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ポジティブな人について

昔の私は、ポジティブな人のことをどこか薄っぺらいと思っていた。どうせ人生でつらい経験なんてしたことがないんだろう。環境的に恵まれているから明るい性格なんだ。生まれもってのものなんだ、と。

ネガティブでいても許される場所を求めて、私はインターネットに逃げ込んだのだった。SNSは気楽だった。赤の他人と無責任な友情に浸れる。一人の自由さと、人に囲まれる気持ち良さがちょうど良い塩梅で混ざり合っていた。

そんなある日、タイムラインに流れてきた一文に衝撃を受けた。

「ベッキーだって家に帰ったら玄関にしゃがみ込んで泣いてるかもしれない」

こんな内容だった。当時はまだベッキーが不倫騒動で大変なことになる前で、元気印なポジティブ女性の代表だった。

ベッキーですら……
泣いてるかもしれない……?

確かにそうかもしれん。外側で見えるものだけが全てじゃない。

心の中で、私はベッキーに詫びた。今までごめん。あなたの努力に気付こうとしなくてごめん。申し訳ない気持ちは、すべてのポジティブな人へと及んだ。

あの一文を読んだ日から、ポジティブな人を見る目が変わった。なんなら、「この人も家では泣いているのか……?」と、想像してしまうようになった。

SNSに一生モノの真理なんて転がってないけど、あの言葉だけは今も折々に思い出す。

今、私は生き方を変えようとしている。ネガティブからポジティブへと転じようとしている。なぜか。そうしないと生きられないからだ。

つらいことがないかと言えば、ないわけがない。むしろ、人生で予測もしなかった災難の中にいる。テレビやSNSで苦労話を聞く度に、正直、それくらいで済んで羨ましい……と感じてしまうほどだ。

恋愛の失敗、仕事での失敗、人間関係の失敗……元気な体さえあればいくらだってやり直せることだ。自分の行動で状況が改善できるだけ、救いがある。

どん底って、自分が想像していたよりもっと深いものだった。荒波に揉まれるどころじゃない。沈没船に閉じ込められて、息もできずにもがくような、そんな日々だ。

闇の中にいる人ほど光を探し求める。私に必要なのは、沈没船の中で溺れそうな闇に慣れることではなくて、射し込む光を探すことだ。見つめることだ。追い掛けることだ。

出口を探すための、諦めない気持ちを抱き続けるほど、努力では変えようのない現実に直面して倒れそうになる。それでも諦められないほど、世界は魅力的で、私はまたこの星で生きてみたい。夢を見ていたい。大地を踏みしめたい。もう一度。

ポジティブもそう簡単じゃないよ。地上で風に吹かれていた頃の昔の私に教えてあげたい。


HAPPY LUCKY LOVE SMILE PEACE DREAM !! (アンミカさんが寝る前に唱えている言葉)💞