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北国のワイン~ワイナリーを持つ自治体のお話~

社会人になってから転勤だったりいろいろな付き合いがあったりする中、一種の趣味になりつつあるのが「ワイン」。

以前に勤務していた地域には自治体が運営するワイナリーがあり、町のことを学ぶ上でワインをちょっとたしなんでみようと飲み始めたのがきっかけです。

その自治体とは、北海道池田町

十勝地方のほぼ中央部にある人口約6000人の町で、DREAMS COME TRUEの吉田美和さんや、「心淋うらさびし川」で直木賞を受賞した作家・西條奈加さんの出身地です。大規模な農地や十勝川などの雄大な自然が広がるのどかな町である一方、警察署や国の役所の出先、特急列車が停車するJR駅があるなど都市的な一面もあります。

そんな池田町の特色は、国内で初となる自治体経営のブドウ畑とワイン醸造所を持っていることです。

役場に「ブドウ・ブドウ酒研究所」という部署があり、「十勝ワイン」というブランドを手がけています。北海道ならスーパーやコンビニで普通に見かけるワインですね。そういった経緯から、町の予算執行では「ブドウ・ブドウ酒事業会計」という企業会計があります。

また、ブドウの栽培や品種改良にも取り組んでいて、寒さに強い「清舞」や「山幸」などを生み出しています。近年は、町が開発した新品種ブドウの名前を吉田美和さんが付けたことで話題になりました。

ちなみに「ワインの町」として地域を売り出しているため、ブドウやワインのビン、グラスなどがデザインされた施設を町の至る所で目にすることができます。ワインレッドを基調とした建物も多いように感じますね。

JR池田駅前にあるワイングラスの形をした噴水

ブドウ・ブドウ酒研究所が力を入れる商品の一つは、十勝の厳しい寒さで凍ったブドウを原料にした「アイスワイン」。濃厚な甘さが特徴で、冬の時期にごくわずかしか生産できないため希少なワインです。暖冬の年は出来がよくないなど、造るのがとても大変だそうで…。お値段もなかなかなので、私はまだ飲んだことがありません。

「なぜ自治体でワイン造り?」の答えについては、以下のウェブサイトが詳しいです。

ちなみに、安井美裕よしひろ町長はブドウ・ブドウ酒研究所で町職員として長年ワイン造りに情熱を燃やしてきた経歴をお持ちです。ワインのことを何でも丁寧に教えてくれます。

お城のように重厚な醸造所。通称「ワイン城」

町の醸造所はJR池田駅の近くにあり、ヨーロッパのお城のようなたたずまいから「ワイン城」の愛称で親しまれています。施設内は見学することができ、ワインを試飲できる売店や、地元のブランド牛「いけだ牛」を味わえるレストランもあります。ちなみにことしは、ワイン城が完成50周年の節目。ドリカムも参加し、いろいろな記念事業が企画されているとのことですよ。

醸造所の中を見学できます

ちなみに、ブドウの栽培とワイン醸造は町の事業ですが、2020年にワイン城を改修し館内をリニューアルしてから「一般社団法人いけだワイン城」という組織を発足。ワインの販売やレストラン運営で、民間の活力を生かした経営に取り組んでいます。

半世紀以上の歴史がある十勝ワインは、これまでに数々の商品を世に出してきました。現在はいろいろな事業者が北海道でワイン製造に参入して競争は増すばかりですが、「ワインの町」として培ったワイン醸造・ブドウ栽培の力は無二であると感じます。

私がそんな池田町と出会い、味わってきた十勝ワインの数々…。その中から個人的に気に入った商品を3つご紹介しましょう。

①北の和音わいん(アルコール12.5度)

ワインといえば赤のイメージが強いですが、私は白を好むのでお気に入り商品は全て白ワインということでご承知おきを…。

さて、「北の和音」は十勝ワインのワインリストから見つけることができないのですが、1300円くらいで普通にスーパーで売っているワインです。私が十勝を去った後、2022年に店頭で見かけるようになりました。
原料に北海道産ケルナー種を使用した日本ワイン。ラベルのデザインが非常にかわいらしいですが、味はフルーティーながらもキリッとした辛口で、しっかり冷やして飲むのがベストです。食事の味を邪魔せずスッキリ飲めます。スパークリングもあります。

flataフラッタ(アルコール11度)

2019年に発売。ミュラー・トゥルガウ種の輸入ワインを使用した商品で、1200円程度で購入できます。「北の和音」とは打って変わって甘口のワイン。ワインに馴染みのない人も飲みやすく、口当たりの優しさを大事にして商品化されたそうです。
これもラベルがかわいいのでジャケ買いだったのですが、ほのかにアルコールを感じられる味わい。醸造酒特有の酸味が抑えられていて、確かにワイン初心者の人でも飲みやすそうという印象です。シュトーレンを食べながら飲んだら、よく合いました。

③トカップ 白(アルコール12度)

「トカップ」シリーズは、十勝ワインを象徴するポピュラーな商品。赤、白、ロゼと各種のスパークリングがあり、十勝の居酒屋に行ったらワインはだいたいトカップです。ただ、輸入ワインを混ぜて造っているので日本ワインではありません。
このうちの白は、香りと酸味がしっかりありつつ辛口でさっぱりと飲めるという平均的な味わいのワイン。値段も720mlで1000円程度とお手頃なので、デイリーワインとして最適です。味が好みじゃないな…と思っても、料理酒に使うのが惜しくなさそうですね。

番外編 町民用ナイヤガラ(アルコール9.5度)

そして番外編としてもう一つ。
十勝ワインには「町民用」シリーズがあります。白、ロゼのほか、最近は赤がラインナップに加わりました。池田町民への還元を目的としたものだそうで、日本ワインを手軽な値段で味わうことができます。
そんな町民用シリーズでは私が十勝勤務だった2021年、「町民用ナイヤガラ」を池田町内限定で発売。地元の酒屋さんへ行って買いました。北海道産ナイヤガラ種を100%使用し、芳醇で辛口な味わいを999円で楽しめるというもの。これは町民用シリーズ最高傑作じゃないかと感じています。また造ってくれないかな…。

最後に、札幌市内で以前こんなものを見つけました。

年季の入った十勝ワインの数々…。どこなのか分かるでしょうか?

現在開かれている「さっぽろライラックまつり」の大通7丁目会場では、北海道産ワインを飲み比べできる「LILAC WINE GARDEN 2024」を開催中。十勝ワインもぜひ味わってみてくださいね。

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