後ろ指を刺されても。ずっと母と愛し合いたい。
好きな人が居てセックスをしている。
そしてその相手はここに居る母親だ。
言ってしまった。
それも付き合っていた相手、寛子さんに。
母は抱きしめた私の腕を解いて何か言いたげに私を見たが、すぐに俯いて黙った。
私の言葉を聞いた寛子さんも呆気にとられたような顔をしたまま言葉を失っていた。
告白した私自身もどういう言葉を続けて良いのか分からない。
暫く三人共黙っていた。
沈黙を破ってくれたのは寛子さんだった。
「どういうこと?」
色々聞きたいことはあるがどこから聞いて良いのか分からない。
そんな思いを感じる短い言葉だった。
「俺が好きになったのはお母さんなんだ。それで・・そういう関係になった。」
私はもう一度、同じことを落ち着いて寛子さんに伝える。
もう躊躇や取り繕おうという気持ちは一切ない。
「本当なんですか?」
私にではなく母に。
寛子さんは問いかけた。
母は一瞬顔を寛子さんへ向けたもののまた俯き答えることが出来ません。
「本当だよ。」
「あなたには聞いてない!」
寛子さんは怒りを隠そうとせず声を上げました。
「お母さん、本当なんですか?」
「・・・・はい。」
追及に負けてた母が力なく答える。
寛子さんは怒りと呆れの入り混じる表情で、ハッと笑いました。
「”あなた”さっきは私のことを散々仰いましたけど!ご自分がされてること分かってるんですか!?」
呼び方がお母さんからあなたへと変わり罵倒の言葉が続く。
「自分の子供に・・・親子でなんて・・同じ母親として考えられない!倫理的にあり得ないことですよ!」
母はじっと黙って寛子さんの言葉を受け止めていました。
俯いていて私からはどんな表情で聞いているのか伺い知れません。
寛子さんの言葉は尚も続く。
そもそも私が寛子さんとの関係にけじめをつける前に母と繋がってしまったことが発端です。
暫くは自分の非として母と同じく罵倒を受け止めて聞いていました。
ただ、寛子さんが吐き捨てるように言った、
「虐待じゃないですか!」
この言葉に私はついに我慢が出来なくなりました。
「違う!俺がしたいからしたんだよ!」
「寛子さんと知り合う前から、ずっとお母さんが好きだった。」
「お互い好きだからこうなっただけで・・・俺は虐待じゃなくて恋愛だと思ってます。」
「渉くん、不倫よりよっぽど異常なことだって分からないの!?」
確かに寛子さんの言う通りかも知れません。
ただ、たとえ異常であったとしても自分の気持ちを偽ることは出来ない。
心が。身体が。私の全てが母を求めている。
他人に何を言われてもそれだけは曲げられない真実です。
ここで私が折れてしまったなら私と母が乗り越えたものの全てが崩れてしまうような気がしました。
「異常でもいいです。俺はお母さんとの関係を止めるつもりはないから。」
「そんなこと言って。渉くんだって人に言えることじゃないから・・後ろめたいから隠してたんでしょ?」
胸に刺さる言葉でした。
私は母との関係を肯定するようなことを言って、矛盾するようにそれを隠そうとしていた。
返す言葉の無くなった私に変わって口を開いたのは母でした。
「私が悪いんです。息子の優しさに甘えて・・・」
「人様に知られたら私はともかくこの子は普通に生活できなくなってしまいます・・」
「だから・・・」
だから、そこで言葉を切った母。
寛子さんに懇願するつもりなのか。
それとも”もうこんなことは終わりにする”とでも言うつもりなのか。
絶対に嫌だ。
この先の人生、母への気持ちを抑えて生きるなんて。
もう母を抱くことが出来ないなんて。
そんな抑圧された毎日は生きていないと同じことじゃないか。
「俺は普通に生きていけなくてもいいよ。」
「寛子さん、人に言ってもいいですよ。もう誰になんて思われてもいいです。」
不安と言い争いの疲れ。
それに寛子さんという他人に関係を知られてしまって吹っ切れた気持ち。
今すぐにでも母と愛し合いたかった。
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