらいのママチャリだ。青の塗装が気に入っている。
通勤はママチャリで、だいたい10分くらいの距離を毎日漕いでいる。
朝は死ぬほど弱くてだらだらしてから会社に行くので、朝はそんなにテンション上がらない。
でも帰りは別。
会社から自宅へはちょうど日が沈む方角なので、夕日に向かって帰る。
今住んでいる場所は、冬でも「すかっ!」て効果音をつけたくなるような晴れの日が多いお土地柄なので、冬の夕日はとても鮮やかでまぶしい。
今日は早く帰れたから、家で何をしようか、ってときめいている。
日が暮れてからもいい。
遅い時間になれば人通りがぐっと減るので、少し斜め上を見ながら自転車を漕ぐ。
すると星が見える。
めちゃくちゃたくさん見える、って訳じゃあないけど、街灯の等間隔に並んだ明かりと、一等星の明かりがちょこちょこ見える。
大通りから外れれば、街灯の数はぐっと減る。
その分、見える星の数が増える。あああれはオリオン座、くらいは分かる。
月が色鮮やかに見える日もある。
街灯に照らされ、白く浮かび上がるように咲くモクレンが、満開になっている。
そんな景色を見ながら、今日は頑張ったな、晩ご飯何にしようかな、ってぼーっと考える。
これだ。この時間が好きなんだ。
車を運転してるときは空が見えない。歩いてるときはかえって気がそぞろになっていけない、何より遠すぎてうんざりしてしまう。自転車が一番だ。
自転車じゃないと味わえない肌の感覚、空模様とぼーっした時間。
何十キロも自転車で走りたいって訳じゃないんだけど、これは密やかな贅沢って感じがするなあ、と思う。
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