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オペラ歌手が本気で楽曲分析してみた〜己龍『百鬼夜行』〜

己龍というバンドにハマった。

今回は、いちオペラ歌手の卵であるワタクシがいつもオペラの楽曲に対して行なっているのと同じように、己龍の楽曲を分析してみようと思う。

今回取り上げるのは、『百鬼夜行』という曲だ。
同バンドの代表曲であり、収録されているアルバムのタイトルにもなっている。

さて、『百鬼夜行』だが、
これはタイトルが楽曲の内容を表している
『標題音楽』というものである。

つまり、曲全体で百鬼夜行を表現している。

当たり前じゃないかとか言わないでくれよ、
詳しく分析していくから。

使用されている楽器は(聴こえる限り)
ギター2本、ベース、ドラム、能管(篠笛かも?)、ピアノ。

はじめに言っておく。
私はドラムに関してはど素人なので
全く触れません!!!!!!
そこんとこよろしく。

では、早速分析に入っていく。

イントロは、ドラムと下降音形の弦楽器、広い音域で上下するピアノ、続いて能管が入ってくる。

己龍というバンドという構成上ピアノは打ち込みであるが、このピアノ、絶対に人力では演奏できない。
このピアノの打ち込みは音がパラパラとしていて重みが無く、一度に広い音域を行き来している。
この2点から、人外の存在、例えば骸骨の指で演奏されているかのような印象を受ける。
また、この楽曲では随所にピアノが登場し様々な効果をもたらしている他、全体の音域を広げる事で楽曲をダイナミックにしている。

ピアノと同時に演奏されている弦楽器は全て下降系の同じリズムのフレーズを奏でており、ピアノが目立つ仕組みになっている。
また、下降系のクロマティを多用した音型を使用する事によって百鬼夜行の禍々しさを表現している。

デスボイスソロの後の疾走感により、百鬼夜行の進んでいく様を表し、このセクションから篠笛が入ってくる。

そして、その後現れるベースソロは低音で同音を刻む事で、篠笛との掛け合わせによる『ヒュ〜ドロドロ』を表現していると考える。

イントロの段階で、かなりの仕掛けが組み込まれている。お腹いっぱいだ。

歌に入っていく。
己龍はフレーズごとにボーカルを録音し、被らせる手法を多用するバンドである。
この楽曲においては、デスボイスのパートも重ねる事でより複数の声部による厚みのあるサウンドを生み出している他、多数の音色を使う事により、百鬼夜行の雑多な感じを表現している、

サビの『百鬼夜行〜』という場所と、『舐めま回した〜』という場所意外は、ほぼ常にハモリパートやデスボイスが重ねられているが、
これにより、この二箇所の印象を強くしている。
また、短い箇所ではあるがサビ前の2小節もボーカルが1人になるが、サビへ移る前に歌に注目をひきつける役割を果たしており、
その上、2回目はバリエーションが付き難解な音程(A#,C#,E,G,B♭)になっている事で、バリエーションを聴かせるという点と、音程により表現されたおどろおどろしさを表現するという効果を担っている。

また、この楽曲が怪奇的なモチーフを表現しているにも関わらずキャッチーなのは、歌詞と音楽のリンクによるものであると考える。

『手枷足枷』など韻を踏んだ言葉をちりばめたり、『こわいこわい』など同じ言葉を2回繰り返す事でリズムを作り出す事や、

Bメロに出てくるように擬音を効果的に使っている事、

これらの手法により、歌詞全体は難しい漢字や言葉が散りばめられているにも関わらず、聴いただけでなんとなく覚えられてしまう。

また、それを後押しするように、
ほとんどのフレーズの最後は名詞か動詞で終わるように短い文の連続で設定されており、
フレーズの前半が理解できなくても最後の言葉は総じて歌いやすく、分かりやすいように工夫されている。

また、サビには『あ段』『お段』を多用する事でデスボイスとの兼ね合いを良くし、更に気持ちよく歌う事ができるようになっている。

また、この楽曲のボーカル最高音であるA♭は『その喉笛を噛みちぎり』という、『い段』よ の言葉が使用されている。
これは言葉とのリンクを考えると、歌っている時にちょうど歌詞通り"噛みちぎる"表情や表現がし易くなっている。最後の歌詞『真の声なり』も同じく『い段』で終わるが、
これは『な』がG minのこの楽曲に対して解決を求めるF#であり、アウトロ開始の1拍前(つまりアウフタクト)という重要な音なのに対し、『り』になった時には楽器陣が主旋律になる為ボーカルの重要性は薄れている。

電車に乗りながらざっと考えてみたところだとこんな感じだろうか。
私が聴いて感じた印象や音名とかなので、間違ってる可能性大有りだからね!!!!

まあこんな感じで、我々歌手は楽曲分析をしております。

クラシックの曲だと楽譜があるからもっと色んな観点から分析できるんだけど、今回は聴いただけですのでこんなもんです。

楽曲の物語を想像するだけで歌いやすくなったり、自分表現したいものが明確になるから、
ぜひみなさんもやってみてくださいね。
難しいなって方は、まず歌詞を音読するところから始めてみようね。

音楽家の仕事って妄想することなんじゃなかろうか?

というわけで、今日はこんな感じで。
ばいびー

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