忙しいのは道具も同じ
1日に1回せいろを使おうと決めてから、我が家では毎朝のようにキッチンに湯気があがっている。
敢えて忙しい朝にせいろの支度なんて・・と、かつては思っていたものの、シンプルな朝食から始まる1日の気持ちよさを覚えてしまったら、案外続けられるものなんだなぁと自分でも驚いている。
先日、普段は使い終えたらすぐに洗って干す蒸し布を、そこにあったせいろにポンと被せて置いておいた。いざ洗い物に取り掛かろうとすると、そのせいろの姿がなんだかくたびれているように見えたのだ。
一試合終えたスポーツ選手が、首にタオルを掛けてベンチで俯く姿のような・・
炎天下の草刈りの途中で、座り込んで休憩している姿のような・・
朝食にお弁当作り、朝の身支度でどうもバタバタしてしまうけれど、忙しいのは人間だけじゃないんだぞと言われたようだった。
その日ばかりは、せいろさんも毎朝ご苦労様です。と、いつもよりも隅々まで丁寧に洗って優しく拭きあげて、窓際の影にそっと吊るしてあげた。
そうしたら何だか気持ちよさそうに、伸びやかに干されていたように見えたのだった。