見出し画像

第04回 「この曲の調を答えなさい」ってどうやって?

 もう中学生になったのかー。今回はなんだ、机に向かっているな。なにか勉強しているみたいだ。音楽のペーパーテストの勉強をしているんだな。高校入試には内申点も必要だから、音楽のテストも落とすわけにはいかないんだったな。

この曲は(  )調の曲であるという穴埋め問題

「やあ、もう中学生になったんだね」
「あ、うす…、いや、おじさん、お久しぶりです。」
「(いま、薄汚いおじさんって言おうとしただろ)け、敬語…か。中学生ともなると、目上に対して敬意をもって接することができるようになるのか」
「そりゃそうですよ、中学生ですから。」
「いや、中学生なんてもっと生意気でさ、憎たらしい感じじゃない?普通。まあ、でも、君は柔道家で、頭を丸めたいかにもスポーツ少年ってかんじだもんね。」
「そうですよ。高校生になったら一人称が『自分は〜』になる体育会系ですよ」
「いや、だから、そういう未来のことがわかっちゃうみたいなメタなやつはご法度だと何度言ったら」
「まあ、もう第04回ともなれば、読者のみなさんも慣れてきているはずですよ。大丈夫ですって。」
「確かに。大した面白くもないこの連載の唯一の笑いどころみたいなとこあるもんな。」
「そんなに卑下しなくても、楽しんでくれてる人もいますよきっと。」
「なんか、ごめんな。」

「いや、おじさん、そんな話はじゃなくて、おじさんいいところに来てくれたなあ。よかったー。今ちょうど、期末テストの音楽のペーパーテストの勉強したんです。教えて欲しいことがあって。」
「どれどれ?」
「これなんだけど。『この曲は(  )調の曲である』っていう穴埋め問題。もうこの曲が出ることは明らかにわかっているから、丸暗記すれば良いっていう話ではあるんだけど、こんなのどうやってわかるんですか?」

「『春』か。ヴィヴァルディの四季だね。」
「そうなんです、どうやったってこの曲しか出ないのはわかっているので、もう、(  )調って書いてあったら、ホ長調って書けば点数が取れるのはわかってるんですけど、こんなのなんの意味もないじゃないですか。これがどうしてホ長調なんですか?」

曲の調の見分け方

「先生は曲の調の見分け方を教えてくれなかった?」
「教えてもらいましたけど、なんか言っている意味が全然良くわかりませんでした。」
「先生はなんて言ってた?」
「確か、こう言ってました。」

①調合を確認する
 調合がついていなければハ長調かイ短調のどちらかまで絞れる。#が1つなら〜、2つなら〜、(中略)、♭が1つなら〜…(後略)

②最初の音と最後の音を確認する
 最初の音と最後の音はその曲の主音であることが多いので、ドから始まっていればハ長調、ラから始まっていればイ短調

「うんうん、じゃあ、もうわかってるんじゃない?」
「うん、わかったような気もするんですけど、これ、♭や#の数に応じて、全部丸暗記しなきゃいけないんですか?大変じゃないですか?」
「ああ、そういうことか。そういう意味で言えば、丸暗記の必要はないよ。」
「え、覚えなくてもいいんですか?」
「うん、覚える必要はないよ。いや、正確に言うと、君はもうすでに覚えているんだよ。」
「え、どういうことですか?」
「びっくりすることを教えてあげよう。」
「え、なんですか、なんか怖い。」
「ホ長調って、Eのことだよ」
「ん?」
「だから、ホ長調って、Eのこと。Eメジャーのことだよ」
「え?」
「Eメジャー。ギターでも、ピアノでもコード弾いたよね。アレさ。E。コードのEのこと」
「あ、え?Eのこと?(あわててピアノでEを弾く、ジャーン)これですか?」
「さよう。」
「どういうことですか?」
「ホ長調というのは、『Eメジャーの音から構成されている曲』という意味なんだ。」
「Eメジャーの音から構成されている曲?」
「そう。第02回でギターのコードの話をしたね。そのときに、ギターというのは1フレットずらすだけで、半音上がったり下がったりするとう話をしたね。」
「はい、聞きました。」

