6月37日

ヒミライヒミライ

俺は死んだ
そして、生き返る

ヒミライ

俺は不恰好な物を見るのが好きだった。
鏡に映る自分と喋るのが好きだった。
太陽は好きではないが、窓から反射した光は好きなんだ。
自然的なものの存在を信じることが出来ないからか、
死んでいるものに興味が湧いた。
朝方、通り道に横たわって死んだドブネズミに興味が湧いた。
死んだものがしゃべらないが、幾分か素直に喋ってくれる。
意味わかる?

わからないか。

6月37日。37月6日。
730日。48時間。1秒に2秒進む。
太陽が真上にいる頃に1日が終わり、西に傾くと同時にもう1日が始まる。
俺の1日は2日。
俺の寿命はおそらく200歳
生きているものが生き返る時間。
その見方を俺はしている。

ヒミライヒミライ。

俺の景色が逆転する。
生者は死に、死者は生き返る。

ヒミライヒミライ

死んだドブネズミがむくと起き、俺に話しかけてくる。

調子はどうだ?
周りは悲しんだか?
俺の家族は俺の姿を見に来たか?
泣いてただろう。
(自身の姿を不恰好に見て)
ちっ。なんてっこった。俺の腹は引き裂かれてすらいねえ。
ナイフで鮮やかなに器用に両手を使って食ってくれなんて思っちゃいねえが、
せめて俺を食ってくれてろよ。
この短い腕も元気にくっついてやがる。
俺は娘が7人。息子が6人。女房は最後の子を産んで死にそうになったから、
俺が食ったからいねえ。それでいいんだ。俺らっていうのは、
お前らは白線の内側を綺麗に歩くじゃねえか。
それでいいんだろ。そういうもんなんだ。何でかなんか考えるだけ無駄だ。
俺らは俺らの歩くところがある。
お前らとは出会ってるようで、出会ってない。
俺らはお前らがうじゃうじゃいる所を見ねえ。お前らは俺らが同じだけ生きているってことも知らない。お互いに幸せな距離を保つんだ。
あーあ、魚の内臓を胃袋の中にこさえてきたのに。
あいつらは俺を食わなかったのか。
食えなかったのか。
何のために臭え想いしながら食ったのか。
それで?
あいつらは泣いてたか?

ヒミライヒミライ

俺の目の前のドブネズミはよく喋る
あんたの前では喋るのか?
しゃべらないのか

俺は眠らない。
お前は寝るのか?
起きてる今を疑ったことはあるか?

夢と人が呼ぶものは、現実に起こってることなんだ。
それが現実であるから、この退屈な現実も意味を成すだろ。
要するに、目を瞑るときに、次の世界を生きるんだよ。
耳を敏感にするんだよ。
目は信じちゃダメだ。
魂に色んなカバーをかけるんだ。人の目は。
それが可愛いだったり、かっこいいだったり、色が黒かったり、色が白かったりするだけだろ。
魂の形を聞くんだよ。
だから耳は敏感にしなくちゃならない。
俺は忙しいんだ。

もうすぐ日が変わる

…俺はこのドブネズミを見て泣くんだ。

あんたの前では一言も喋らないコイツと
毎晩話をするんだ。
アイツのことが大好きになるんだ。
あんたの前では、あの愛らしい指一本動かさないコイツのことを。

その見方を俺はしてる。


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