「Eっていうのは、Eから始まるドレミファソラシドで構成されたものをホ長調、Eメジャーと表現するんだよ。」
「Eから始まるドレミファソラシドってなんですか?Eってミですよね?ドじゃないじゃないですか。」
「まあ、その話はあとでしよう。」

「まずは、ドレミファソラシドを弾いてごらん」
「(ピアノで弾きながら)ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」

「これ、ハ長調ね。Cメジャー。」

「全部、半音あげてごらん」
「(ピアノで弾きながら)ド#・レ#・ファ・ファ#・ソ#・ラ#・シ#・ド#」

「臨時記号がガチャガチャしてて見づらいから、調合にしてしまおう。こうすると見た目がすっきりするね。」

「はい、きれいに並んだね。はい、これが嬰(えい)ハ長調。"嬰"は#の日本語名ね。つまりC#メジャー。」

「じゃあ、もう半音あげて」
「(ピアノで弾きながら)レ・ミ・ファ#・ソ・ラ・シ・ド#・レ」

「じゃあ、同じように調合つけちゃうね」

「ほい、これがニ長調。Dメジャー。」

「はい、もう半音」
「(ピアノで弾きながら)レ・ミ・ファ#・ソ・ラ・シ・ド#・レ」

「これも調合つけるね。」

「はい、これ変(へん)ホ長調。"変"は♭の日本語名ね。つまり、E♭メジャー。」
「おじさん、なんでここだけ突然♭になっちゃったの?嬰二長調、D#メジャーじゃないの?」
「うん、それも正解。ただ、これをD#メジャーであるというとらえかたをすると、楽譜上でシャープのシャープといういわゆるダブルシャープという記号が必要になって表現が面倒くさいんだ。だから、E♭メジャーであると考えるほうがシンプルで、五線譜上はこう表現するのが一般的なんだ。中身については同じものだから気にしなくてもいいよ。」

「はい、じゃあ、さらに半音あげて」
「(ピアノで弾きながら)ミ・ファ#・ソ#・ラ・シ・ド#・レ#・ミ」

「はい、それホ長調。Eメジャー。これがヴィヴァルディの四季の『春』の調だね」ヴィヴァルディの『春』はこれらの音から構成されているんだ。」
「おじさん、なんだか難しくなってきました。これらの音で構成されているってどういうことですか?」

「そうだな、じゃあ実際に使われている音を意識しながら、ヴィヴァルディの『春』のメロディーをピアノで弾いてごらん」

「どうだった?」
「この、ミ・ファ#・ソ#・ラ・シ・ド#・レ#・ミしか使われいませんでした。」


「そう、この7つの音こそが選ばれし7つの音、Eメジャースケールさ。」
「メジャースケール?ですか?」
「そう、メジャースケール。」
「ちょっと難しくなってきました。あの…、いまさらなんですけど、結局、この曲がホ長調って分類してなんだっていうんですか。なにが嬉しいんですか。」

「良い質問だね。今日は、一度に読み切るにはちょっと長くなってしまったからいったんここで切っておこうか。」
「ですね、note的にはもう2763文字ですもんね。」
「こら。君はまだ1990年代を生きる中学生っていう設定なんだから、noteとか言っちゃだめなんだよ。」
「わかってますよ、設定ですよね、設定。それじゃあ、また来てくださいねー。
「はいよー。テストがんばってー。」

「あ、あのー、そうだ。ピアノの独学、頑張って続けるんだよ。学校のイベントである合唱コンクールで、他のピアノを習っている人たちを差し置いてピアノ伴奏に立候補して、演奏賞とっちゃう、なんてことがあるかもしれないよ!練習をしっかり続けていれば、だよ、その可能性も、あるかもね!」

「じゃあ、またね!」

サポートをお願いします。サポートしていただけましたら、もっともっとたくさん記事を書きます。ご協力よろしくおねがいします。